みちしるべの伝説

音楽と希望は刑務所でも奪えない。

音楽に連なる俳句

2009年11月14日 | 俳句・短歌
5・7・5のたった17文字で世界を鮮やかに描き出す俳句。
その潔いところが、好き。

最近、俳句収集は、さぼりぎみでしたが、
セントラル愛知交響楽団のパンフレットで見つけた俳句が、極めてツボだったので、このブログに飾ることにしました。

出典はこちらです。
聖五月森をフーガの駆け巡り

ハイドンの聞こえくる窓走り梅雨

夏空に百人(もろびと)の声ひびきけり

仲秋や祈りの声は闇に消え

ざわめきを海に沈めて秋深し

五線譜の彼方に続く冬銀河

鳥引きて湖(うみ)に波音戻りけり
 (俳句:齊藤一郎・俳句監修:片山由美子)


そらみみ特選は、「五線譜」の句だろうか。
ほんとうに見事。
思い浮かべて下さい。空に流れ出す音楽が、星空に連なり、やがては銀河になる情景を。
ロマンチックすぎ。

「仲秋」の句も「仲秋」「祈り」「闇」の取り合わせが素晴らしい。
祈りが闇に消えた後の静寂。こういう静かさの中に神は宿る?
ピアノでも、最後の音は、こんな感じで、余韻を感じたい。

「走り梅雨」は、「ハイドン」のおかげで、なんだか明るい梅雨空に感じられる。
そうだ。ハイドン・パパのユーモア、弾いてみたかったんだっけ。

「聖五月」の句、五月の森と掛けて、フーガと解く。山歩きする身には、この感覚は良く分かります。
森って、フーガ的なんです。

ということで、久々の俳句鑑賞でした。
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忘れ難いヒロイン

2009年07月18日 | 俳句・短歌
詩の紹介です。
北村薫氏が141回の直木賞受賞となったけど、少し前に読んだ氏の本で紹介されていた詩がとても印象深かったのでした。
ただし、暗い話なので、気落ち気味の方は読まれませんように。
集団
ホアンはテレサを愛していて テレサはライムンドを愛していて
ライムンドはマリアを愛していて マリアはホアキンを愛していて ホアキンはリリーを愛していて
リリーは誰も愛していなかった
ホアンはアメリカ合衆国へ行ってしまい テレサは修道院へ
ライムンドは思いがけない事故で死に マリアは独身でとおし
ホアキンは自殺し リリーは平凡な男 J・ピント・フェルナンデスと結婚した
カルロス・ドルモン・ジ・アンドラージ(田村さと子・訳)

この詩に対して、氏の寄せた感想は、
愛する者たちが、次々と挫折する姿はわたしたちを引き付けます。いってみれば、これは愛に収斂(しゅうれん)して見せた、理想と現実のドラマです。理想は人間にとって、手の届かぬ高みにあるものです。だからこそ、ここにある痛ましさに、胸を打たれるのではないでしょうか。そして<<自殺し>>の次にあるのは、誰も愛さぬリリーが、<<平凡な男>>と結婚したという、まるで田舎町の新聞にでも出てくるような事務的な言葉です。
 リリーは、きっと恐ろしく、ものの見えている女性なのでしょう。理想というもの、もろさ、あるいは極論するなら、うさん臭さを知っている。だから、孤独なのです。リリーは、その認識によって、すでに生きながら<<自殺し>>ているのでしょう。
 この詩の怖ろしさは、そういう独りぼっちの人間だけが、結婚し得るところにあります。
 (中略)
 愛の詩は、世の中に数多くあります。しかし、このように見事に、夢見ぬ心を、愛の荒涼を、歌いきってしまった例は少ないのではないでしょうか。
 ここには、紛れも無く、ある方向から見た人生の真実があり、哀しみがあります。リリーは泣かずに、死の時まで生きて行くことでしょう。しかし、それを見つめる読者の心は震えます。
 ここにも忘れ難いヒロインがいる、と、わたしは思いました。


氏の明晰な文筆、冴えている。
見えすぎるということは、怖いことであり、哀しいこと。
この文章に触れて、リリーの詩は、忘れ難いものになったのでした。
常々、人の営みも一種の芸術のように感じられるのだけど、リリーが”心の鎖”を断ち切る時の音は、どんなだっただろう?

