田中川の生き物調査隊

平成12年3月発足。伊勢湾に注ぐ田中川流域の自然と生き物を調べ、知らせる活動をしています。三重県内の生き物も紹介します。

ヒメベンケイガニ

2009-08-29 | カニ
ヒメベンケイガニ
ベンケイガニ科のヒメベンケイガニ Nanosesarma minutum (De Man, 1887)

学名は『干潟の生きもの図鑑』(三浦知之)に従った。原色日本大型甲殻類図鑑(Ⅱ)ではイワガニ科の Nanosesarma gordoni(Shen,1935) となっている。どうやら、この2種の間には相違点が無さそうということで、新しいほうの学名が消えてしまったらしい。科名もいつのまにか変更されているが、経緯は知らない。

熊野灘に小さな川が注ぐ、その護岸にカキ類が付着している。中でもケガキが目立つ。そんな所に泥をかぶった小さなカニが居た。数は少ないことはない。
「甲および胸脚に軟毛が密生し、生時は泥に被われている。」(『干潟の生きもの図鑑』)

原色日本大型甲殻類図鑑(Ⅱ)によると、ヒメベンケイガニは「甲の前縁中央に深いくぼみがある。前側縁には眼後歯の後に明らかな切れ込みにより、眼後歯を含めて2歯がある。潮間帯の岩礁海岸に生息し、トラノオなどの根元に付着している。」

「甲長6mm、甲幅7㎜程度。本州中部以南、中国大陸まで分布する。岩礁や貝類の間に見つかり、干潟でも外洋側のカキ殻などの中に見つかる」(『干潟の生きもの図鑑』)

National Institute of Oceanographyというサイトには、分布は「India, Taiwan, China, Singapore and Indonesia」、生息地は「Mud flats of estuary and backwaters」としてあった。

2009.8.22
ヒメベンケイガニ

ヒメベンケイガニ

カワスナガニ

2009-08-28 | カニ
カワスナガニ
カワスナガニDeiratonotus japonicus (Sakai, 1934)

熊野灘流入の中小河川2ヵ所でカワスナガニの生息を確認した。既知の生息地以外である。

かつてはスナガニ科ムツハアリアケガニ亜科とされていたが、現在はムツハアリアケガニ科となっている。

三重県では絶滅危惧ⅠB類(EN)としている。三重県レッドデータブックによると、「甲長6.5mm、甲幅7㎜ほど。甲はほぼ六角形で表面には小顆粒が密生し、歩脚の長節後縁、前節前後縁に長い毛が列生する。砂泥中の有機物をすくって食べる」
また同書によると、現況・減少要因を「1969年に尾鷲市賀田の古川河口で生息記録があるのみであり、その後36年間確認記録が無い。満潮時に淡水と海水が混じり合う場所に生息していること、河口の砂泥底の転石下に生息することから、このような生息に適した環境が減少したことが要因と考えられる」としている。
さらに保護対策として、「生息地の河川工事や汚染などによる環境の破壊をさけなければならない。また、潮間帯の転石下に生息するため、このような環境を確保する必要がある。今後は既知生息を始めとする熊野灘沿岸河川河口を精査し、生息状況を把握することが最も重要である」としている。

環境省の干潟調査報告書(2007)によると、
「伊豆半島,紀伊半島,四国南岸,九州沿岸,奄美大島(Kawane et al. 2005),それに沖縄島(仲宗根・伊礼, 2003a)の汽水域上流部から知られる日本固有の希少種である.今回の調査からは,以上の分布域に加え,周防灘沿岸の山口県光市島田川からも記録された.」

環境省のカテゴリでは 準絶滅危惧(NT)、福岡県では絶滅危惧Ⅰ類、高知県や鹿児島県、沖縄県では準絶滅危惧種としている。

三重県内での生息記録については、2006年に古川で1個体、また熊野川では高密度の生息を当時東海大学の学生であった上野淳一君が確認している。彼は「県内では尾鷲市の古川以南に生息し、最南端の熊野川では高密度であったことからやや南方系であることが示唆された。また、河口から約1~2km上流の砂泥地の転石下に多く生息しており、汽水域を好むことが分かった。」と三重自然誌の会情報誌70号に発表している。
彼は三重県内での分布を古川以南と決め付けているが、決め付けるのはいかがかと思う。その時の調査結果にしか過ぎない。

