The Complete Solid State Recording of the Thad Jones / Mel Lewis Orchestra
12月に入り、寒さが一段と厳しくなったが、このような季節には南国ゴルフということで、仲間と沖縄にゴルフに出かけた。現役時代は此の時期ハワイ合宿をよくしていたが、久々の南国ゴルフ。着いた日には27度と真夏の暑さ、ゴルフはやはり、半袖、短パンと、喜んだのもつかの間。いざプレー日となると一転冷たい雨、そして台風並みの暴風に。翌日は雨が上がったものの、冷え込んで「南国ゴルフ」を満喫という訳に行かなかった。天気にもめげず調子は上々、久々に楽しいゴルフを満喫できた。
10月からビッグバンドの素晴らしいライブが続く、10月にはゴードングッドウィンとヴァンガードジャズオーケストラの東西名門のそろい踏み。11月はボブミンツァーと続き、12月にはマンハッタンジャズオーケストラに、今年2度目のカウントベイシーと続く。日本のバンドも負けじとライブは数多く行われている。
予定が合わずになかなかすべては行けてはいないが、中で良かったのが、
Mika Brasil Big Band。ラテン物はこれまであまり聴く機会が無かったが、自分にとっては新たな世界が広がった。
小林正弘One Night Jazz Orchestraはサミーネスティコの特集。昨年のクインシージョーンズの来日時は、クインシーのビッグバンドを演じていたが、今回はネスティコ。昔のベイシー物を期待してきたファンもいたようだが、新しいものも含めてこれも楽しめた。
有名アレンジャー物の手掛けた作品の演奏をいつも楽しませてくれるのが辰巳哲也ビッグバンドだが、今回はフィンランドのエーロコイヴィストイネン。UMOオーケストラの創始者の一人という事だが、昔サドジョーンズが加わったアルバムしか聴いた事が無かった。確かにメンバーの一人として参加していたが、それ以外はアレンジもプレーも聴いた事が無かった。興味津々で出掛けてみたが、これがまた素晴らしかった。コルトレーンの世界をフリーではなく綺麗にビッグバンドに仕上げるとこうなるのかという感じで聴き応えがあった。なかなか聴けない物を提供してくれる辰巳さんの努力には頭が下がる。
当日の演奏はこちらで。↓
スイング時代はビッグバンドが主役。ビッグバンド物のヒット曲が当たり前であったが、モダンジャズの時代になってジャズはヒット曲とは無縁の存在に。シングル盤はヒット曲の代名詞のようなもので、POPSの世界ではアルバムからシングル盤が生まれ、シングルヒットをきっかけにアルバム作りが行われることが多い。
しかし、ジャズのシングル盤というのはあまり聞かない。リーモーガンのヒット曲「サイドワインダー」はアルバムから後にシングルカットされたというが、これはジュークボックスにかけるにはシングル盤が必要だったからという。我々世代は、ヒット曲というとラジオというイメージがあるが、昔のアメリカではヒット曲とジュークボックスも不可分であったようだ。
その中で、あのサドメルのオーケストラもオリジナルのシングル盤を一枚だけ作っている。彼らのアルバムは大体紹介しつくしたかと思ったら、このシングル盤が残っていた。といっても、その実物は見た事も、聴いた事もないのだが・・・・。
1967年サドメルのオーケストラは前年の2月の旗揚げ以来順調に活動を続け、ビレッジバンガードへの毎週月曜日の出演以外にもライブやコンサート出演の機会が徐々に増えていった。となると、忙しいメンバーが多いこのオーケストラにとっては、代役が必須となった。
立ち上げ時から、バリトンのペッパーアダムスの代役はマーヴィンホラディであったが、他にも例えば、ベースのリチャードデイビスに替わってロンカーターが代役を務めることも。サックスの要、アルトのジェロームリチャードソンのサブ(代役)はフィルウッズであった。この二人が収まった写真も残っている。このメンバーでのプレーも聴いてみたいものだが・・・
1月13日リーモーガンのセッションを終えたペッパーアダムスは、24日にA&Rスタジオに招集がかかった。録音と聞いて集まったものの、リーダーから渡された新しい譜面は一枚。3分足らずの短い曲だった。もう一枚は、メンバーのガーネットブラウンが用意したエリントンのソフィストケイテッドレディー。この2曲でシングル盤を作るというセッションであった。
当然、「何故作ったの?」という話になるが、真相はこのようなことだったようだ。
サドメルはソリッドステートというフィルラモンが立ち上げた独立レーベルでデビューしたが、このソリッドステートがメジャーのユナイテッドアーティスト(UA)の傘下に入る。
この(UA)が1966年に公開した「ハワイ」という映画があった。この主題歌がアカデミー賞にノミネートされたという話が伝わってきた。それを聞いたサドジョーンズが、であればこの曲のカバーのビッグバンド版を早い所作ってひと儲けしようということになった。バンド自体も知名度が上がって来たし、これで一気に有名になれるかもと捕らぬ狸の皮算用をしたという訳だ。では、善は急げという事で、賞の発表前に慌ただしく録音セッションがセットされたという次第であった。
この日、トラとしてサックスセクションにはフィルウッズ、トランペットにはマービンスタムが参加していた。
実は、この録音に関して、詳細なパーソネルの記録は残されていなかった。
関係者のヒアリングなどによりこの録音のメンバーに関しては、ペッパーアダムスの年表にも以下のように記されている。
Jan 24: New York: Thad Jones-Mel Lewis Orchestra date for Solid State. For personnel, see 4-6 May 1966; Marvin Stamm replaces Bill Berry, Phil Woods replaces Jerome Richardson, Roland Hanna replaces Hank Jones.
