遺産分割の協議後に他の相続人が死亡して当該協議の証明者が一人となった場合の相続による所有権の移転の登記の可否

2019-08-01 12:45:25 | 不動産登記

 遺産分割の協議後に他の相続人が死亡して当該協議の証明者が一人となった場合の相続による所有権の移転の登記の可否について(通知)

 〔平成28年3月2日付法務省民二第154号〕先例

 法務省民二第154号

 平成28年3月2日

 法務局民事行政部長 殿(大阪を除く)
 地方法務局長      殿

 法務省民事局民事第二課長

 遺産分割の協議後に他の相続人が死亡して当該協議の証明者が一人となった場合の相続による所有権の移転の登記の可否について(通知)

 標記について、別紙甲号のとおり大阪法務局民事行政部長から当職宛てに照会があり、別紙
 乙号のとおり回答しましたので、この旨貴管下登記官に周知方お取り計らい願います。

 別紙甲

 不登第21号

 平成28年2月8日

 遺産分割の協議後に他の相続人が死亡して当該協議の証明者が一人となった場合の相続による所有権の移転の登記の可否について(照会)

 所有権の登記名義人Aが死亡し、Aの法定相続人がB及びCのみである場合において、Aの遺産の分割の協議がされないままBが死亡し、Bの法定相続人がCのみであるときは、CはAの遺産の分割(民法(明治29年法律第89号)第907条第1項)をする余地はないことから、CがA及びBの死後にAの遺産である不動産の共有持分を直接全て相続し、取得したことを内容とするCが作成した書面は、登記原因証明情報としての適格性を欠くものとされています(東京高等裁判所平成26年9月30日判決(平成26年(行コ)第116号処分取消等請求控訴事件)及び東京地方裁判所平成26年3月13日判決(平成25年(行ウ)第372あ号処分取消等請求事件)参照)。これに対して、上記の場合において、BとCの間でCが単独でAの遺産を取得する旨のAの遺産の分割の協議が行われた後にBが死亡したときは、遺産の分割の協議は要式行為ではないことから、Bの生前にBとCの間で遣産分割協議書が作成されていなくとも当該協議は有効であり、また、Cは当該協議の内容を証明することができる唯一の相続人であるから、当該協議の内容を明記してCがBの死後に作成した遺産分割協議証明書(別紙)は、登記原因証明情報としての適格性を有し、これがCの印鑑証明書とともに提供されたときは、相続による所有権の移転の登記の申請に係る登記をすることができると考えますが、当該遺産分割協議証明書については、登記権利者であるC一人による証明であるから、相続を証する情報(不動産登記令(平成16年政令第379号)別表の22の項添付情報欄)としての適格性を欠いているとの意見もあり、当該申請に係る登記の可否について、いささか疑義がありますので照会します。


 照会の別紙

 遺産分割協議証明書

 平成20年11月12日〇県〇市〇区〇町〇丁目〇番〇号Aの死亡によって開始した相続における共同相続人B及びCが平成23年5月10日に行った遺産分割協議の結果、〇県〇市〇区〇町〇丁目〇番〇号Cが被相続人の遺産に属する後記物件を単独取得したことを証明する。

 平成27年1月1日          〇県〇市〇区〇町〇丁目〇番〇号   
                       Aの相続人兼Aの相続人Bの相続人
                                  C         ㊞   

 不動産の表示  (略)

 別紙乙

 法務省民二第153号

 平成28年3月2日

 大阪法務局民事行政部長  殿

 法務省民事局民事第二課長

 遺産分割の協議後に他の相続人が死亡して当該協議の証明者が一人となった場合の相続による所有権の移転の登記の可否について(回答)

 本年2月8日付け不登第21号をもって照会のありました標記の件については、貴見のとおり取り扱われて差し支えありません。


 平成26年3月13日 東京地方裁判所

(裁判要旨)

被相続人甲の相続人が乙及び丙の2人であり,被相続人甲の死亡に伴う第1次相続について遺産分割未了のまま乙が死亡し,乙の死亡に伴う第2次相続における相続人が丙のみである場合において,丙が被相続人甲の遺産全部を直接相続した旨を記載した遺産分割決定書と題する書面を添付してした当該遺産に属する不動産に係る第1次相続を原因とする所有権移転登記申請については,被相続人甲の遺産は,第1次相続の開始時において,丙及び乙に遺産共有の状態で帰属し,その後,第2次相続の開始時において,その全てが丙に帰属したというべきであり,上記遺産分割決定書によって丙が被相続人甲の遺産全部を直接相続したことを形式的に審査し得るものではないから,登記官が登記原因証明情報の提供がないとして不動産登記法25条9号に基づき上記申請を却下した決定は,適法である。

 (登記研究758(H23.4) 質疑応答)
 Aの共同相続人BCへ相続を原因とする所有権の移転の登記が未了の間にBが死亡した場合には、Cを相続人とする遺産分割協議書またはBの特別受益証明書などの添付がない限り、直接AからCへの相続による所有権の移転の登記を申請することはできない。

(登記研究759(H23.5) カウンター相談)
 まず、BCへ相続を原因とする所有権の移転の登記をした上で、Bの持分についてCへ相続を原因とする所有権の移転の登記をすべき

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