ネット検索をすると、三重県内のカワスナガニの生息については、すでに複数のサイトで熊野灘流入河川とか紀伊半島河川とかの表記で明らかにしているところである。しかも県外の人がである。私もある人に1ヶ所教えてもらって、生息を確認した。
なお、今回はカニ屋が一人同行しているので、然るべき所へ記録を残してくれることだろう。

カワスナガニと同じ所でタイワンヒライソモドキやヒメヒライソモドキも見つかる。ヒメヒライソモドキは1枚だけ撮れていたので載せておく。
2009.8.22~23

追記
南紀生物,51(1):3-34,29に木邑聡美らが「三重県赤羽川河口域で採集されたカワスナガニ(ムツハアリアケガニ科)」を発表した。2007年10月6日に採集したという。
それによると、1991年にも古川での採集記録があることが明らかにされている。その根拠となる文献は
寺田正之.1995:カワスナガニDeiratonotus japonicus (Sakai, 1934) (スナガニ科,ムツバアリアケガニ亜科)のゾエア幼生.Crustacean Research,24,203-09.

また、同報告書で木邑聡美らは「これら以外に,三重県内で生息地の記録は見当たらなかった。」としている。
つまり木邑らは上野淳一君の記録を確認していないのである。三重自然誌の会情報誌はお目に留まらなかったようである。

なお、赤羽川、古川、熊野川の既知産地以外に、2009.9に津市のカニ屋が紀北町内3河川、尾鷲市内4河川でカワスナガニを見つけている。


カワスナガニ
この写真の中に5個体のカワスナガニが居る。分かるかな。

カワスナガニ

カワスナガニ

カワスナガニ

カワスナガニ

カワスナガニ

カワスナガニ
以上がすべてカワスナガニ

タイワンヒライソモドキ
カワスナガニと同じ所に居たヒメヒライソモドキ(タイワンヒライソモドキではない)。てっきりカワスナガニと思って撮っていた。

ホリカワクシヒゲガガンボが室内に

2009-08-27 | ハエ目(双翅目)
ホリカワクシヒゲガガンボ
ホリカワクシヒゲガガンボ Pselliophora bifascipennis Brunetti, 1911 

学名はCatalogue of the Craneflies of the Worldに拠ったが、数年前から Ctenophora (Pselliophora) bifascipennis (Brunetti, 1911) と紹介している人も居るが、調べた図鑑類にはこの種が載っていなかった。属名がどこかで変更されたようである。

夏の夜、私の部屋に侵入してきたガガンボは蛍光灯の周りをしばらく飛び回った後、パソコンやカーテンに止まった。翅長は約14ミリ。
このガガンボはお尻を持ち上げて、さほどふらつきもせず飛ぶ。翅を広げて飛んでいるようには見えなくて、ヘリコプターが飛んでいるような印象を持っている。こんな飛び方をするガガンボが他に居るのかどうか知らないが、子供時分から見ているような記憶がある。

探した図鑑には載っていなかったので、ネット検索した。翅脈の斑紋と触角が特徴的なところからホリカワクシヒゲガガンボの♂と思える。

ある画像掲示板でDipterophilus と名乗る人が「ベッコウガガンボに近縁のホリカワクシヒゲガガンボ」について次のようにコメントしていた。
「幼虫は腐葉土中などに生息しており,暖地に多い種で,市街地などにも時々現われます.この仲間はみな櫛歯状の触角に特徴があります.雌では腹の先が細く尖った産卵器に変化していて,これを使って腐葉土中に産卵します.幼虫は腐葉土を食べて生長します.クシヒゲガガンボ類の多くは朽木に穿孔して,これを食べます.」

体色には変異があるようで、脚の色まで赤っぽい個体も居るようだ。きっと美しいに違いないから会いたいと思う。

Catalogue of the Craneflies of the Worldによると、分布は「Russia: FE (Primorskiy kray); North Korea, South Korea, Japan (Honshu, Kyushu), China (east);; China (as far south as Guangdong).」 なお、FEは極東、Guangdongは広東省。
また、科はガガンボ科 Tipulidae、亜科は クシヒゲガガンボ亜科Ctenophorinae としている。

