請負契約に係る収入金額の収入すべき時期 裁決事例 所得税

2019-09-30 14:10:41 | 税務・会計 所得税

 請負契約に係る収入金額の収入すべき時期は、役務の提供の完了した日とした事例

 要旨

 原処分庁は、請求人が取引先に請負に係る報酬を請求した時に、収入すべき権利が確定したといえるから、請求人の事業所得の金額の計算上総収入金額に算入すべき金額は、その年中に請求人が取引先に請求した役務の提供に係る対価の合計額となる旨主張する。

 しかしながら、請求人と取引先との間の請負契約は、請求人及びその従業員が、取引先から指示されたブロックの溶接等を行うというものであるから、物の引渡しを要しない役務の提供を内容とする請負契約であると認められる。そして、取引先は、請求人の報酬を日々の作業時間から算出していたこと、また、請求人は既に完了した溶接等の報酬の支払を随時請求することができたことからすれば、請求人と取引先は、日々の役務の提供が完了するごとに報酬請求権が発生、確定する旨の請負契約を締結していたと認めるのが相当である。そうすると、請求人が取引先との間で締結した請負契約に基づく報酬請求権の収入すべき時期は、その役務の提供が完了した日の属する年分となり、本件各年分の事業所得の金額の計算上総収入金額に算入すべき金額は、それぞれ暦年の1月1日から12月31日までになされた役務の提供に係る対価の合計額となる。

 平成25年3月25日裁決


 所得税法基本通達

 (事業所得の総収入金額の収入すべき時期)

 36-8 事業所得の総収入金額の収入すべき時期は、別段の定めがある場合を除き、次の収入金額については、それぞれ次に掲げる日によるものとする。(昭49直所2-23改正)

 (1) 棚卸資産の販売(試用販売及び委託販売を除く。)による収入金額については、その引渡しがあった日

 (2) 棚卸資産の試用販売による収入金額については、相手方が購入の意思を表示した日。ただし、積送又は配置した棚卸資産について、相手方が一定期間内に返送又は拒絶の意思を表示しない限り特約又は慣習によりその販売が確定することとなっている場合には、その期間の満了の日

 (3) 棚卸資産の委託販売による収入金額については、受託者がその委託品を販売した日。ただし、当該委託品についての売上計算書が毎日又は1月を超えない一定期間ごとに送付されている場合において、継続して当該売上計算書が到達した日の属する年分の収入金額としているときは、当該売上計算書の到達の日

 (4) 請負による収入金額については、物の引渡しを要する請負契約にあってはその目的物の全部を完成して相手方に引き渡した日、物の引渡しを要しない請負契約にあってはその約した役務の提供を完了した日。ただし、一の契約により多量に請け負った同種の建設工事等についてその引渡量に従い工事代金等を収入する旨の特約若しくは慣習がある場合又は1個の建設工事等についてその完成した部分を引き渡した都度その割合に応じて工事代金等を収入する旨の特約若しくは慣習がある場合には、その引き渡した部分に係る収入金額については、その特約又は慣習により相手方に引き渡した日

 (5) 人的役務の提供(請負を除く。)による収入金額については、その人的役務の提供を完了した日。ただし、人的役務の提供による報酬を期間の経過又は役務の提供の程度等に応じて収入する特約又は慣習がある場合におけるその期間の経過又は役務の提供の程度等に対応する報酬については、その特約又は慣習によりその収入すべき事由が生じた日

 (6) 資産(金銭を除く。)の貸付けによる賃貸料でその年に対応するものに係る収入金額については、その年の末日(貸付期間の終了する年にあっては、当該期間の終了する日)

