相続時精算課税の選択

2019-03-30 17:05:21 | 相続・贈与(税)

相続時精算課税の選択

1 制度の概要

 相続時精算課税の制度とは、原則として60歳以上の父母又は祖父母から、20歳以上の子又は孫に対し、財産を贈与した場合において選択できる贈与税の制度です。この制度を選択する場合には、贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日の間に一定の書類を添付した贈与税の申告書を提出する必要があります。
 なお、この制度を選択すると、その選択に係る贈与者から贈与を受ける財産については、その選択をした年分以降全てこの制度が適用され、暦年課税へ変更することはできません。
 また、この制度の贈与者である父母又は祖父母が亡くなった時の相続税の計算上、相続財産の価額にこの制度を適用した贈与財産の価額(贈与時の時価)を加算して相続税額を計算します。このように、相続時精算課税の制度は、贈与税・相続税を通じた課税が行われる制度です。

2 適用対象者

 贈与者は贈与をした年の1月1日において60歳以上の父母又は祖父母、受贈者は贈与を受けた年の1月1日において20歳以上の者のうち、贈与者の直系卑属(子や孫)である推定相続人又は孫とされています。
 なお、贈与により「非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例(措法70の7の5)」の適用に係る非上場株式等を取得する場合、贈与者が贈与をした年の1月1日において60歳以上であれば、受贈者が贈与者の直系卑属(子や孫)である推定相続人以外の者(贈与を受けた年の1月1日において20歳以上の者に限ります。)でも適用できます。

3 適用対象財産等

 贈与財産の種類、金額、贈与回数に制限はありません。

4 税額の計算

(1) 贈与税額の計算

 相続時精算課税の適用を受ける贈与財産については、その選択をした年以後、相続時精算課税に係る贈与者以外の者からの贈与財産と区分して、1年間に贈与を受けた財産の価額の合計額を基に贈与税額を計算します。
 その贈与税の額は、贈与財産の価額の合計額から、複数年にわたり利用できる特別控除額(限度額:2,500万円。ただし、前年以前において、既にこの特別控除額を控除している場合は、残額が限度額となります。)を控除した後の金額に、一律20%の税率を乗じて算出します。
 なお、相続時精算課税を選択した受贈者が、相続時精算課税に係る贈与者以外の者から贈与を受けた財産については、その贈与財産の価額の合計額から暦年課税の基礎控除額110万円を控除し、贈与税の税率を適用し贈与税額を計算します。
(注) 相続時精算課税に係る贈与税額を計算する際には、暦年課税の基礎控除額110万円を控除することはできませんので、贈与を受けた財産が110万円以下であっても贈与税の申告をする必要があります。

(2) 相続税額の計算

 相続時精算課税を選択した者に係る相続税額は、相続時精算課税に係る贈与者が亡くなった時に、それまでに贈与を受けた相続時精算課税の適用を受ける贈与財産の価額と相続や遺贈により取得した財産の価額とを合計した金額を基に計算した相続税額から、既に納めた相続時精算課税に係る贈与税相当額を控除して算出します。
 その際、相続税額から控除しきれない相続時精算課税に係る贈与税相当額については、相続税の申告をすることにより還付を受けることができます。
 なお、相続財産と合算する贈与財産の価額は、贈与時の価額とされています。

5 適用手続

 相続時精算課税を選択しようとする受贈者(子又は孫)は、その選択に係る最初の贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間(贈与税の申告書の提出期間)に納税地の所轄税務署長に対して「相続時精算課税選択届出書」を受贈者の戸籍の謄本などの一定の書類とともに贈与税の申告書に添付して提出することとされています。
 相続時精算課税は、受贈者(子又は孫)が贈与者(父母又は祖父母)ごとに選択できますが、いったん選択すると選択した年以後贈与者が亡くなる時まで継続して適用され、暦年課税に変更することはできません。

賃金支払いの原則 等

2019-03-30 16:34:54 | 労働・社会保険

 賃金支払いの原則 等

 1、賃金が全額確実に労働者に渡るように、支払い方にも決まりがあり、次の4つの原則が定められています(労働基準法第24条)。

 [1]通貨払いの原則
 賃金は現金で支払わなければならず、現物(会社の商品など)で払ってはいけません。ただし、労働者の同意を得た場合は、銀行振込み等の方法によることができます。また、労働協約で定めた場合は通貨ではなく現物支給をすることができます。