なお、『日本産水生昆虫―科・属・種への検索』ではPselliophora属及びクシヒゲガガンボ属Ctenophoraともにガガンボ亜科Tipulinaeとしていて、クシヒゲガガンボ亜科なんて載せていない。同書によると、触角の鞭小節を属検索のポイントとしており、4本の突起がほぼ同じ長さだとPselliophora属、先端近くの2本の突起が基部の2本より短いものをCtenophora属としている。

2009.8.25
ホリカワクシヒゲガガンボ

ホリカワクシヒゲガガンボ

ホリカワクシヒゲガガンボ

追記
松村松年が1916年に,長崎の堀川佐市氏から送られてきた標本をもとに記載した新日本千虫図解巻之二には,和名をホリカワクシヒゲガガンボ,学名をDictenidia Horikawae Mats.とし,「翅は暗色不透明,翅底の4分の1,中央にてやや横帯をなせる3紋列ならびに後縁の中央にある1紋は鼈甲様の黄色」などとある.当時の分布は九州長崎とし,「稀なるが如し」と結んでいる.

砂浜のルリエンマムシ

2009-08-24 | 甲虫
ルリエンマムシ
エンマムシ科 ドウガネエンマムシ属の ルリエンマムシ Saprinus (Saprinus) splendens (Paykull, 1811)

豊津海岸の松林の林縁で、瑠璃色も鮮やかなルリエンマムシを見つけた。砂の中へ頭から入り込もうとしていた。

体長雄 5.50-6.85, 雌 6.14-7.66, 幅雄 3.36-4.76, 雌 4.33-5.24.
鳥獣の死体や糞に飛来して,ハエの幼虫(ウジ)を捕まえて食べる。
尾節は全体に点刻されるが,縦中央に無点刻の帯がある.中央腹板に粗点刻はない

神奈川県のレッドデータブック2006では絶滅危惧Ⅱ類に選定されている。
「海岸や河川敷の魚介類に発生したウジなどを食べる」ルリエンマムシの存続を脅かす要因として、「腐敗物放棄の減少、環境変化」をあげている。
判定理由は「昔は沿岸部に多かったが、最近の記録は少なく、このままの状態が続けば減少の一途をたどるであろう」としている。

福島県では「海浜の腐敗物の下などから見いだされる」ルリエンマムシを準絶滅危惧に選定して、「砂浜環境を保護するため、砂浜へ車両を乗り入れないことが望ましい。」と保護の必要性を訴えている。

2009.8.21
ルリエンマムシ

ルリエンマムシ
砂の中へ潜り込もうとするルリエンマムシ

庭のエゾギクトリバ

2009-08-22 | 
エゾギクトリバ
トリバガ科のエゾギクトリバ Platyptilia farfarella (Zeller, 1867)

午前10時頃、庭のマリーゴールドに止まるエゾギクトリバを見つけた。夕方の6時頃に覘きに行ったら、同じ所に同じ姿勢で居た。

成虫出現月は7~10月。
幼虫はキク科のヒメムカシヨモギなどの花、蕾、茎を食べる。また、キンセンカ、キク、ダリア、アスター、マリーゴールドなどのキク科園芸植物にも被害を与える。幼虫で越冬する。
2009.8.21

ヤマトマダラバッタ終齢幼虫

2009-08-21 | バッタ類
ヤマトマダラバッタ終齢幼虫
ヤマトマダラバッタ終齢幼虫 Epacromius japonicus (Shiraki,1910)

芦原海岸。
すでにヤマトマダラバッタの成虫は飛んでいるが、幼虫たちも元気である。
今日は終齢幼虫と思われる幼虫と出会った。体長は成虫と変わらないほどであった。
砂浜で暮らす彼らの体色は、隠蔽色となっており、同じ砂浜でも植物の枯れた葉が目立つ所とそうでない所では違っている。砂の色が違ってくると体色も違ってくる。
岐阜県の子供らを砂浜に案内したとき、「あっ、バッタがいる」と子供たちが追いかけた。「岐阜県に居るバッタとは違うだろう。海岸の砂浜にしか住めないバッタやぞ」


