役員退職慰労金制度の廃止による打切支給の退職手当等として支払われる給与 所得税

2019-09-09 15:07:41 | 税務・会計 所得税

 役員退職慰労金制度の廃止による打切支給の退職手当等として支払われる給与

 照会要旨

 当社は、経営状況等の事情から役員退職慰労金制度を廃止することとしています。役員退職慰労金制度の廃止に当たっては、株主総会の決議を経たのち、引き続き在職する取締役及び監査役に対してその就任日から本件制度廃止日までの期間に係る職務執行の対価を役員退職慰労金として支払います。
 この場合、引き続き在職する役員に対して支払われる役員退職慰労金は、退職所得として取り扱われますか。

 回答要旨

 在職中の取締役及び監査役に対して支払われる役員退職慰労金は、給与所得となります。

 役員退職慰労金について法律上の定義はありませんが、一般的には取締役又は監査役が任期満了又は辞任等の理由によって退任した場合に支払われる金銭をいうものとされます。したがって、役員退職慰労金が退職所得とされるためには、通常、役員に「退職の事実」が必要となります。ただし、「退職の事実」がない場合であっても、分掌変更等その役員に退職に準ずる一定の事実がある場合には退職所得と取り扱われます(所得税基本通達30-2(3))。

 照会の場合は、役員退職慰労金の打切支給について株主総会の決議を経ることとしていますが、役員に退職の事実や分掌変更等その役員に退職に準ずる一定の事実も認められませんので、このような事実関係の下に支払われる役員退職慰労金は、その役員の就任日から本件制度廃止日までの期間に係る職務執行の対価として、賞与の支給があったものと取り扱われます(所得税法第28条第1項)。

 (注) 所得税基本通達30-2(1)《引き続き勤務する者に支払われる給与で退職手当等とするもの》の取扱いは、使用人に対する打切支給の退職手当等の取扱いですので、役員についてはその適用はありません。

 所得税基本通達

 (退職手当等の範囲)

 30-1 退職手当等とは、本来退職しなかったとしたならば支払われなかったもので、退職したことに基因して一時に支払われることとなった給与をいう。したがって、退職に際し又は退職後に使用者等から支払われる給与で、その支払金額の計算基準等からみて、他の引き続き勤務している者に支払われる賞与等と同性質であるものは、退職手当等に該当しないことに留意する。

(引き続き勤務する者に支払われる給与で退職手当等とするもの)

 30-2 引き続き勤務する役員又は使用人に対し退職手当等として一時に支払われる給与のうち、次に掲げるものでその給与が支払われた後に支払われる退職手当等の計算上その給与の計算の基礎となった勤続期間を一切加味しない条件の下に支払われるものは、30-1にかかわらず、退職手当等とする。

(1) 新たに退職給与規程を制定し、又は中小企業退職金共済制度若しくは確定拠出年金制度への移行等相当の理由により従来の退職給与規程を改正した場合において、使用人に対し当該制定又は改正前の勤続期間に係る退職手当等として支払われる給与

 (注)
 1 上記の給与は、合理的な理由による退職金制度の実質的改変により精算の必要から支払われるものに限られるのであって、例えば、使用人の選択によって支払われるものは、これに当たらないことに留意する。
 2 使用者が上記の給与を未払金等として計上した場合には、当該給与は現に支払われる時の退職手当等とする。この場合において、当該給与が2回以上にわたって分割して支払われるときは、令第77条((退職所得の収入の時期))の規定の適用があることに留意する。(第七十七条 居住者が一の勤務先を退職することにより二以上の法第三十条第一項(退職所得)に規定する退職手当等の支払を受ける権利を有することとなる場合には、その者の支払を受ける当該退職手当等については、これらのうち最初に支払を受けるべきものの支払を受けるべき日の属する年における収入金額として同条の規定を適用する。)

 (2) 使用人から役員になった者に対しその使用人であった勤続期間に係る退職手当等として支払われる給与(退職給与規程の制定又は改正をして、使用人から役員になった者に対しその使用人であった期間に係る退職手当等を支払うこととした場合において、その制定又は改正の時に既に役員になっている者の全員に対し当該退職手当等として支払われる給与で、その者が役員になった時までの期間の退職手当等として相当なものを含む。)

 (3) 役員の分掌変更等により、例えば、常勤役員が非常勤役員(常時勤務していない者であっても代表権を有する者及び代表権は有しないが実質的にその法人の経営上主要な地位を占めていると認められるものを除く。)になったこと、分掌変更等の後における報酬が激減(おおむね50%以上減少)したことなどで、その職務の内容又はその地位が激変した者に対し、当該分掌変更等の前における役員であった勤続期間に係る退職手当等として支払われる給与

 (4) いわゆる定年に達した後引き続き勤務する使用人に対し、その定年に達する前の勤続期間に係る退職手当等として支払われる給与

 (5) 労働協約等を改正していわゆる定年を延長した場合において、その延長前の定年(以下この(5)において「旧定年」という。)に達した使用人に対し旧定年に達する前の勤続期間に係る退職手当等として支払われる給与で、その支払をすることにつき相当の理由があると認められるもの

 (6) 法人が解散した場合において引き続き役員又は使用人として清算事務に従事する者に対し、その解散前の勤続期間に係る退職手当等として支払われる給与

 

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。