あ、当たってる?
当たってるよね?コレって。
何度も何度も番号を確かめる。
「どうしたの?ノゾミ」
うろたえているアタシに同僚が声をかける。
「ウッソ~!!当たってるじゃないの、1等!」
その声に、SSの看護師たちがわらわらとアタシを取り囲む。
ドリームジャンボ宝くじ、1等2億円。それが今、アタシの指先でプルプル震えている。
「どうしたの?」
「エッ、2億~!?」
ドクターやら入院患者さんたちまでナースステーションへ駆けつける。
「だって、ノゾミちゃん、アレでしょ?その宝くじ」
そう、アレなのだ。
アタシたち新人の歓迎会が先月開かれた。各々の座席に封筒が置かれ、封筒には宝くじが1枚という趣向だった、アレ。
余興で手に入れたにすぎない、人生初の、たった1枚の宝くじ。
それが、なんと2億円。
師長さんがアタシの肩に手を置いた。
「ノゾミちゃんの日頃の行いがいいからよお。おめでとう」
何もかも受け入れられたような、温かい気持ち。
「ありがとうございます!」
立ち上がって師長さんと握手。
誰からとなく拍手が起こる。同僚も、ドクターも、患者さんも。
よかった。本当によかった。
祝福のシャワーに包まれる。
ああ、もう夢みたい・・・
「ノゾミちゃん、ノゾミちゃん」
呼びかけられて目を開くと、魔人がいた。
「どうでした?宝くじ1等の夢。いや~実に幸せそうな寝顔でしたよ」
ここってアタシのアパートじゃないの。正座した魔人がアタシを見てるけど。
「今のって、夢?」
「そうですよ」
「アナタ、魔人でしょ?夢をかなえてくれる」
「そうですよ」
「でなんで、ただの夢なのよ!しかも当選シーンのみ!」
魔人が頭を掻いた。
「いや~、『宝くじ1等2億円の夢をかなえたい』ってゆーから・・・」
「違うでしょ、ソレ。そーゆー意味じゃないからっ」
「まあ、当選の瞬間がいちばん幸せで、そのあとのイメージなんてご主人様にない訳ですし・・・」
「なによ、ソレ。イメージくらいあるわよっ」
とは言ったものの、内心、さっきの当選の瞬間ほど幸せなイメージは思いつかない。
所詮、夢は夢。かなってしまえば、ただの現実。
夢は夢のままがいちばん美しいのかもしれない。
だとすれば、今見た夢こそがアタシのホントのノゾミだったのかも。
なんだか可笑しくなってきて笑ってしまった。
つられて魔人も笑う。
「な~んだ、ただの夢だったのかあ(笑)」
「魔人が出てきた時点で気がつかないと(笑)」
・・・ん!?
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