学研生物図鑑昆虫Ⅲによると、ヤマトマダラバッタは「からだは黄褐色で、暗褐色の細かい点を散布する。マダラバッタと同様に海岸の砂地にすみ、昼に活発にとびまわる。マダラバッタとはおたがいに場所を分けてすみ、同じ地域に混ざり合うことはめったにない。」

昭和34年初版の『日本幼虫図鑑』(北隆館)によると、ヤマトマダラバッタは「中形、体長終令18~22㎜。カワラバッタやイボバッタの幼虫に類似する。全体淡褐乃至褐色の地に黒色の不規則な小黒点を粗布し、海浜において見事な保護色をなす。腹部には特に目立つ斑紋はない。孵化は6月、羽化は8月。本州各地の海岸に普通。」

ヤマトマダラバッタの幼虫たち

砂浜にヤマトマダラバッタ

ヤマトマダラバッタ終齢幼虫

ヤマトマダラバッタ終齢幼虫

アイアシ群落内のマエジロツトガ

2009-08-20 | 
マエジロツトガ
2009.8.8 ツトガ科のマエジロツトガ Pseudocatharylla infixella (Walker, 1863)

田中川干潟で今年も出会ったマエジロツトガ。
徳島の吉野川河口でも見つかっているようで、「ヨシに依存している種」ではと言われているが、私はいつもアイアシ群落内で見ている。
彼らの幼虫たちにも会ってみたいものだ。

マエジロツトガ
2009.8.20 アイアシ群落にて マエジロツトガ

マエジロツトガ発見

干潟の蛾

テングスケバ

2009-08-18 | 三重の生き物
テングスケバ
テングスケバ科のテングスケバ Dictyophara patruelis

松阪市の松名瀬干潟を訪ねた。
広大な干潟の中に、砂浜に生えるハマゴウと干潟に生えるハマボウが混生している場所がある。この干潟にこんなにもハマゴウが生えていたのか、またハマボウもあちこちに生えていて、あらためてこの干潟の大きさと生物相の豊かさに驚いた。

ハマゴウの葉影に姿を潜めていたテングスケバを見つけた。意外に大きいと感じた。体長が大きめの個体である。撮影中、全く動こうとはしなかった。

新訂原色昆虫大図鑑Ⅲによると、テングスケバは「体長10~12㎜。同翅端まで12~14㎜。全体ほぼ淡緑色であるが、死後黄変する個体が多い。顔の両側および中央には明らかな縦走隆起線があり、緑色であるが、各隆起線の間を走る顕著な橙色の2縦条がある。後脛節の外側に約5個の小棘を装う。イネ科の雑草間に普通で、時に稲や甘蔗などに加害する。」

2009.8.17
テングスケバ

松名瀬干潟
松名瀬干潟の南部

ジャコウアゲハ

2009-08-15 | チョウ
ジャコウアゲハ
アゲハチョウ科のジャコウアゲハ Atrophaneura alcinous

田中川河口近くにある畑の一角にウマノスズクサが生えている草地がある。
毎年、この一角ではジャコウアゲハの成虫が飛び交い、幼虫は堤防道路を越えて、金網フェンス上で蛹になっている。

ジャコウアゲハの和名は雄成虫が翅から麝香のような匂いをさせることに由来する。
草地の除草は草刈機で行われ、その度にウマノスズクサは刈られてしまうが、宿根草なので、すぐに伸び出てくる。地主には「ジャコウアゲハの幼虫が食べる草がここには生えている」と伝えてあるが、「刈っても、すぐに生えてくる」と意に介さない。
ウマノスズクサは臭い匂いがする。アルカロイド系の有毒を持つ。ジャコウアゲハは一生、この毒を体内に蓄積している。