10年ほど前のちょうど今の時期、自ら命を絶った友のことが思い出され、複雑な思いになるのでした・・・。
歳を重ねると、だんだんと生者と死者の境が薄らいでいく。

蝉時雨 音の向こうの黄泉の国

愛すべき妻なし子なし蝉時雨

暗い話で、申し訳ありません・・・。

詩歌の待ち伏せ〈1〉 (文春文庫)
北村 薫
文藝春秋

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詩歌の待ち伏せ〈上〉
北村 薫
文藝春秋

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受賞作は読んでいないのだけど、六の宮の姫君は、氏の文学の素養に圧倒されつつ、健やかで爽やかなミステリー。文学の香り高い傑作でした。

読みたい本、たくさんあるのだけど、時間がない・・・。とほほ・・・。
まあ、本は映画と違って、旬を逃してもいいから、安心だけど。



六の宮の姫君 (創元推理文庫)
北村 薫
東京創元社

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鷺と雪
北村 薫
文藝春秋

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梅が咲く

2009年01月31日 | 俳句・短歌
ここ数日の暖かさのせいか、早咲きの梅が咲く。うれしい。
梅一輪 一輪ほどの あたたかさ
( 服部嵐雪)

一輪ほどであっても、暖かくなってゆくのは、うれしい。

このところ仕事に追われ、心も荒みがち。
暖かいことの、ありがたさを強く感じる今日この頃。
コメント (4)
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冬の俳句

2009年01月11日 | 俳句・短歌
最近出会った新春の俳句。俳句収集の成果。

初暦知らぬ月日の美しく
(吉屋信子)

オリオンの盾新しき年に入る
(橋本多佳子)

星恋のまたひととせのはじめの夜
(山口誓子)

目出度さもちう位なりおらが春
(小林一茶)

初春や子が買いくれしオルゴール
(日野草城)

皆、味わい深い、いい句。
初暦の句は清々しく、オリオンは凛として、星恋はロマンチック。
肩肘張らない一茶は身の丈にあってるなあ。
オルゴールは、なんて柔らかくて優しいんだろう!
ということで、今年も、いい俳句、収集しよう。
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秋、しみじみと深まりぬ

2008年10月31日 | 俳句・短歌
俳句は、相変わらず、ぽつぽつと収集中。もっぱらNHK俳句で。
で、選者の、正木ゆう子さん、長谷川 櫂さんのファンだったりする。この辺に少し画像も発見。正木ゆう子さんは、おっとりとした感じがとても好印象。長谷川 櫂さんも精悍で男前、格好いい。
好きな俳人が、いいと言う俳句は、いいなあと思えてくるんだな・・・。
*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*
肌寒し一灯夕餉雨寂
(いっとう ゆうげ あめしずか)
(大田区 井手晃一)

星屑の恋する秋となりにけり
(長谷川櫂)

渡り鳥 わが名つぶやく人欲しや
(原裕(はらゆたか))
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肌寒しの句。どことなく寂しげで、でも感傷的にならず、この落ち着きと潔さが欲しい。言葉どうしの共鳴、余韻もいいではないか・・・。
星屑の句。なんてロマンチックな・・・。降参!長谷川櫂氏、ダンディすぎる。
渡り鳥の句。寂しい心持が、大空を渡る鳥たちに託される。この句はすごく好きだな。素直な思いがいい。

と言うことで、秋、しみじみと深まりぬ。でありますね。
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名月や・・・。

2008年09月14日 | 俳句・短歌
名月をとってくれろと泣く子かな
(一茶)
*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*
微笑ましい光景。もうすぐ2歳の姪もこんなふうになるのかな・・・。

宵の口、走る。
虫の音と、そよ吹く風と、心音と・・・。
振り返れば、頭上は名月。

かなり頑張って、コンパクトデジカメ+双眼鏡で撮ってみた。
ちょっと疲れた・・・。
一眼レフデジカメが欲しいけど、品選びが・・・。(←老化現象かも)

そして、月の光をレパートリに入れる!

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春の灯、伎芸天、嬰など

2008年05月23日 | 俳句・短歌
なかなかブログに書けないけど、俳句の鑑賞は、ぼちぼち続いているのでした。少し前のNHK俳句より。


春灯の影置き給ふ伎芸天
(鳥栖市 野田たけし)

これからの夢語り合う春灯(はるともし)
(千葉市 宇田川敏二)

春の灯や ねむれる嬰(やや)のさくらいろ
(詠み人知らず)

伎芸天の句・・・秋篠寺の伎芸天ですね。容姿端麗、器楽の技芸が群を抜いていたとのこと。静かなお堂の中に、静やかに浮かび上がる女神像。なんて素敵なんだろう。女神様のご加護がありますように。

春灯(はるともし)の句・・・「はるともし」と読ませるところが、なんだか新鮮。若者の生き生きとした感じが出てる。

嬰の句・・・嬰児という言葉もあるぐらいなので、確かに「やや」ですね。春の灯、赤ちゃん、さくらいろ、あと、嬰の字には、貝殻の首飾りの女の子のイメージもあり、なんとも心が和む取り合わせではないか。

ちなみに、音楽の世界で半音高いという意味で使われる「嬰」、起源は中国、雅楽にあるんですね。少し賢くなった。
コメント (2)
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すみれ