タイトル曲自体は、ゆったりとした特徴の掴みにくい曲だがが、そこはサドジョーンズの筆にかかると見事なアンサンブルに仕上がった。もう一曲の、ガーネットブラウンのアレンジのエリントンナンバーも珍しいアレンジだ。ボサノバ調と4ビートが混ざる、エリントンのオリジナルとは異なる軽快な曲。サックスセクションとトロンボーンセクションのアンサンブルが特徴的だ。短い曲だがペッパーアダムスのバリトンのソロも良い感じである。
予定の2曲が終わったところでもう一曲、ブルックマイヤーのアレンジによるウイローツリーをやることになった。この曲は他にはライブ録音しかないが、これと較べるとリチャードデイビスのソロは無く、サドジョーンズもフリューゲルホーンを使っているなど違いは大きい。フルートリードのクラリネット4本のアンサンブルがスタジオ録音のお蔭で綺麗に聞こえる。
そして、いよいよアカデミー賞の発表の日を迎えるが、「ハワイ」は残念ながら受賞を逃す。予定通りシングルはリリースされたが、何も話題にはならず、幻のシングルとなったようだ。
もちろん、このシングルが再発されることはまずないと思うが、Mosaicのサドメルのソリッドステートコンプリートアルバムにはこの3曲も収められおり、それで聴く事はできる。これには、他のアルバムの未発表曲やCD化されていないアルバムも収められているので、サドメルマニアにはお勧めかもしれない。
12月に入り、寒さが一段と厳しくなったが、このような季節には南国ゴルフということで、仲間と沖縄にゴルフに出かけた。現役時代は此の時期ハワイ合宿をよくしていたが、久々の南国ゴルフ。着いた日には27度と真夏の暑さ、ゴルフはやはり、半袖、短パンと、喜んだのもつかの間。いざプレー日となると一転冷たい雨、そして台風並みの暴風に。翌日は雨が上がったものの、冷え込んで「南国ゴルフ」を満喫という訳に行かなかった。天気にもめげず調子は上々、久々に楽しいゴルフを満喫できた。
10月からビッグバンドの素晴らしいライブが続く、10月にはゴードングッドウィンとヴァンガードジャズオーケストラの東西名門のそろい踏み。11月はボブミンツァーと続き、12月にはマンハッタンジャズオーケストラに、今年2度目のカウントベイシーと続く。日本のバンドも負けじとライブは数多く行われている。
予定が合わずになかなかすべては行けてはいないが、中で良かったのが、
Mika Brasil Big Band。ラテン物はこれまであまり聴く機会が無かったが、自分にとっては新たな世界が広がった。
小林正弘One Night Jazz Orchestraはサミーネスティコの特集。昨年のクインシージョーンズの来日時は、クインシーのビッグバンドを演じていたが、今回はネスティコ。昔のベイシー物を期待してきたファンもいたようだが、新しいものも含めてこれも楽しめた。
有名アレンジャー物の手掛けた作品の演奏をいつも楽しませてくれるのが辰巳哲也ビッグバンドだが、今回はフィンランドのエーロコイヴィストイネン。UMOオーケストラの創始者の一人という事だが、昔サドジョーンズが加わったアルバムしか聴いた事が無かった。確かにメンバーの一人として参加していたが、それ以外はアレンジもプレーも聴いた事が無かった。興味津々で出掛けてみたが、これがまた素晴らしかった。コルトレーンの世界をフリーではなく綺麗にビッグバンドに仕上げるとこうなるのかという感じで聴き応えがあった。なかなか聴けない物を提供してくれる辰巳さんの努力には頭が下がる。
当日の演奏はこちらで。↓
スイング時代はビッグバンドが主役。ビッグバンド物のヒット曲が当たり前であったが、モダンジャズの時代になってジャズはヒット曲とは無縁の存在に。シングル盤はヒット曲の代名詞のようなもので、POPSの世界ではアルバムからシングル盤が生まれ、シングルヒットをきっかけにアルバム作りが行われることが多い。
しかし、ジャズのシングル盤というのはあまり聞かない。リーモーガンのヒット曲「サイドワインダー」はアルバムから後にシングルカットされたというが、これはジュークボックスにかけるにはシングル盤が必要だったからという。我々世代は、ヒット曲というとラジオというイメージがあるが、昔のアメリカではヒット曲とジュークボックスも不可分であったようだ。