 [2]直接払いの原則
 賃金は労働者本人に払わなければなりません。未成年者だからといって、親などに代わりに支払うことはできません。

 [3]全額払いの原則
 賃金は全額残らず支払われなければなりません。したがって「積立金」などの名目で強制的に賃金の一部を控除(天引き)して支払うことは禁止されています。 ただし、所得税や社会保険料など、法令で定められているものの控除は認められています。それ以外は、労働者の過半数で組織する労働組合、または労働者の過半数を代表する者と労使協定を結んでいる場合は認められます。

 [4]毎月1回以上定期払いの原則
 賃金は、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければなりません。したがって、「今月分は来月に2か月分まとめて払うから待ってくれ」ということは認められませんし、支払日を「毎月20日~25日の間」や「毎月第4金曜日」など変動する期日とすることも認められません。ただし、臨時の賃金や賞与(ボーナス)は例外です。

 2、その他にも、労働者の生活の保障のために賃金について、以下のような決まりもあります。

 [1]減給の定めの制限(労働基準法第91条)
 労働者が、無断欠勤や遅刻を繰り返して職場の秩序を乱したり、職場の備品を勝手に私用で持ち出したりするなどの規律違反をしたことを理由に、制裁として、賃金の一部を減額することを減給といいます。一回の減給金額は平均賃金の1日分の半額を超えてはなりません。また、複数回規律違反をしたとしても、減給の総額が一賃金支払期における金額(月給なら月給の金額)の10分の1以下でなくてはなりません。

 [2]休業手当(労働基準法第26条)
 使用者の責任で労働者を休業させた場合には、労働者の最低限の生活の保障を図るため、使用者は平均賃金の6割以上の休業手当を支払わなければなりません。したがって、「働いていないから給料を支払わないのは仕方ない」ということはなく、休みが会社の都合である以上、一定程度の給料を保障する必要があります。

 [3]給与明細書(所得税法第231条)
 所得税法では、給与を支払う者は給与の支払を受ける者に支払明細書を交付しなくてはならないと定められています。したがって、会社には従業員に給与明細書を交付する義務があり、給与を支払う際に交付しなければいけません。

 3、休憩・休日の決まり

 使用者は1日の労働時間が6時間を超える場合には少なくとも45分、8時間を超える場合には少なくとも60分の休憩を勤務時間の途中で与えなければいけません(労働基準法第34条)。
 休憩時間は労働者が自由に利用できるものでなければならないので、休憩中でも電話や来客の対応をするように指示されていれば、それは休憩時間ではなく労働時間とみなされます。
 また、労働契約において労働義務を免除されている日のことを休日といいます。使用者は労働者に毎週少なくとも1回、あるいは4週間を通じて4日以上の休日を与えなければなりません。(法定休日、労働基準法第35条)


給与が一部未払の場合の源泉徴収 所得税

2019-03-30 16:13:51 | 税務・会計 所得税

 給与が一部未払の場合の源泉徴収

 役員や使用人に毎月支払われる給与等が、定められた支給日に支払われずに未払となる場合、源泉徴収は給与等を実際に支払う際に行いますので、原則として支払われるまでは源泉徴収は行われないこととなります。

 ただし、役員に対する賞与は、支払の確定した日から1年を経過した日までにその支払がされない場合には、その1年を経過した日において支払があったものとみなされ源泉徴収を行います。
 給与等の一部を支払い、残額が未払となる場合には、支払うべき給与等の金額に対する所得税のうち、実際に支払う給与等の金額に対応する部分の所得税及び復興特別所得税を源泉徴収する必要があります。

 具体的には、まずその月に支払うべき給与等の金額を「給与所得の源泉徴収税額表」に当てはめて所得税及び復興特別所得税の額を求めます。次に、求めた所得税及び復興特別所得税の額に、支払うべき給与等の金額を分母とし、実際に支払った給与等の金額を分子とした割合を掛けます。このようにして算出した所得税及び復興特別所得税の額が、実際に支払った給与等から源泉徴収する税額です。
 また、年末調整を行う際に未払が残っている場合は、その未払となっている給与等の金額も年間の給与等の支払金額の総額に含めるとともに、その未払給与等に対応する所得税及び復興特別所得税の額も年間の所得税及び復興特別所得税の額の総額に含めたところで年末調整を行います。

