http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20100126-OYT1T01403.htm
2010年1月27日配信
記事の紹介です。
武器輸出3原則 緩和は「平和国家」と両立する(1月27日付・読売社説)
日本の安全保障にとって重要な問題提起だ。
北沢防衛相が武器輸出3原則の見直しに言及した。今月中旬の防衛産業との会合で、「平和国家の理念は堅持した上、経済活動に支障を来す問題は議論していいのではないか」と語った。
ところが、鳩山首相はすぐに3原則を守ると表明し、火消しに回った。見直しに反発する与党・社民党への配慮があるのだろう。
日本は今、3原則に制約され、武器の共同開発・生産に参加できないでいる。産業界は「技術交流ができないことで、国際的な進歩に遅れ、『技術鎖国』になっている」と危機感を隠さない。
航空自衛隊の次期主力戦闘機(FX)の有力候補であるステルス機F35は、米英など9か国が共同開発した。日本は参加していないため、導入するにしても時期が相当遅れ、費用も高額になる。
「武器」の定義が広範なため、自衛隊仕様に部分改造した四輪駆動車も輸出できない。ヘルメットなども同様だ。国内販売に限られる結果、コストは割高になる。
政府の防衛予算が8年連続で減少する中、防衛産業から撤退する企業が相次いでいる。2011年度に戦闘機F2の生産が終了すると、その後5年以上は戦闘機の国内生産が途絶える。さらに多数の企業が撤退する可能性がある。
いったん企業が撤退し、専門技術者がいなくなれば、再開は容易ではない。特殊な部品が補給できず、航空機や艦船の維持・補修に支障が生じる恐れもある。
政府はこうした現実を直視し、防衛産業の衰退は国益を害すると認識すべきだ。
無論、すべての分野での現水準の維持は困難だとしても、「選択と集中」を図り、最低限の生産・技術基盤は確保すべきだ。そのためには、具体的な戦略や将来像を示すことが重要だろう。
今年末には防衛計画の大綱の改定が予定される。武器輸出3原則見直しの議論を深める好機だ。
1967年に定められた3原則は、紛争当事国や共産圏諸国への武器輸出だけを禁止していた。76年に禁輸対象がすべての国に拡大されたが、ミサイル防衛の日米共同開発や海賊対策支援など様々な例外措置も設けられている。
禁輸対象を当初の3原則に戻すのも一案だし、最低でも武器の共同開発・生産は可能にすべきだ。こうした3原則の緩和は「平和国家」の理念と矛盾しない。安全保障問題で思考停止に陥り、安易な現状維持に流れるのは禁物だ。
(2010年1月27日01時30分 読売新聞)
記事の紹介終わりです。