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『癒しの楽器パイプオルガンと政治 -クラシック音楽もあぶない』 草野厚

2006年11月23日 | 政治・経済・外交
 

『癒しの楽器パイプオルガンと政。』草野厚.jpg


税金の使われ方が本当におかしい。ずっと昔から指摘されていることですが、安倍政権になってからも、また次々と出てきますね。郵政造反組の復党も、政党交付金目当てだともささやかれています。


それに何ですか、あのタウンミーティングの“やらせ問題”。それに関連して、民主党の蓮舫さんが、政府が代理店と結んだ契約の単価内訳表に 「エレベーター手動 単価1万5000円」 と記載されていると指摘した問題。


エレベーターを操作するだけで、15000円の手当てが出ていた!?やりたい人一杯いますね。


また、5年9カ月間に、わずか8日の出勤で、2500万円近くの給与などを得ていた奈良の県職員の問題。同和問題解放運動とからんでいたそうですが、誰はばかることなく、高級外車を乗り回していて、どうして今まで発覚しなかったのでしょうか。知っていて何も言わなかった人はどれくらいいるのでしょう。


日本の行政システム、公務員の異常なモラル欠如は、一つの事件など、通り過ぎたら、何もなかったかのように、またすぐに増殖をはじめて、権限拡大に向かう。そのための無駄遣いの事件が、まるで本能のように繰り返されます。先日ご紹介した、『官僚病の起源(岸田秀)』 の説、またかつて読んだ会田雄次氏の主張(書名は失念) もそれを指摘していたように感じます。


さて、本書も税金の話です。テレビでおなじみの政治学者、草野氏の著書です。氏の著作は、以前に、『テレビ報道の正しい見方』 を取り上げました。


「なぜパイプオルガン?」 と思いますよね。草野氏の両親は音楽の教師で、草野氏自身も東京芸大の指揮科を受験し、2回目では最後の二人まで選考に残ったそうです。そこから政治学者とは不思議な経歴ですね。

オルガン愛好家でもある草野氏が日本にある一定規模以上のパイプオルガンについて、日本中を歩き回り調べ上げたものです。外国の大学では一般的らしいのですが、慶応大学でもある程度の期間、大学に勤務していると、長期の自由な時間が与えられ、好きなことを研究してよいのだそうです。


パイプオルガンというのは大きなものになると、2~4億円、重さはなんと70トンを超えるものまであるそうです。しかも製造には年単位の時間がかかり、木工からの手作業で作りはじめるのだそうです。

バブル期を中心に地方自治体が音楽専用ホールを建設し、そこにパイプオルガンを設置したのですが、その購入動機、ビルダー(オルガンメーカー)、商社の選定、入札経緯と結果、利用状況などを丹念に調査したわけです。


オルガン購入も当然税金でまかなわれる公共事業ですが、案の定次々と問題点や疑惑が出て来ます。つまり、政治とは対極にありそうな芸術という分野でさえ、公共事業の構図がすっかり定着している、そのことに驚かされます。 


小泉内閣当時、道路特定財源に手を付けようとして、「熊しか通らないような道路」 とか、「身内企業が独占する道路管理業務」 など、道路公団がらみの税金の無駄遣いが話題になりましたが、それと似たようなしくみが働いてしまいます。


登場するのが、政治家ではなく、東京芸大の教授などということの違いしかありません。ホント、いやになっちゃいます。誰も満足に使えないような高級パイプオルガン、買ったあとのメンテナンスだけでも途方もない額の税金が使われていて、これまた、誰も責任を取らない。


こうなると、当然パイプオルガンだけでなく、ありとあらゆる物に、この構図があると容易に想像できますね。自分の金でなく、他人のお金、税金だからこそ、鉛筆一本に至るまで無駄にしない。基本的にはそう考えてほしいんですが…。


