http://mainichi.jp/select/world/news/20100415ddm007030007000c.html
2010年4月15日配信
記事の紹介です。
キルギス:政変、米露のバランス変化
◇米、アフガン拠点閉鎖も/露、影響力拡大狙い増派
キルギスで起きた政変は、同国内に基地を持つ米露の“勢力図”に微妙な変化をもたらしている。ロシアはカント空軍基地に部隊を増派して影響力の拡大を狙う一方、米国はアフガニスタンへの輸送拠点に使用しているマナス空軍基地の閉鎖が取りざたされ、困惑を隠せない。【ビシケクで大前仁】キルギスのバキエフ政権崩壊から4日後の今月11日、首都ビシケクの東20キロにあるカント基地入り口では、ライフルを背負ったロシアの警護兵が直立していた。ロシアは政変の翌8日、「駐留兵の家族の保護」を名目に、空挺(くうてい)部隊150人を派遣。迅速な行動の裏には、関係を悪化させていたバキエフ氏の失脚に対する高揚感が見え隠れする。あるロシアの高官は「キルギスに基地は一つで十分だ」と語った。
一方、同じくビシケク郊外にマナス基地を持つ米国は後手の対応が目立つ。米軍は9日、キルギスの混乱を理由に基地-アフガン間の人員輸送の一時停止を決定。結局は通常体制に戻したが、輸送拠点をクウェートの基地に切り替えるとの情報が流れるなど、混乱ぶりを露呈した。ブレイク米国務次官補(南・中央アジア担当)は14日、米政府高官として初めてビシケク入りし、臨時政府のオトゥンバエワ代表と会談、支援の用意を表明した。しかし、マナス基地がいずれ閉鎖に追い込まれるのではとの懸念は消えない。
キルギスでは米国が01年、ロシアが03年に駐留を開始。ロシアは昨年2月、キルギスに20億ドルを融資する“見返り”として、バキエフ氏から「マナス基地の契約打ち切り」を引き出した。しかし、米国が年間の賃料を従来の3倍以上となる6000万ドルへの値上げに応じたことから、バキエフ氏は6月、一転して米軍の駐留継続を認めた。
キルギスの臨時政府の幹部の一人は、「ロシアは米軍駐留継続の決定よりも、前言を覆したバキエフ氏の態度に腹を立てた」と分析する。訪米中のメドベージェフ露大統領は13日の講演で、バキエフ氏について「首尾一貫している人物なのだから、政策にも一貫性があれば、良い結果が伴ったはずだ」と皮肉を込めて発言した。
キルギス国内でも視聴できるロシアのテレビは昨年6月以降、バキエフ氏や次男マキシム氏に対する批判報道を始めた。この報道がキルギスの反政府運動に弾みをつけたとの指摘もある。
臨時政府の幹部は、ロシア側が積極的にキルギスの野党勢力と接触していたことを明らかにしている。実際、バキエフ政権崩壊後、ロシアは臨時政府側に1億5000万ドル以上の融資を約束したとされており、両者の接近が際立つ。
ただし、ロシア側が臨時政府に対し、一気にマナス基地を閉鎖するよう圧力を強めるのかは不透明だ。米露は新核軍縮条約に調印するなど、関係改善に動いている。またロシアにとって、アフガン情勢の悪化が中央アジア諸国に飛び火する事態は避けたい。このため、米軍がアフガン戦略の拠点とするマナス基地について、「現時点では生かしておきたいのがロシアの本音」(外交筋)という観測も出ている。
記事の紹介終わりです。