 (7) 金銭の貸付けによる利息又は手形の割引料でその年に対応するものに係る収入金額については、その年の末日(貸付期間の終了する年にあっては、当該期間の終了する日)。ただし、その者が継続して、次に掲げる区分に応じ、それぞれ次に掲げる日により収入金額に計上している場合には、それぞれ次に掲げる日
 イ 利息を天引きして貸し付けたものに係る利息  その契約により定められている貸付元本の返済日
 ロ その他の利息  その貸付けに係る契約の内容に応じ、36-5の(1)に掲げる日
 ハ 手形の割引料  その手形の満期日(当該満期日前に当該手形を譲渡した場合には、当該譲渡の日)


建物の価額 不動産鑑定評価 裁決事例 相続税

2019-09-28 16:08:15 | 相続・贈与(税)

 請求人らが、相続により取得した建物の価額は、固定資産評価基準を基に財産評価基本通達に従って評価すべきであり、請求人の主張する不動産鑑定評価額には合理性が認められないとした事例

 ポイント

 本事例は、請求人が相続により取得した建物は、機能的、経済的観点から市場性が全く認められないため解体除去を要し、このことを前提として算定された不動産鑑定評価額が時価であるとの主張に対し、当該不動産鑑定評価額には合理性が認められないとした上で、固定資産評価基準が定める評価の方法によっては再建築費を適切に算定することができない特別の事情等は認められないから、同基準に従って決定した固定資産税評価額に依拠した相続税評価額は適正な時価であると判断したものである。

 要旨

 請求人らは、相続により取得した家屋(本件家屋)及びその敷地(本件土地)について、本件家屋は、大改修を行っても収益性回復は困難で、機能的、経済的観点から市場性が全く認められないため、解体除去が必要であるとして本件家屋及び本件土地(併せて本件不動産)の最有効使用を判定した不動産鑑定士による鑑定評価書(本件鑑定評価書)には合理性があり、本件鑑定評価書に基づく価額が時価である旨、また、本件家屋の固定資産税評価額は一般常識からかけ離れた評価がされている旨主張する。

 しかしながら、本件家屋は、相続の開始時において、その一部が貸店舗や被相続人等の居宅として利用されていたことからすると、本件家屋には相応の経済価値があったと認められる。一方、本件鑑定評価書における最有効使用の判定に当たっては、不動産鑑定評価基準に定める現実の本件家屋の用途等を継続する場合の経済価値と本件家屋を解体除去した場合の解体除去費用等を適切に勘案した経済価値との十分な比較考量がされているとは認め難いことなどから、本件鑑定評価書に合理性があるとは認めるに足りず、本件土地の更地価格から本件家屋の解体除去費用を控除した本件鑑定評価書による価額が、本件不動産の時価を適正に評価したものであるとは認め難い。

 したがって、本件鑑定評価書に基づく請求人らの主張立証によって、財産評価基本通達の定めに従って評価した本件不動産の価額が時価であるとの事実上の推認を覆すには至らない。また、本件家屋の固定資産税評価額については、その価額を求めるに当たり、固定資産評価基準が定める評価の方法によっては再建築費を適切に算定することができない特別の事情又は固定資産評価基準が定める減点補正を超える減価を要する特別の事情は認められないから、固定資産評価基準に従って決定した固定資産税評価額が適正な時価であると推認される。

 ところで、当審判所の調査によると、本件家屋の固定資産税評価額は相続開始日前に遡及して一部減額されており、その減額前の固定資産税評価額に依拠した相続税評価額によりなされた原処分は、その一部を取り消すこととなる。

 平成31年2月20日裁決


労働者の定義 使用者の定義

2019-09-27 16:45:14 | 労働・社会保険

 労働者の定義

 労基法では労働者を、「職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」であると定義しています(労基法9)。すなわち、「使用される者」で「賃金を支払われる者」が労働者となります。実際に労働者かどうか判断する場合の「労基法上の労働者」性を判断する基準は、次のとおりとされています(この要件は一般に「使用従属性」と呼んでいます)。

 (1)労務提供の形態が使用者の指揮監督下の労働であること
 (2)報酬が労務に対する対償として支払われていること
 
 なお、労基法上の労働者性は、契約の内容や文言にとらわれることなく、実態として使用従属性があるか否かを検討したうえで判断すべきものであり、さらに、判断が困難なケースでは、(1)の労務提供の形態と(2)の報酬の労務対償性とともに、関連する諸要素をも勘案して、総合的に判断することが必要となります。
 