その中で、あのサドメルのオーケストラもオリジナルのシングル盤を一枚だけ作っている。彼らのアルバムは大体紹介しつくしたかと思ったら、このシングル盤が残っていた。といっても、その実物は見た事も、聴いた事もないのだが・・・・。
1967年サドメルのオーケストラは前年の2月の旗揚げ以来順調に活動を続け、ビレッジバンガードへの毎週月曜日の出演以外にもライブやコンサート出演の機会が徐々に増えていった。となると、忙しいメンバーが多いこのオーケストラにとっては、代役が必須となった。
立ち上げ時から、バリトンのペッパーアダムスの代役はマーヴィンホラディであったが、他にも例えば、ベースのリチャードデイビスに替わってロンカーターが代役を務めることも。サックスの要、アルトのジェロームリチャードソンのサブ(代役)はフィルウッズであった。この二人が収まった写真も残っている。このメンバーでのプレーも聴いてみたいものだが・・・
1月13日リーモーガンのセッションを終えたペッパーアダムスは、24日にA&Rスタジオに招集がかかった。録音と聞いて集まったものの、リーダーから渡された新しい譜面は一枚。3分足らずの短い曲だった。もう一枚は、メンバーのガーネットブラウンが用意したエリントンのソフィストケイテッドレディー。この2曲でシングル盤を作るというセッションであった。
当然、「何故作ったの?」という話になるが、真相はこのようなことだったようだ。
サドメルはソリッドステートというフィルラモンが立ち上げた独立レーベルでデビューしたが、このソリッドステートがメジャーのユナイテッドアーティスト(UA)の傘下に入る。
この(UA)が1966年に公開した「ハワイ」という映画があった。この主題歌がアカデミー賞にノミネートされたという話が伝わってきた。それを聞いたサドジョーンズが、であればこの曲のカバーのビッグバンド版を早い所作ってひと儲けしようということになった。バンド自体も知名度が上がって来たし、これで一気に有名になれるかもと捕らぬ狸の皮算用をしたという訳だ。では、善は急げという事で、賞の発表前に慌ただしく録音セッションがセットされたという次第であった。
この日、トラとしてサックスセクションにはフィルウッズ、トランペットにはマービンスタムが参加していた。
実は、この録音に関して、詳細なパーソネルの記録は残されていなかった。
関係者のヒアリングなどによりこの録音のメンバーに関しては、ペッパーアダムスの年表にも以下のように記されている。
Jan 24: New York: Thad Jones-Mel Lewis Orchestra date for Solid State. For personnel, see 4-6 May 1966; Marvin Stamm replaces Bill Berry, Phil Woods replaces Jerome Richardson, Roland Hanna replaces Hank Jones.
タイトル曲自体は、ゆったりとした特徴の掴みにくい曲だがが、そこはサドジョーンズの筆にかかると見事なアンサンブルに仕上がった。もう一曲の、ガーネットブラウンのアレンジのエリントンナンバーも珍しいアレンジだ。ボサノバ調と4ビートが混ざる、エリントンのオリジナルとは異なる軽快な曲。サックスセクションとトロンボーンセクションのアンサンブルが特徴的だ。短い曲だがペッパーアダムスのバリトンのソロも良い感じである。
予定の2曲が終わったところでもう一曲、ブルックマイヤーのアレンジによるウイローツリーをやることになった。この曲は他にはライブ録音しかないが、これと較べるとリチャードデイビスのソロは無く、サドジョーンズもフリューゲルホーンを使っているなど違いは大きい。フルートリードのクラリネット4本のアンサンブルがスタジオ録音のお蔭で綺麗に聞こえる。
そして、いよいよアカデミー賞の発表の日を迎えるが、「ハワイ」は残念ながら受賞を逃す。予定通りシングルはリリースされたが、何も話題にはならず、幻のシングルとなったようだ。
もちろん、このシングルが再発されることはまずないと思うが、Mosaicのサドメルのソリッドステートコンプリートアルバムにはこの3曲も収められおり、それで聴く事はできる。これには、他のアルバムの未発表曲やCD化されていないアルバムも収められているので、サドメルマニアにはお勧めかもしれない。