相続開始前3年以内に贈与 裁決事例 相続税・贈与税

2019-07-31 09:50:00 | 相続・贈与(税)

 相続開始前3年以内に贈与があった場合の当該贈与財産の価額を相続税の課税価格に加算したとしても、贈与税の課税関係が消滅するものではないとした事例

 請求人は、本件定期預金については、相続税法第19条の規定により相続税の課税価格とみなして本件相続税の課税価格に加算しているから、贈与税の課税対象とはならない旨主張するが、同条の規定の趣旨は、相続税法が採用している相続税の累進税率の適用による税負担が、財産を生前贈与することによって軽減されて公平を欠く結果となることを考慮し、相続開始前3年以内の贈与財産の価額を相続税額の計算上、相続財産の価額に加算することにより所要の調整をすることにあると解されるところ、同条第1項の規定により相続税の課税価格とみなされた贈与財産については、贈与税が課税されることが前提とされたものであって、贈与財産の価額を相続税の課税価格に加算したからといって贈与税の課税関係が消滅するものではない。

 本件においては、贈与税の課税が相続税の課税関係より後になされているが、それをもって贈与税の課税の当否に何ら影響を及ぼすものではない。

 平成10年3月11日裁決

 相続税法基本通達

 (「課せられた贈与税」の意義)
 19-6 法第19条に規定する「課せられた贈与税」には、相続開始前3年以内の贈与財産に対して課されるべき贈与税(法第36条第1項及び第2項の規定による更正又は決定をすることができなくなった贈与税を除く。)も含まれるものとして取り扱うものとする。この場合において、当該贈与税については、速やかに課税手続をとることに留意する。(昭42直審(資)5、昭46直審(資)6、昭57直資2-177改正、平15課資2-1改正)

他人の建物について行った内部造作の減価償却の方法 法人税

2019-07-26 19:00:50 | 税務・会計 法人税

 他人の建物について行った内部造作の減価償却の方法

 照会要旨

 平成19年4月1日以後に取得をした建物の減価償却の方法については、定額法によりその計算を行うこととされています。
 ところで、平成19年4月1日以後に他人の建物について内部造作を行った場合には、その減価償却の方法についても定額法によりその計算を行うこととなりますか。

 回答要旨

 他人の建物について行った内部造作については、その内部造作が建物附属設備に該当する場合を除き、建物として減価償却を行うことになります。したがって、平成19年4月1日以後に取得をしたものについては、定額法によりその計算を行うこととなります。
 なお、この場合の耐用年数については、耐用年数の適用等に関する取扱通達1-1-3((他人の建物に対する造作の耐用年数))により合理的に見積もった年数によることとなります。

 理由

 1. 法人税法上、減価償却資産は限定列挙されているところであり(法人税法施行令第13条)、他人の建物について行った内部造作についても、そのいずれかに分類されることとなります。この場合、それが法人税法施行令第13条((減価償却資産の範囲))に掲げる減価償却資産のいずれに当たるのかについては、明確な規定はありませんが、自己の建物について行った内部造作については当該建物の耐用年数を適用する取扱い(耐用年数の適用等に関する取扱通達1-2-3)の考え方からすれば、他人の建物について行った内部造作についても、同条の規定上、建物附属設備に該当するものを除き、建物に含まれることと解するのが相当と考えられます。

 2. したがって、他人の建物について行った内部造作のうち建物附属設備に該当しないものについては、減価償却の償却方法について定めた法人税法施行令第48条又は第48条の2((減価償却資産の償却の方法))の適用上、同令第48条第1項第1号又は第48条の2第1項第1号ロの規定が適用されることとなりますので、その内部造作が平成19年4月1日以後に取得されたものである場合にはその償却の方法は定額法によりその計算を行うこととなります。

時間外勤務が深夜に及ぶ場合のホテル代 源泉所得税・給与課税

2019-07-25 18:47:17 | 税務・会計 所得税

 時間外勤務が深夜に及ぶ場合のホテル代

 照会要旨

 A社では、従業員の時間外勤務が深夜に及び、通常使用している交通機関を利用して帰宅することができない場合には、タクシーを利用して帰宅させていましたが、従業員の健康、時間の効率化及び経費節約等の観点から、本人の選択によりタクシーの利用に代えて、近くに所在するホテルの深夜利用を認め、そのホテル代をA社が負担することとしました。
 この場合、従業員に対する経済的利益の供与として課税する必要がありますか。

 回答要旨

 給与等として課税する必要はありません。

 時間外勤務が深夜に及び通常使用している交通機関を利用することができない場合に従業員をホテルに宿泊させるものですので、そのホテル代は、給与所得者の役務提供に対する対価という性格が欠けるか希薄であり、会社が負担すべき業務遂行上の費用であると考えられます。
 なお、退社時間やチェックイン時刻など、時間外勤務が深夜になったことによるホテルの利用であることを明確にしておく必要があります。