 以上の「労基法上の労働者」性を判断する基準は、これまでの裁判例や厚生労働省が示している解釈例規を元に、要旨、次のとおり整理されています(労基法研究会報告「労基法の『労働者』の
判断基準について」昭60.12.19)。
 
 ○ 使用従属性に関する判断基準
 (1)「指揮監督下の労働」に関する判断基準
 ア 具体的な仕事の依頼、業務従事等に対しての諾否の自由があるか否か
 イ 業務遂行上の指揮監督の有無
 ① 業務の内容及び遂行方法について「使用者」の具体的な指揮命令を受けているか否か
 ② 「使用者」の命令・依頼により、通常、予定されている業務以外の業務に従事することがあるか否か
 ウ 勤務場所及び勤務時間が指定され、管理されているなど拘束性があるか否か
 エ 労務提供に代替性があるか否か
 (2)報酬の労務対償性に関する判断基準
 報酬の性格が使用者の指揮監督下に一定時間の労務を提供していることに対する対価と判断されるか否か

 短時間労働者(パートタイム労働者)
 短時間労働者は、1 週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者よりも短い者をいい、パート法が適用されます。また、労基法、安衛法、最賃法などの労働関係諸法令の適用も受けることになります。したがって、例えば、労働契約、解雇、退職、年次有給休暇、就業規則などに関する労基法の規定も原則としてフルタイム労働者と同様に適用されることになります。

 請負
 請負は、「当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる」(民法632)とした民法の定めに基づくものであり、その仕事を請け負った請負人が、注文主や使用者の指揮監督によらず、自らの権限と責任において仕事を完成させるものをいいます。したがって、請負人は一般的には労働者には該当しません。しかし、契約の形式が請負であっても、注文主が請負人に直接、指揮命令しながら仕事を進めるなど実態的に使用従属性が認められれば、「労働者」に該当することとなります。

 委任
 委任は、「当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる」(民法643)とした民法の定めに基づくもので、受任者は自らの知識、経験によって事務を処理するものです。したがって、委任を受けた者は一般には労働者には該当しません。しかし、契約の形式が委任であっても、委託者が受託者に直接、指揮命令しながら委任された仕事を進めるなど実態的に使用従属性が認められれば、「労働者」に該当します。

 嘱託
 嘱託は、形式上は事務の委任(民法656)、請負(民法632)、代理商(商法27、会社法16)などであっても、これらの者と企業との関係が使用する者と使用される者という関係で、それらの者が企業から指揮命令を受けて労働しているという実態にあるならば「使用従属関係」があると認められて「労働者」となります。すなわち、企業から指揮命令を受けてそのとおりに働いているものとみられる場合(従事場所、従事内容、従事時間、従事費用、従事状況報告、従事義務と責任、不利益取扱と制裁、対価たる報酬・賞与等の性格、欠務等の連絡などを総合して判断されます。)には、たとえ「本契約は労働契約でなく、業務委託契約である。」旨を明文で記載しており、そのことを本人が承諾していたとしても、労働者に該当することとなります。

 役員
 法人、団体の役員は、法人、団体からの信託に基づきその運営に当たる者ですので、一般には労働者には該当しません。しかし、これらの役員のうち業務執行権や代表権を有しない者が、工場長
などの職にあって賃金を受けている場合には、その限りで労働者に該当することとなります。

 家事使用人
 家事使用人には、原則として労基法は適用されません。ただし、個人家庭における家事を事業として請け負う者に雇われて、その指揮命令の下に当該家事を行う者は、家事使用人に該当しません。労契法は上記のような制限がなく、一般的に適用されます。