借地非訟事件の種類

2019-03-30 15:46:46 | 裁判
 借地非訟事件の種類

 借地非訟事件として取り扱うことができる事件は,次の5種類です。

 (1) 借地条件変更申立事件(借地借家法17条1項)
 
 借地契約には,借地上に建築できる建物の種類(居宅・店舗・共同住宅など)・建物の構造(木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造など)・建物の規模(床面積・階数・高さなど)・建物の用途(自己使用・賃貸用・事業用など)等を制限している例が多く見られます(よくあるのは「借地上の建物は,非堅固建物に限る」といったもので,このような制限を借地条件といいます。)。
 
 借地権者が,これらの借地条件を変更して,別の構造等の建物に新しく建て替えたい場合,たとえば,「木造建物」(非堅固建物)を「ビル」などの鉄筋コンクリート造の建物(堅固建物)に建て替えたい場合には,土地所有者との間で借地条件を変更する旨の合意をすることが必要になりますが,土地所有者との間で合意をすることができないことがあります。
 
 このようなとき,借地権者は,借地条件変更の申立てをして,裁判所が相当と認めれば,借地契約の借地条件を変更する裁判を受けることができます。
 
 なお,東京地裁の借地非訟係では,借地契約において,地上の建物の建替え(改築)・増築・大修繕等をするには土地所有者の承諾が必要である旨の定めがある場合に,適法に借地条件の変更を必要とする増改築をしようとするときは,借地条件変更の申立てとともに,後記(2)の増改築許可の申立てをしていただく扱いをすることになりました。

 (2) 増改築許可申立事件(借地借家法17条2項)
 
 借地契約には,借地上の建物の建替え(改築)・増築・大修繕等をする場合には土地所有者の承諾が必要であると定めている例が多く見られます。このような場合,借地権者は,土地所有者の承諾を得る必要がありますが,土地所有者の承諾を得られないことがあります。

 このようなとき,借地権者は,増改築許可の申立てをして,裁判所が相当と認めれば,土地所有者の承諾に代わる許可の裁判を受けることができます。

 (3) 土地の賃借権譲渡又は転貸の許可申立事件(借地借家法19条1項)

 借地契約が土地の賃貸借契約の場合,借地権者が借地上の建物を譲渡するときは,(これに伴って土地の賃借権も移転することになるため)土地所有者の承諾を得る必要がありますが(民法612条),土地所有者の承諾を得られないことがあります。

 このようなとき,借地権者は,土地の賃借権譲渡許可の申立てをして,裁判所が相当と認めれば,土地所有者の承諾に代わる許可の裁判を受けることができます。

 (4) 競売又は公売に伴う土地賃借権譲受許可申立事件(借地借家法20条1項)

 借地契約が土地賃貸借契約の場合,競売又は公売で借地上の建物を買い受けた人は,(これに伴って土地の賃借権も譲り受けることになるため)土地の賃借権の譲受けについて土地所有者の承諾を得る必要がありますが(民法612条),土地所有者の承諾を得られないことがあります。

 このようなとき,借地上の建物を買い受けた人は,競売又は公売に伴う土地賃借権譲受許可の申立てをして,裁判所が相当と認めれば,土地所有者の承諾に代わる許可の裁判を受けることができます。

 この申立ては,建物の代金を支払った後2か月以内にしなければならないので,ご注意ください(借地借家法20条3項)

 (5) 借地権設定者の建物及び土地賃借権譲受申立事件(借地借家法19条3項,20条2項)

 上記の(3)(土地の賃借権譲渡又は転貸の許可申立事件)及び(4)(競売又は公売に伴う土地賃借権譲受許可申立事件)の場合,土地所有者には自ら土地の賃借権を借地上の建物と一緒に優先的に買い取ることができる権利(「介入権」といわれています。)が与えられています。

 土地所有者は,裁判所が定めた期間内に限り,介入権を行使する申立てをすることができます。

 裁判所が定めた期間内に介入権行使の申立てがありますと,原則として,土地所有者が借地権者の建物及び土地の賃借権を裁判所が定めた価格で買い受けることになります。