定期給与の増額改定に伴う一括支給額 定期同額給与 法人税

2020-01-31 14:17:56 | 税務・会計 法人税

 定期給与の増額改定に伴う一括支給額 (定期同額給与)

 照会要旨

 当社(年1回3月決算)は、6月末の定時株主総会において役員に対して支給する定期給与(その支給時期が1月以下の一定の期間ごとであるものをいいます。以下同じ。)について増額改定を決議することとしています。増額改定に当たっては、期首の4月にそ及して増額することとし、4月分から6月分までの給与の増額分は7月に一括支給することとしています。
 このような支給形態であっても、7月に一括支給する増額分を含め、法人税法第34条第1項第1号(役員給与の損金不算入)に規定する定期同額給与として当該事業年度の損金の額に算入することができますか。

 回答要旨

 7月に一括支給する増額分は、定期同額給与に該当しないため、損金の額に算入されません。

 理由

 法人が役員に対して支給する給与(一定の給与を除きます。)のうち損金算入されるものの範囲は、次に掲げるものとされています。
 1 定期同額給与
 2 所定の時期に確定した額の金銭又は確定した数の株式(出資を含みます。)、新株予約権、確定した額の金銭債権に係る特定譲渡制限付株式又は特定新株予約権(注)を交付する旨の定めに基づいて支給する給与で一定の要件を満たすもの
 3 業績連動給与で一定の要件を満たすもの

 これらの役員給与は、いずれもその役員の職務執行期間開始前にその職務に対する給与の支給時期、支給する金銭の額又は株式の数等について「事前」に定められているものに限られています。
 したがって、照会の場合のように既に終了した職務に対して、「事後」に給与の額を増額して支給したものは、上記1から3までのいずれにも該当しないことから、当該事業年度の損金の額に算入されないこととなります。

 (注) 法人税法第54条第1項に規定する特定譲渡制限付株式又は同法第54条の2第1項に規定する特定新株予約権で次の定めに基づいて交付されるもの又はこれらに係る同項に規定する承継譲渡制限付株式又は承継新株予約権による給与をいいます。
 また、特定譲渡制限付株式の取扱いは、平成28年4月1日以後に開始する事業年度について適用されます。
 なお、特定新株予約権の取扱いは、平成29年10月1日以後に特定新株予約権の交付に係る決議又は交付をするその特定新株予約権について適用されます。

 (定めの内容)

 役員の職務につき、株主総会、社員総会その他これらに準ずるものの決議により定められたもので、次の要件を満たすもの。
 1 職務の執行の開始の日から1月を経過する日までにされる決議による定めであること
 2 役員の職務につき所定の時期に確定額を支給する旨の定めであること
 3 決議の日から1月を経過する日までに、その職務につきその役員に生ずる債権の額に相当する特定譲渡制限付株式又は特定新株予約権を交付する旨の定めであること

特殊関係者間の不等価交換 土地 贈与税・(譲渡)所得税

2020-01-24 14:51:11 | 相続・贈与(税)
 
 特殊関係者間の不等価交換 土地 贈与税・(譲渡)所得税

 照会要旨

 甲は、その所有する土地A(時価5,000万円)を乙所有の土地B(時価2,000万円)と交換しました(甲・乙は兄弟である。)。

 1 甲及び乙の譲渡所得に係る収入金額は、それぞれが交換により取得した土地の時価相当額によるべきですか。
 2 時価ベースでみるときは、乙は、低額譲受による経済的利益3,000万円を得ることになりますが、贈与税の課税価格は、A土地の相続税評価額からB土地の時価を差引いた額でよいでしょうか。
 3 固定資産の交換の特例を適用することができますか。

 回答要旨

 1 交換により譲渡した場合の収入金額は、交換により取得する資産の時価相当額によりますが、照会の場合は、甲・乙間に特殊の関係があり、その交換は純粋な経済取引とは認められず、乙は、A土地とB土地の時価の差額を贈与(低額譲受けによる経済的利益の享受)により取得したものと認められますので、その贈与により取得したと認められる金額(3,000万円)は、乙の譲渡所得の収入金額とはなりません。
 2 贈与税の課税価格は、土地の時価を基として算定すべきですから、乙の低額譲受による経済的利益の額は、A土地とB土地の時価の差額(3,000万円)となります。
 3 A土地とB土地の時価の差額(3,000万円)がいずれか高い方(A土地)の時価(5,000万円)の20%相当額を超えていることから、固定資産の交換の特例は適用できません。