 家内労働者
 「家内労働者」は、物品の製造・加工業者や販売業者(問屋など)またはこれらの請負業者から、主として、労働の対価を得るため、その業務の目的物である物品について委託を受けて、物品の製造又は加工等に従事する者であり、労基法は適用されません。しかし、家内労働法にいう「委託者」と「家内労働者」の関係には、家内労働法が適用され、工賃の支払いなどについて労基法、安衛法に類した規制があります。

 使用者の定義
 
 労基法上の使用者【労基準第10 条】とは、
 ①事業主
 ②事業の経営担当者、
 ③労働者に関する事項について、事業主のために行為をする者をいいます。

 使用者 事業主(法人組織の法人そのもの、個人事業主)、事業の経営担当者(法人の代表者、役員等)、労働者に関する事項について事業主のために行為をする者(労働条件の決定、業務命令の発出、具体的な指揮監督等を行う者、上司の命令の伝達者にすぎない場合は、使用者になりません。)

 一方、労契法上の使用者【労契法第2 条第2 項】とは、労働者と相対する労働契約の締結当事者であり、その使用する労働者に対して賃金を支払う者をいいます。したがって、個人企業の場合はその企業主個人を、会社その他の法人組織の場合はその法人そのものを指します。

裁判外紛争解決手続(ADR)とは

2019-09-20 17:48:48 | 裁判

 裁判外紛争解決手続(ADR)とは

 裁判によることもなく、法的なトラブルを解決する方法、手段など一般を総称する言葉です。例えば、仲裁、調停、あっせんなど、様々なものがあります。裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律では、「訴訟手続によらずに民事上の紛争の解決をしようとする当事者のため、公正な第三者が関与して、その解決を図る手続」というものとしています。

 「仲裁」は、当事者の合意(仲裁合意)に基づいて、仲裁人で構成される仲裁廷が実案の内容を調べた上で判断(仲裁判断)を示し、当事者がこれに従うべきこととなる手段です。

 「調停」、「あっせん」とは、当事者の間を調停人、あっせん人が中立的な第三者として仲介し、トラブルの解決についての合意ができるように、話し合いや交渉を促進したり、利害を調整したりする手続です。

 裁判とかいけつサポートの違い(主なもの)

         裁判             かいけつサポート
 実施主体    裁判官            各分野の専門家
 秘密の保護   公開             非公開
 手続の進行   民事訴訟法に従った手続進行  ニーズに応じた柔軟な手続進行が可能
 費用      裁判所の訴訟費用       ADR機関に支払う費用
 強制執行力   ある             なし

 民間ADRの業務の認証制度(裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律)の概要
 
 紛争の当事者がその解決を図るのにふさわしい手続を選択することを容易にし、もって国民の権利の適切な実現に資することを目的
 法定の基準・要件に適合するものを法務大臣が認証
 認証を受けた民間ADRの利用に関し、所定の要件の下に、時効中断効、訴訟手続の中止効等の法的効果が付与
 利用者に紛争解決手続についての選択の目安を提供するため、認証ADRの業務に関する情報を法務省ホームページ等において公表


損害賠償金 消費税

2019-09-20 15:18:39 | 税務・会計 消費税・その他税目等

 損害賠償金

 心身又は資産に対して加えられた損害の発生に伴って受ける損害賠償金については、通常は資産の譲渡等の対価に当たりません。ただし、その損害賠償金が資産の譲渡等の対価に当たるかどうかは、その名称によって判定するのではなく、その実質によって判定すべきものとされています。

 例えば、次のような損害賠償金は、その実質からみて資産の譲渡又は貸付けの対価に当たり、課税の対象となります。
 
 1 損害を受けた棚卸資産である製品が加害者に対して引き渡される場合において、その資産がそのまま又は軽微な修理を加えることによって使用することができるときにその資産の所有者が収受する損害賠償金

 2 特許権や商標権などの無体財産権の侵害を受けた場合に権利者が収受する損害賠償金

 3 事務所の明渡しが遅れた場合に賃貸人が収受する損害賠償金

 (消基通5-2-5)