可分債権の遺産分割性 裁決事例 相続税 

2019-07-24 19:39:18 | 相続・贈与(税)

可分債権である貸付金債権については、可分債権であることをもって分割の対象とならない財産とみるのは相当ではなく、
1. 共同相続人間で実際に分割が行われた場合、
2. 実際に分割が行われないまでも、相続分に応じて取得する旨の共同相続人全員の合意がされた場合、
3. 一部の相続人が可分債権に対する自己の相続分相当の権利を行使した場合など、
明らかにその全部又は一部の帰属が確定している場合を除き、他の未分割財産と一体として取り扱うのが相当であるとした事例

 本件は、原処分庁が申告漏れ財産が存在するとして第一次更正処分を行うとともに、遺産の一部未分割の場合には、分割済財産を特別受益と同じように考慮に入れ、いわゆる穴埋方式により課税価格を計算すべきであるとして第二次更正処分を行ったところ、請求人が、
1. 遺産の一部未分割の場合の課税価格は、分割済財産を考慮することなく、いわゆる積上方式で課税価格を計算すべきである、
2. 関係法人に対する貸付金債権(以下「本件貸付金債権」という。)の評価額は○○○○円である等として、原処分の全部の取消しを求めている事案であり、争点は、次の5点である。
 1 未分割財産がある場合の相続税の課税価格の計算方法
 2 本件貸付金債権の評価額
 3 土地の評価額(広大地評価の適用の有無)
 4 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例の適用の有無
 5 第二次賦課決定処分の適否

 最高裁判決によれば、相続人が数人ある場合において、相続財産中に金銭その他の可分債権があるときには、その債権は法律上当然に分割され、各相続人がその相続分に応じて権利を取得するものと解される。

しかしながら、遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをするとされるところ、金銭等の可分債権については、その他の財産の分配における過不足を調整させる意味合いから、一般的には、これらを一体と捕らえた遺産分割が行われているところであり、また、家庭裁判所の実務においても、最高裁判決を前提としながらも、遺産を総合的に分割するためには、預金等を含めた方が合理的であり、その実際的必要性が高いため、預金等の可分債権を遺産分割の対象にしている例が多いと認められる。

このような実体を相続税賦課の観点からみるときは、最高裁判決を前提として相続財産が可分債権であることを考慮に入れてもなお、当該財産をもって分割の対象とはならない財産とみることは相当ではないから、当該可分債権について、
 1. 共同相続人間で実際に分割が行われた場合、
 2. 実際に分割が行われないまでも、相続分に応じて取得する旨の共同相続人全員の合意がされた場合、
 3. 一部の相続人が可分債権に対する自己の相続分相当の権利を行使した場合など、
 明らかにその全部又は一部の帰属が確定している場合を除き、他の未分割財産と一体として取り扱うのが相当である。

 平成19年10月24日裁決

 変更判例

 1. 最高裁平成28年12月19日決定

  共同相続された普通預金債権、通常貯金債権及び定期貯金債権は、いずれも、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となるものと解するのが相当である。
  普通預金は銀行や信用金庫などの預金、通常貯金及び定期貯金はゆうちょ銀行の貯金であり、この決定では、厳密には銀行などの定期預金・定期積金は対象となっていませんでした。

 2. 最高裁平成29年4月6日判決

  共同相続された普通預金債権は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはないものというべきである。
 
 従前の最高裁判例

 最高裁平成16年4月20日判決
 
 相続財産中に可分債権があるときは、その債権は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されて各共同相続人の分割単独債権となり、共有関係に立つものではない。

借地権の及ぶ範囲 相続税・贈与税

2019-07-23 12:43:57 | 相続・贈与(税)

 借地権の及ぶ範囲

 照会要旨

 郊外にあるレストランやパチンコ店のように、賃借した広い土地を建物の敷地と駐車場用地とに一体として利用している場合には、その土地全体に借地権が及ぶものとして評価してよいのでしょうか。

 回答要旨

 借地権の及ぶ範囲については、必ずしも建物敷地に限られるものではなく、一律に借地権の及ぶ範囲を定めることは実情に沿いません。借地権の及ぶ範囲は、借地契約の内容、例えば、権利金や地代の算定根拠、土地利用の制限等に基づいて判定することが合理的であると考えられます。

 なお、建物の敷地と駐車場用地とが、不特定多数の者の通行の用に供されている道路等により物理的に分離されている場合には、それぞれの土地に存する権利を別個に判定することとなります。