アミメキンセンガニ抱卵♀ Matuta planipes Fabricius
鈴鹿沖の底引きで得られた生き物を観察する機会があった。
トリガイは低酸素の影響でほとんどが死んでいたという話を聞いた。
カニたちを入れた水槽を覗き込んでいると、アミメキンセンガニが斜めに上がったり、降りたりする泳ぎっぷりが目を引いた。
いつもは波打ち際で見かけることの多いアミメキンセンガニ。砂の中にすばやく潜る様子しかこれまで観察できていなかった。
歩脚は平板状。甲の表面は滑らかで、紫色の網目模様がある。
ハサミの形を見ていると、カラッパらしいなあと思えてくるが、このカニはカラッパ科からキンセンガニ科に変わったとの情報も流布されている。
学研の『日本の水生動物』(2004)ではカラッパ科、文一総合出版の『海の甲殻類』(2002)では近似種のキンセンガニをキンセンガニ科、小学館の『水の生物』(2005)ではキンセンガニをコブシガニ科としている。
いったい、アミメキンセンガニは何科が正解なのであろうか。
2008.7.19
キンセンガニ
アミメキンセンガニ 上が♂、下が♀
アミメキンセンガニ♂
国際的に分類学者の間ではキンセンガニ科Matutidaeを生かす傾向が強いようです.
それというのも,もともとカラッパ科Callapidaeに含めてキンセンガニ亜科Matutinaeとしていたのが,最近は形態の明らかな差をもとに,キンセンガニ科Matutidaeを独立させる分類学者が増えてきているということです.遺伝子レベルの研究も含めてさらに研究が進めばはっきりするでしょうが,現在ではキンセンガニ科を独立させる人が多いのは確かであるというのが,最近のカニ類のモノグラフ(→URL,PDF):Ng, Guinot & Davie (2008)に書かれています.
日本の商業出版社が出している書物,特に昔の本を焼き直してそのまま改訂もせずに売っている図鑑など,疑ってかかった方がよいでしょう.
文一総合出版の『海の甲殻類』が一番最近になって書かれたもののはずなので,信用するならこの本でしょう.
どうやら正解にたどりついたようです。
疑問を解き明かしていただき、ありがとうございました。
美味しいと言われているガザミやイシガニが獲れるので、他のカニには見向きもしません。