2 外国の危険性の検討 (4) アメリカ合衆国 ■アメリカの歴史(28) 日本占領時代(1945.9.2~1952.4.28)その22
■江藤淳:著「閉ざされた言語空間 ~占領軍の検閲と戦後日本~」文春文庫 1994:第1刷(単行本:1988・h1)より引用 (21)
<緑字は松永の文/引用文の赤字化や太字化も松永による>
歴史の事実を教訓にして学ぶことはとても大事です。昨年、千年前の大津波の教訓を忘れていなかった人々は助かったのです。
●第2部 アメリカは日本での検閲をいかに実行したか
第10章
<p354~357> ~~なぜ「テレビはとても通らない」のかという理由は、その後、映画会社から国民会議事務局に手交されていた「用語集」なるものを一読するに及んで、たちまち明白になった。やはりこれが、事実上の検閲指針になっていたのである。~前回ここまで~
それは、株式会社毎日放送が作成したもので、正式な表題は「皇室関係用語集・改定版」~~作成の時期は昭和50年(1975)9月~~「序にかえて」には、次のように記されている。
《~~。戦前の皇室用語がもつイメージ - いわく、難解、陳腐、大時代 - を、分かり易い今日の日本語に再構成するのは、かなり根気と時間が要る作業でした。~~
なお、原稿作成には、各方面のご協力をいただきました。~~》
そして、それにつづく「まえがき」に記されているのは次の諸点である。
《(1) 用語は現代感覚にてらして慎重に検討し、とくに時代錯誤をチェックした。~~ ~~》
また、「凡例」には、以下のような驚くべき事項が列記されている。
《(1)「使わないことば」には、実用の便を考え、念のために×印を付した。~~ ~~》
巻末に付せられた「おもな参考文献」を一見すると、他の文献とともに、日本放送協会編~~東京放送編~~日本新聞協会編~~共同通信社編の、4種類の用語集があげられているので、~~一般に放送・新聞会を通じて、自主検閲の基準が定められているものと推測される。
~つづく~
公立学校の現場では、《「使ってはいけない言葉」についての(正式な)通達や「用語集」》は、(佐賀県の小学校に34年勤めた私の経験によれば)ありませんでした。おそらく国や地方公共団体などの公的組織には、言葉の使い方に関しては、国:国語審議会が定めた「常用漢字表」や「現代仮名遣い」などの規則・内規しかないと思います。
(※ただし、公立学校では、公式通達ではなく、《「、などの特別な差別用語」については、必要な授業以外の場面では決して使ってはいけない。》という研修・指導は、(解放同盟からの強い要請もあり)おこなわれていました。)
民間の言論・放送・出版などに関する組織で、《一般的に、「公序良俗」や倫理・道徳に反したり、それらを意図的に乱したりするような表現をしないように努める》というのは常識的な態度だと思います(「言論の自由」についての論議はいろいろあるでしょうが)。
しかし、伝統的・歴史的日本語について、母語集団の中の一部の任意の人間・組織が《意図的に「使わない」という内規を定める》態度は、あきらかに異常です。
なぜなら、《言葉がしだいに使われなくなっていくという社会現象=死語化》が示しているように、特定の言葉が使われるかどうかは、《多くの人々が日常的に「使う言葉を選ぶ作業」をするなかで、長い年月の間に傾向として表れる現象》だからです。
ある言葉が「結果的に死んでいく」のは自然な現象ですが、「意図的に殺す」のは権力的行為にほかなりません。
~次回、どんな皇室関係用語に×が付けられていた(いる)のか紹介します~ ←参考になりましたらクリックをお願いします! 読んでくださる方の存在が励みです。※コピー、リンクはご自由にどうぞ。