この日は成虫、さなぎ、幼虫ともに見られた。
2009.8.8

ジャコウアゲハさなぎ
ジャコウアゲハの蛹 別名「お菊虫」 金網フェンスにて
「番町皿屋敷」のお菊が後ろ手にされ、背中から吊るされている様子を連想させる。

ジャコウアゲハさなぎ
ジャコウアゲハの蛹 ブロック塀にて

ジャコウアゲハ幼虫
ジャコウアゲハ幼虫

ジャコウアゲハ幼虫
ウマノスズクサの茎を移動するジャコウアゲハ幼虫。葉だけでなく茎も食べる。

ジャコウアゲハ幼虫
ジャコウアゲハ幼虫がブロック塀をうろついていた。蛹になる場所を探しているのかも。

ウマノスズクサ
ウマノスズクサ科のウマノスズクサ
根、果実、葉に含まれるアリストロキア酸を大量に摂取すると腎障害を引き起こす。日当たりの良い河川敷などの草地に生える。宿根の蔓植物。

海岸のアカホシカスミカメ

2009-08-14 | カメムシ
アカホシカスミカメ
カスミカメムシ科のアカホシカスミカメ Creontiades coloripes Hsiao, 1963

鈴鹿市の鼓ヶ浦海岸。
砂浜のコマツヨイグサの葉上にいる小さなカメムシを見つけた。体長は7㎜弱。
カスミカメムシ科だとは思ったが、図鑑を調べても種名が判らなかった。

カメムシBBSの画像掲示板で、風林火山と名乗る人から「おそらくアカホシカスミカメ Creontiades coloripes Hsiao, 1963 でしょう。
後脚たい節の濃色部や長い触角が特徴でしょうか。海岸部でもよく見られます。」と教えてもらった。

日本原色カメムシ図鑑によると、アカホシカスミカメは「触角第1節が頭部の幅より長」く、「半翅鞘の中央部に通常鮮やかな真紅のストライプがあ」り、「ヤハズソウやハギなどのマメ科植物を好む傾向がある」

体色には個体変異があるようである。
2009.7.26

尾鷲のアカホシカスミカメ

アカホシカスミカメ

砂浜のヨツモンキヌバコガ

2009-08-13 | 
ヨツモンキヌバコガ
キヌバコガ科のヨツモンキヌバコガ Scythris sinensis (Felder & Rogenhofer, 1875)

津市の白塚海岸。
ヤブガラシの葉に止まるヨツモンキヌバコガを見つけた。この蛾は葉裏へ隠れようとはしなかった。あまり人を怖がらないようである。

成虫出現月は5~8月。越冬世代の個体は前翅が真っ黒だが、8月に現れる成虫には四紋がある。開張は12-15㎜。海岸ではハマアカザによく見られる。
幼虫はアカザ科のアカザ、シロザ、ハマアカザを食べる。蛹で越冬する。
2009.8.12

ヨツモンキヌバコガ

追記
大図鑑によると、「頭胸部は艶のある黒色.前翅に顕著な季節型を生じる.近畿地方では年3回の発生,6月初めに出現する第1回目の成虫(春型)は前翅は艶のある黒一色,第2回のは7月に,3回目のは8月後半から9月初めに出現する夏型で,襞上基部前と翅頂に顕著なオレンジ紋をもつ.夏型にはごくまれに前翅上の2紋が痕跡的に存在する型が現れる.北海道,本州,四国,九州,シベリア,中国に分布する.」(一部省略)
また、同図鑑によれば、キヌバコガ科は世界中に分布しているものの、日本にはヨツモンキヌバコガ以外は知られていないようである。

日本昆虫図鑑1950によると、「12-13㎜.頭は滑らか,紫の弱い光沢があり,下脣鬚は黒色で長くない.末節は短く細くて尖る。触角は太く雄のは下側鋸歯状,基節は特に太くなく,紫光沢ある黒色.後脛節は平凡に長毛があり黒褐.腹部は下面及び側面が黄色,背面は黒色だが基部以外の各節端黄色.前翅は黒色,方向により青又は紫の弱い光沢があり,基部近くと翅頂とに各1黄色紋がある.縁毛は黒褐色。後翅は暗褐.6月末-8月東京近傍と近畿とに普通,中華にも分布.幼虫はアカザの葉上に糸を張る.」

クロキオビジョウカイモドキ雌雄

2009-08-12 | 甲虫
クロキオビジョウカイモドキ♀
ジョウカイモドキ科のクロキオビジョウカイモドキ Intybia niponicus (Lewis)

