「ナマステ~」
「ナマステ~」
博士は胸の前で掌を合わせて会釈し、探査チーム隊員たちと挨拶を交わした。
赤道直下の陽射しの欠片が、生い繁る椰子の葉陰をぬって散り散りに降り注いでいる。
熱帯モンスーン気候による長い雨期が終わり、乾季が訪れていた。
隊長が素焼きのカップに注いだマサーラーチャイを博士に渡した。
ひとくち飲んで博士はその甘さに驚き、七つの目玉を七色に点滅させた。
そう、ここはインドである。
この惑星の先住民を研究した結果、インド地域の文化もようよう解読されつつあった。
そして今、日本での『エマニエル夫人』発見に続いて、インドでも新たなエマニエルが発見されたのだ。
「博士、こちらです」
隊長が、色とりどりの熱帯の花々に埋もれんばかりに飾られた祠を指さした。
「まちがいない。エマニエルだ」
「エマニエル~?」
博士は事前に準備していた、集英社の『月刊ロードショー』76年2月号を取り出す。
ナタリー・ドロンが表紙のヤツ。ページ中程、『保存版!続エマニエル夫人特集8ページ』。
隊員たちに見せびらかしながら博士が滔々と語る。
「エマニエル夫人の世界的な大ヒットでシルヴィア・クリステルも大人気。柳の下のドジョウを狙って作られた『続エマニエル夫人』では、香港まで出掛けて鍼を打ったりポロ選手の入れ墨背中を舐めたりするんだ。た~っぷりのボカシつきでな!」
そんなわけで、探査チーム一同、内心では今度の像はちょっと微妙だなあと思いつつも、誰からとなく例の妖しい唄を口ずさむ。
♪フンフフ フフン フフフフン エマニュエ~~ル♪
おぼつかないエマニエル夫人のテーマソングに包まれて、こっちの座像はちょっと腹立たしげに口をとんがらかしたりするのであった。
「わたしは『エマニエル夫人』じゃないぞう。わたしは『ガネーシャ神』だぞう」
な~んつってボヤキながら。
そして第3作『さよならエマニエル夫人』 (ヴァッキーノさん作)はこちら。
以上、追悼シルヴィア・クリステル企画、ショートショート『エマニエル夫人』3部作完結!
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どうもすみません!
3部作、完結っすね。
それじゃあ、ってんで
4作目、「エマニュエル」を
書いてみたくなりました(笑)
そもそもボクがエマニエル夫人をとりあげたのは、ヴァッキーノさんのtwitter の一言を見てから、なんですよ~。
エマニュエルいっちゃいますか?
こりゃあ黒いエマニュエルシリーズとか、エマニュエル・ザ・ハードのシリーズとかも・・・
ついでにO嬢とかマダム・クロードとかビリティスとか・・・