先日取り上げた『UFJ三菱東京統合』 で見ましたように、銀行はバブル期の不良債権処理をしたと言いますが、地方にはこうしてまだまだその頃のつけが、処理されないまま重くのしかかっているだろうと思わざるを得ません。


こんな状態で、消費税を上げられたら、暴動が起こっても不思議じゃないと思うのですが、 世論調査でも消費税UPは仕方ないと思っている、話のわかる人がかなりいます。確かに、金利が上がる前に、たくさん借金を返しておかないと大変でしょうが、“それにしても…、ひどすぎる”、そう感じる一冊でした。




http://tokkun.net/jump.htm (当教室HPへ)



 P.S. 税金とはあまり関係のない、未履修問題にしても、役所仕事というのは、本当にいつも権限が曖昧で、チェックが甘い。結局、明確な責任を取らないまま、あるいは大きな騒ぎになった時だけ、人身御供が差し出され、しばらくたつと同じような事件が繰り返される。そして組織や仕組みが温存される。何とかしたい!

癒しの楽器 パイプオルガンと政治

文藝春秋

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『癒しの楽器パイプオルガンと政治』 草野厚
文藝春秋:190P:714円



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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (milesta)
2006-11-23 19:31:57
草野厚さんは音楽一家の方だったのですか。自由な研究が専門の政治に結びついてしまうというのが面白いですね。
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milestaさん (VIVA)
2006-11-23 21:22:32
そうなんですよ。それにしても東京芸大というのには驚きました。普通、英才教育を受けたような人たちが集まっているはずですし、4浪、5浪も珍しくないようです。

私も塾で、何人かこれまでに東京芸大志望の生徒に英語を教えたことがありますが、みんな例外なく、塾の私の授業よりも、音大の先生のレッスンに必死でした。

中には、東京芸大の先生に直接習っている生徒もいて、ひどいもんだと思った覚えがあります。


大学の授業が免除される期間の条件が、論文をあげることだと思いますので、やはり専門から完全に離れることはないのかなという気がします。

いつもコメントありがとうございます。
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やっぱり… (キャンキャン)
2006-11-23 22:53:46
ウチの町には、年金で作った立派な会館に、年に1度演奏されるかどうかの、立派なパイプオルガンがある意味が、これを読むと理解できそうですね。
滅多に演奏されないので、パイプの中にクモが巣を作っているかもしれません。
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キャンキャンさん (VIVA)
2006-11-23 23:21:07
そうですか、ありましたか(笑)。でも笑いごとじゃ済まされないですね。何億円もするそうですよ。メンテナンスも大変らしいです。地方税が使われているんでしょうね。そういう体質の町らしいですね、気を付けて下さい。
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Unknown (haruママ)
2006-11-24 07:26:05
「パイプオルガン」にひかれました。音楽が日常の中にある我が家なので。
何だか、意外なところで意外なつながりが、実はサラッと普通にあったんですね。ちょっと複雑な気持ちですが、考えてみればそうなのかも・・・と思いました。

最近は、新しいホールには(ある程度大きい所)たいていパイプオルガンがありますよね。特に何も考えていませんでしたが、思えばメンテナンスだって大変ですよね。実際にオケの演奏会に聴きに行ったり、また、オケの後ろでも歌った事もありますが、数回ある中でパイプオルガンを使った演奏は2回くらいだったかな?それでもまだあるだけ、いいのかしら?ピアノが弾ける=パイプオルガンも弾けるわけではないし、曲自体もそうたくさんはないですからね。
あると、見栄えはいいけれど、使用頻度はかなり低いのはホントですね・・・
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haruママさん (VIVA)
2006-11-24 12:11:21
そうでしたね、haruママさんところは。なるほど、ボクは音楽はまったくわからないのですが、どうもパイプオルガンを、みんな欲しがるようです。ステータスでしょうかね。

そういえば、今ちょっと手元に本書がないのですが、確か、上手にひける人も少ないと書いてあった気がします。

今度、市の係りの人に聞いてみて下さい。
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