 したがって、甲及び乙は、譲渡収入金額を2,000万円とする譲渡所得が課税されることになります(乙には上記2のとおり、別途、経済的利益の額3,000万円について贈与税が課税されます。)。

一括償却資産を除却した場合の取扱い 法人税

2020-01-23 17:21:46 | 税務・会計 法人税
 
 一括償却資産を除却した場合の取扱い

 照会要旨

 当社では、前期において、パソコンを10台(1台当たり15万円)購入し、決算においては一括償却資産としてその取得価額の合計額の3分の1を損金の額に算入しました。
 ところが、今期になって事業規模を縮小することとなったため、そのうちの3台を除却しましたが、この場合に、当期の損金算入額は、除却したパソコンの取得価額のうち未だ損金の額に算入されていない金額30万円(15万円×3-15万円)と残り7台について一括償却資産として損金の額に算入できる限度額35万円(15万円×7台×1/3)の合計額65万円となるのでしょうか。

 回答要旨

 一括償却資産を事業の用に供した事業年度(以下「供用事業年度」という。)後の各事業年度において除却の事実が生じた場合であっても、その損金算入額は、あくまで一括償却資産の損金算入規定による損金算入限度額50万円(15万円×10台×1/3)に達するまでの金額となります。

 理由

 法人が、一括償却資産について、法人税法施行令第133条の2((一括償却資産の損金算入))の規定の適用を受けることを選定した場合において、例えば、供用事業年度の翌事業年度中にその資産の全部又は一部につき滅失、除却等の事実が生じたときに、その滅失等した減価償却資産の取得価額のうちで未だ損金算入されていない金額に相当する金額の全額をその翌事業年度の損金の額に計上できるのかどうかという疑問が生じます。
 この点、同条第1項の文理上、一括償却資産の取得価額の合計額を供用事業年度以後の各事業年度の「費用の額又は損失の額とする方法を選定したとき」に同項に定める損金算入限度額の範囲内で損金の額に算入することとなるのですから、法人がその方法を選定した以上、たとえその一括償却資産について滅失等が生じたときであっても、その損金算入限度額は同項に規定する金額になると解されます。
 また、同条の規定が設けられた趣旨は、取得価額が20万円未満の減価償却資産を企業が個別管理することによる事務負担に配慮したものであり、このことからすれば、供用事業年度後の個々の資産の状況にかかわらず同条第1項の規定に従い計算される損金算入限度額の範囲内での損金算入を行うべきものであると考えられます。
 そこで、取得価額が20万円未満の減価償却資産につき、法人がこの規定の適用を選定した場合においては、供用事業年度後の各事業年度において滅失、除却等の事実が生じた場合であっても、その損金算入額は、その滅失等した減価償却資産の取得価額のうちで未だ損金算入されていない金額に相当する金額の全額ではなく、同項の規定による損金算入限度額に達するまでの金額になります(法人税基本通達7-1-13)。
 また、一括償却資産の全部又は一部を譲渡した場合についても同様に取り扱われます(法人税基本通達7-1-13(注))。
 したがって、一括償却資産の損金算入の規定の適用を選定した減価償却資産の一部につき除却した場合であっても、その償却限度額は、パソコン10台(除却した3台を含みます。)に対応する金額50万円(15万円×10台×1/3)となりますから、除却したパソコン3台に係る除却損相当額(本件の場合は30万円)の全額を当期の損金の額に算入することは認められません。

公正証書による贈与契約 相続財産 裁決事例 相続税・贈与税

2020-01-22 13:52:12 | 相続・贈与(税)
 
 公正証書による贈与契約 相続財産

 1. 書面による贈与契約であってもその契約の効果が真実生じているか否かを実質的に判断するべきであるとした事例
 2. 複数の連帯保証人と物上保証人がある場合の負担割合は平等であるとした事例

 1. 請求人は、本件不動産について、本件相続開始前に本件公正証書に基づいて請求人の子らが被相続人から生前贈与を受けたものであり、本件相続財産ではない旨主張する。

 しかしながら、本件不動産の所有権移転登記手続および使用収益の状況などに照らすと、被相続人は、本件公正証書に基づいて、孫らに対し本件不動産を真に贈与する意思を有していたとは認め難く、孫らも、本件不動産を取得したとする認識があったとは認められない。

