即席ラーメン以外作ったことがないと語っていた若者が、次々と片手で卵を割ってボウルに流し込んでいく。
濡れ布巾で粗熱をとったフライパンに、菜箸で溶いた卵を流し入れると一気にかき混ぜて半熟にする。
木葉形を整えて白磁の皿へ移すと、目にも鮮やかなオムレツが完成、巨大モニターにアップで映し出される。
その手際のよさに会場がどよめく。
「いや美味そうだ。早速、味見を・・・う、美味いっ!ふわっふわのトロットロ。まさしくプロの味です!」
会場から盛大な拍手。
簡易キッチンから司会者の案内でステージ中央に移動した若者は、虚ろな目をしたまま夢遊病者のようだ。
「ではムッシュ野々村さん、彼にかけた催眠術を解いてあげてください」
呼ばれて舞台そでで訳知り顔で見守っていたムッシュ野々村が中央に移動、若者の耳元で指パッチン。
途端、若者は鳩が豆鉄砲を食らったような顔で目を覚ますと周囲をキョロキョロ。
司会者が若者に催眠術にかけられてオムレツを作ったことを説明する。
「ボ、ボクがこのオムレツを?まさか・・・食べてみても?・・・う、美味い!信じられない」
割れんばかりの拍手。若者がADに促され退場する。
「会場の皆さん、そしてお茶の間のみなさん、催眠術師王者決定戦、ムッシュ野々村さんの驚愕のパフォーマンスをご覧いただきました。さあレオナルド馬さんはコレを上回る催眠術を披露できるでしょうか?」
勇壮な音楽が鳴り、ステージ奥中央にスモーク、その中からムッシュ野々村同様鋭い眼力に髭面のレオナルド馬が登場する。
「ではレオナルド馬さん、お願いします」
不敵に笑うレオナルド馬。
「わたしのパフォーマンスはすでにご覧いただきましたぞ」
「え?」
レオナルド馬はムッシュ野々村の鼻先で指パッチン。
ムッシュ野々村は鳩が豆鉄砲を食らったような顔でキョトン。レオナルド馬が笑う。
「フハハハハ、皆さん、若者にプロの料理人になるように催眠術をかける催眠術師になるようにムッシュ野々村氏に私は催眠術をかけていたのです!」
衝撃の事実に会場がどよめいた。
「えっと・・・ということは・・・おめでとうございます!この勝負、レオナルド馬さんの勝利ということで」
会場から拍手。笑顔のレオナルド馬が両手をあげて応える。その時、
「ちょっと待ったあ!」
ムッシュ野々村が割って入った。
「若者に催眠術をかけるように催眠術をかけたと思わせるように催眠術をかけたのは俺だもんね!」
レオナルド馬も黙ってはいない。
「若者に催眠術をかけるように催眠術をかけたように催眠術をかけたと思わせるように催眠術をかけたのは俺だもんね!」
ムッシュ野々村も引かない。
「若者に催眠術をかけるように催眠術をかけたように・・・」
司会者が両者を制する。
「子供のケンカのようになってきたところで、催眠術師王者決定戦、これにてお開き。また来週!」
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よくこんなことが思いつきますね。さすが、虎犇さん。
夢オチならぬ催眠術師オチを開発しましたね。
勝者は美味しいオムレツを作った若者ってことで、どうでしょう^^
面白かったです。
そんな話を聞いて以来、どうも催眠術って胡散臭いなあって思っています。ホントにかかるんでしょうかねえ。
あ、ちなみにインターステラーご覧になりましたか?ハードSF的映像を駆使しつつ、2001年へのノーラン流の答えであり、スペースオペラであり・・・とにかくSF汁ぶちこみ鍋、必見です。
んなわけで、催眠術&やらせテレビをおちょくったお話を書いてしまいましたあ。
勝者は若者?いえいえ、りんさん、あなたです