2008年03月27日 | 俳句・短歌

春の野に すみれ摘みにと 来(こ)しわれそ
 野をなつかしみ 一夜(ひとよ)寝にける
(山部赤人)

今年も、すみれの花の季節になったな。
「なつかしい」=「心がひかれ、離れがたい感情」

庭に咲いたすみれは、控えめで、地味なかんじ。
そして、なつかしい。

すみれと言えば、あいも変わらず、スプートニクの恋人(村上春樹)で、
スプートニクの恋人 (講談社文庫)
村上 春樹
講談社

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そして、モーツァルトの「すみれ」ですね。


モーツァルト:歌曲集
シュワルツコップ(エリザベート)
EMI MUSIC JAPAN(TO)(M)

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冬の俳句

2008年01月30日 | 俳句・短歌
久しぶりに俳句。依然、収集熱は健在ですね。
冬は冴え渡る空に、星空がきれいな季節。と言うことで、

真砂なす数なき星のその中に吾に向ひて光る星あり
(正岡子規)

好きなんだな。この歌の世界観は。高校の頃に知って以来、お気に入りの歌。だからかもしれないけれど、次の句を少し前の俳句番組で知って、

冬星のひとつを恃みつつあゆむ
(木下夕爾)

これは、良いなあと思った。「真砂なす」は静止しているのだけど、「冬星」の句は前に進んでいる。
何かに頼ることからは、思い上がりのない謙虚な姿が浮かび上がってくるし、その頼るものが「星」である。寒空の下、冬星を恃みに思いつつ、てくてく歩いてゆく男、一人ありけり。ん~、ささやかにロマンを感じませんか?

ちなみに、この会の選者の正木ゆう子さんも曰く、この「ひとつ」の星はシリウスで、
「シリウス」と言えば、遊佐さんの「シリウス」。
「ひとつ」と言えば、遊佐さんの「ONE」。
どちらもとても好きな曲。
と言う事で、歳を経るごとに、好きなものが絡み合って、感動(←ちょっとおおげさ)は深まってゆくみたい。

行けばまたその先少し雪明り
(船橋市 白石勉)

結局は、こういうものだと思う。人生は。と語れるほどの人生経験は積んでいないのだけど・・・。多分、そうなる予感はあるんだけど・・・。
万事、絶望的になることもないし、さりとて楽観的にもなれないけれど、少しずつ前に進んでいけば、道はほのかに照らされて、また、先に進んでいけるよ。きっと。大丈夫。と言うメッセージが、この句から伝わってこないかな?

残菊に真直なる茎なかりけり
(詠み人知らず)

菊の姿を、よく見ているなと思う。よく見ること=愛情というのは大げさ?。多くを語らなくとも、作者の菊の花への想いが伝わってくる。
やつれ、衰えていくものへ思いを寄せること、哀惜の念、美しいと思う。

言葉をぎりぎりに削ぎ落とす潔さ。見事に575に落とし込む技。余韻を醸しつつ、心のありようを表現すること。本当に見事だと思う。改めて、俳句は究極の詩だなあと思う。
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秋の句

2007年11月12日 | 俳句・短歌
相変わらず、いい俳句収集熱、健在。最近のNHK俳句番組より。
どれも有名な句なんだろうけど、初学者の自分は、どれも、へえ~、いい句だなぁと感心することしきりなのだった。
*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*
わがいのち菊にむかひてしづかなる
(水原秋桜子)

天高し雲行く方(かた)に我も行く
(高浜虚子)

露の世は露の世ながらさりながら
(一茶)

よろこべばしきりに落つる木の実かな
(富安風生)

墨の香の溶けゆく雨や嵯峨の秋
(吹風)(すいふう)(=山形由美さん)
*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*
秋桜子の句。菊の花と対峙して、心静まる様子がよいなぁ。余分なもののない、すっきりした佇まいの美しさ。
野に菊の咲く季節になった。家の周りにも、其処かしこ、いろんな種類の菊が目を楽しませてくれる。
菊後の花=雪、という言葉もあるようで、菊の花は、花リレーの取りになるんですね。
競馬の菊花賞のネーミングも、なるほど、頷ける。
(薀蓄話の好きなおっさんにはなりたくないけれど、結局は薀蓄ではないか・・・。)

虚子の句。大きくて、潔くて、素晴らしい。

一茶の句。一茶が50を過ぎて授かった長女を亡くした時の句か・・・。「さりながら」=「だが、しかし」。露のようにはかない命だけど・・・。
太閤秀吉の辞世の歌「露と落ち~」よりも、こちらの方が印象に残る。

富安風生の句。なんだか、ほっとする。あったかい。ほのぼのとしたのがいいなぁ。そして、どんぐりころころだ。

山形由美さんの句。墨の香とは、風流だなぁ。秋の嵯峨も訪ねてみたい。吹風とは、フルーティストらしい俳号ですね。
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