 また、公正証書を作成した目的が、請求人が主張するように、孫らに対する相続税の節税のための生前贈与にあるとするならば、孫らの親権者である請求人を含めた当事者は、本件不動産についての贈与税の申告が必要であるとの認識を有していたとみるのが自然であるところ、本件不動産に係る贈与税の申告はされていない。

 そうすると、本件公正証書は将来の相続税の負担を回避するなど、何らかの意図を持って作成された、実体を伴わない形式的な文書であるとみるのが自然かつ合理的であり、本件公正証書によって被相続人と孫らの間に贈与の合意が成立していたものとは到底認められず、請求人の主張には理由がない。
 
 2. 請求人は、本件連帯保証債務について、銀行取引約定書における連帯保証人としての署名・押印は請求人の承諾なく被相続人が無断で行ったものであり、請求人の保証人としての責任はもとより発生しておらず、本件借入金に係る保証人は被相続人一人であるから本件連帯保証債務の全額を債務控除すべきである旨主張する。

 しかしながら、銀行取引約定書には請求人の実印が押印されていること、主たる債務者である関係法人の当時の代表者が請求人自身であること、また、請求人は銀行から請求人あてに発せられた催告書に対して異議を述べた形跡がないことなどからみて、請求人は保証人であることを十分に認識していたと認めるのが相当であり、請求人の主張は採用できない。

 また、本件借入金については、連帯保証人以外に物上保証人がいることから保証人は3名となり、その負担額は均等であると認められることから、本件相続について債務控除すべき被相続人の保証債務の額は、本件連帯保証債務の額の3分の1とするのが相当である。

 平成15年3月25日裁決

被用者保険の適用事業所の範囲の見直し 個人事業 厚生年金・健康保険

2020-01-10 10:53:08 | 労働・社会保険

 被用者保険の適用事業所の範囲の見直し
 
 現行制度

法人事業所の場合、業種や従業員規模にかかわらず被用者保険の適用事業所となる(強制適用事業所)。

 個人事業所の場合には、強制適用事業所の範囲は、法定された 16 の業種のいずれかに該当し、常時5人以上の従業員を使用するものに限られている。法定 16 業種以外の非適用業種または従業員数5人未満の個人事業所は、適用事業所となることについて労使合意があった場合(任意包括適用事業所 )を除き、非適用となっている。

 ① 物の製造、加工、選別、包装、修理又は解体の事業 ② 土木 、建築その他工作物の建設、改造、保存、 修理 、変更、破壊、解体又はその準備の事業 ③ 鉱物の採掘又は採取の事業
 ④ 電気又は動力の発生、伝導又は供給の事業 ⑤ 貨物又は旅客の運送の事業 ⑥ 貨物積みおろしの事業 ⑦ 焼却、清掃又はと殺の事業 ⑧ 物の販売又は配給の事業 ⑨ 金融又は保険の事業 ⑩ 物の保管又は賃貸の事業 ⑪ 媒介周旋の事業 ⑫ 集金、案内又は広告の事業 ⑬ 教育、研究又は調査の事業 ⑭ 疾病の治療、助産その他医療の事業 ⑮ 通信又は報道の事業
 ⑯ 社会福祉法に定める社会福祉事業 及び更生保護

 見直し案

 非適用業種のうち、法律 ・会計に係る行政手続等を扱う 業種(いわゆる「士業」)については、被用者保険適用に係る事務処理能力が期待できる上、
 ① 全事業所に占める個人事業所の割合が高いこと、特に、常用雇用者数5人以上の個人事業所の割合が他の業種に比して高いことから、被用者として働きながら非適用となっている方が多いと見込まれる。
 ② 制度上、法人化に一定の制約条件があるか、そもそも法人化が不可能であることから、他の業種であれば大宗が法人化しているような規模でも個人事業所に留まっている割合が高く、被用者保険制度上で個別に対応を図る必要性が高いといった要素を考慮し、適用業種とすることを検討。

 具体的には、制度上、法人化に一定の制約条件があるか、そもそも法人化が不可能な業種として、弁護士・司法書士・行政書士・土地家屋調査士・公認会計士・税理士・社会保険労務士・弁理士・公証人・海事代理士を適用業種とすることを検討。

 改正案提出予定等
 
 2020年通常国会に提出し、2022年10月からの適用を目指す。