■「緊急事態条項」とは何? 「緊急事態宣言」とどこが違うの?
まず緊急事態宣言は、国会で議論して成立した「新型インフルエンザ等対策特別処置法」(2020年3月改定)に基づいて、首相が発出し、一定期間、国民に外出の自粛、学校や公的施設の使用制限、営業活動の制限等を求めるものです。私権制限等の問題はあるものの、コロナ禍という緊急事態下では人命優先の立場から受容されています。緊急事態が解消すれば当然この宣言は解除されます。
これに対し、「緊急事態条項」は、自民党の改憲案第73条にみられるように、民主主義の基本である国会の議論を経ないで、内閣が「政令を制定」して新たな法律とすることができるものです。安倍前首相が「私は立法府の代表」と言ったように、3権分立の一つ、立法府の権限を停止して内閣(そして首相)に立法権まで集中するものー首相独裁です。
■なぜいま緊急事態条項なの?
自民党は野党時代に、憲法9条を変えて「国防軍を創設する」改正案を策定しましたが、安倍政権時代は国民の改憲反対の声が強く、改憲発議ができませんでした。このため、2018年、安倍前首相は「改憲4項目」の一つとして、憲法9条に自衛隊を書き込むとともに、「国民の抵抗が少ないところから始める(政府関係者)」として挙げているのが「緊急事態条項」です。
「緊急事態条項」の本当ねらいは、「本丸=9条改憲」の突破口として、また、ナチス・ヒットラーがワイマール憲法上の「非常事態権限」を濫用して集会や言論の自由を制限し、国会の機能も停止して独裁体制をつくったように、立憲主義の破壊に反対する国民の声を抑圧することにあり、絶対に許してはなりません。