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だったけど、もはや自分の備忘録としての映画やドラマの感想しかないです。

宇宙船内で起こる人間社会の縮図が恐ろしい『ヴォイジャー』

2022年03月28日 23時21分32秒 | 映画

【個人的な評価】
2022年日本公開映画で面白かった順位:28/49
   ストーリー:★★★★☆
  キャラクター:★★★★☆
      映像:★★★☆☆
      音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★★☆☆

【ジャンル】
SF
サスペンス
スリラー

【原作・過去作、元になった出来事】
なし

【あらすじ】
地球温暖化による飢饉が人類を襲い、
科学者たちは居住可能な新たな惑星を探した。
そして2063年。
可能性を秘めた惑星を発見し、
探査隊を派遣することになる。
航行にかかる期間は86年。
乗員は訓練を受けた30人の子供たちと、
彼らの教官であるリチャード(コリン・ファレル)が同乗した。
子供たちは船内で成長して子孫を残し、
惑星に到達するのは彼らの孫の世代だ。
子供たちはリチャードに従順に従い、
航行は順調かに見えた。

10年後。
クリストファー(タイ・シェリダン)と
ザック(フィオン・ホワイトヘッド)は、
彼らが毎日飲む薬によって
人間としての欲望が抑制されていることを知る。
さらに、反発した乗員たちは本能の赴くままに行動するようになり、
ある事件をきっかけに船内の統制が崩壊していく―。

【感想】
世間の評価は低いものの、
個人的にはけっこう楽しめた映画。
これまでの宇宙を舞台にした映画とは、
またちょっと違う感じでして。
洋画では頻繁に宇宙を舞台にした映画が作られる。
大体が惑星探索におけるヒューマンドラマか、
エイリアンと戦うアクションかだけど。
今回はそのどちらでもないのがよかった。

◆人間は「管理」されるべきか「自由」にさせるべきかの対比

惑星にたどり着くのは今から86年後。
いくらミッションを達成させるのが
今回選ばれた子供たちの"孫"の世代だとしても、
その第一世代も一定の健康状態を保ち、
生命活動を維持しなくてはならない。
物資も限られている中、
それを可能にするには「適切な管理」が必要。
大きなトラブルを起こさず、
無駄にエネルギーを消費せず、
極力ヒューマンエラーを抑える。
そこですべきことが「欲望の抑制」。
日頃から薬を与えて、
あらゆる欲望レベルを最低限に抑えておく。
これがなかなか面白い設定じゃないかと思って。
感情を失くすのではなく、
欲望がなくなれば、
そもそも感情も出てこないよねっていう発想。
その欲望も"抑えてる"だけだから、
元に戻るリスクもあるってこと。

ひょんなことから、
その秘密を知ったのがクリストファーとザック。
彼らは意図的に薬を拒否し、
通常の人間と同等の欲望レベルにまで回復。
まさに、「適切な管理」から逃れ、
「自由」を手にした瞬間だなと思った。

ここからがこの映画の面白いところ。
他のメンバーも薬を飲まなくなったことで、
同時多発的にみんながいろんな欲望に目覚める。
船内を走り回り、
好きなように食事を摂り、
異性に対する興味まで。
それで怪我したり、
食糧がなくなったり、
意図しない妊娠なんかが起きたら、
86年後までもたないよねってことで
管理されていたはずなんだけど。

◆人間社会の縮図の誕生

目覚めた欲望は留まることを知らず、
自己承認欲求やそれが叶わないことによる嫉妬など、
より高次元の欲望も出てきて船内はカオス状態。
そこで、"とある事件"をきっかけに、
グループが二分してしまう。
ザック率いる「好きなようにやろうぜ」という改革派と、
クリストファー率いる「任務遂行のために規則を守ろう」という保守派。
まさに、どのコミュニティでもありそうな構図が、
狭い密室の宇宙船内で出来上がっちゃったわけ。

僕自身、
徹底された管理下に置かれるのは
好きではない性分ではあるけど、
ここでの改革派はだいぶ過激なので、
この映画を観る限りでは保守派の方に肩入れしたいけど(笑)
しかも、その改革派を引っ張るザックがまたイラつく役どころ。
デマを流して人々を困惑させ、
自分の陣営に引き込むといった小賢しい手を使う。
「そこまでする必要あるかな?」
とやや動機に違和感はあるものの、
この対立構造は後半を盛り上げる
いいストーリー展開だったと思う。

◆そんなわけで

舞台は宇宙だけど、
SFよりはサスペンスやスリラーに近いかな。
だから、宇宙である必要はあまり感じないけど(笑)
この両陣営の争いがどう決着するかは、
ぜひ映画館で観て欲しい。

それにしても、
最初に選ばれた30人って、
自分たちは目的地を目にすることなく生涯を終えちゃうんだよ。
彼らに求められているのは、
孫まで残す生殖機能のみだから、
人としての人生を考えると、
なかなか悲しい運命ともいえそう。




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