芦原海岸。砂浜に座り込んでクロキオビジョウカイモドキとルリキオビジョウカイモドキを探したが、ルリキオビジョウカイモドキは見つからなかった。いつになったら会えることやら。クロキオビジョウカイモドキは雌雄とも出会えたので、ここに紹介する。

クロキオビジョウカイモドキの三重県内の記録は『鈴鹿市の自然』によると、吉崎海岸、鼓ヶ浦海岸、松名瀬海岸の3ヶ所となっている。
私が歩き回った県内の砂浜海岸には、海浜植物が生えているような砂浜なら、どこだって見つかる。標本を採って、どこかの機関紙などに発表しないと記録として認められないようであるが、一応記しておく。高松海岸、芦原海岸、豊津海岸、白塚海岸、町屋海岸、二見町神前海岸、和具広の浜、和具大島。

クロキオビジョウカイモドキの雌は後翅を欠くことが知られているらしいが、私は未だ確認していない。
幼虫は一年中見られるらしいが、私は未だ見たことがない。海浜植物の周りは何度も何度も砂をほじくり返して調べているのだけども。
各腿節は末端を除き暗色であるが、他は褐色。

原色日本甲虫図鑑(Ⅲ)によると、クロキオビジョウカイモドキ Intybia niponicus (Lewis) は「3.1-3.8㎜。♂触角の第2節は横にひろがり、中央より内側が深くくぼみ、基部内方が上反する。前胸背板は側方が密にしわ状に点刻される。少ない。北海道、本州、四国、九州。」

学研生物図鑑昆虫Ⅱによると、クロキオビジョウカイモドキ Laius niponicus Lewis は「背面は黒色で光沢がある。上翅に黄色の横帯紋がある。横帯紋は中央と両側で広がる。雄の触角は第3節が異常に太い。成虫は5月ごろから海浜の花や葉上に見られる。幼虫はほかの昆虫を捕食生育する。体長:3.5㎜内外。」とある。また、同図鑑の図版には「雄の第3節はやや耳状。横帯は中央で広がる。」との説明が付されている。

神奈川県レッドデータブックでは、「海岸や河川の荒廃」が種の存続を脅かす要因だとし、「海岸や河川の環境が悪化しているので、心もとない」として、絶滅危惧Ⅱ類に選定している。

2009.8.6

クロキオビジョウカイモドキ

クロキオビジョウカイモドキ♀
クロキオビジョウカイモドキ♀

クロキオビジョウカイモドキ♂
クロキオビジョウカイモドキ♂

クロキオビジョウカイモドキ♂
クロキオビジョウカイモドキ♂

シンジュサンとアゲハモドキ

2009-08-11 | 
シンジュサン
ヤママユガ科 ヤママユガ亜科のシンジュサン本州以西対馬以外亜種 Samia cynthia pryeri (Butler, 1878)

小岐須渓谷での灯火採集。
蛾の中で最も数が多かったのはアゲハモドキ。最も大きかったのはシンジュサン。両種とも初の出会いであった。

シンジュサンの開張は110-140㎜。成虫の出現月は 5~9月。灯火にも飛来する。各翅には1つずつ三日月形の紋がある。また、各翅の中央部には波型の紋があり、止まったときは連続して見え、そこには淡い紫色の鱗粉があって、思わず見入ってしまった。
シンジュサンは手を差し伸べると、平気で手に乗り移ってくる。この日の参加者の何人かが手に乗せて楽しんでいた。

アゲハモドキ
アゲハモドキガ科のアゲハモドキ本土亜種 Epicopeia hainesii hainesii Holland, 1889

前翅長30-37mm、開張55-60㎜。体の中に食草の毒をたくわえ捕食者に襲われにくいジャコウアゲハに擬態していると考えられている。成虫の出現月は 6~8月頃。
日中にも飛ぶ昼行性とされるが、夜間灯火にも飛来する。

この日の昼間、海岸近くの畑でジャコウアゲハに会ってきたばかりであったので、山地での灯火に現れたこの蛾を見て驚いた。そっくりではあるが、サイズが一回り小さかった。
2009.8.8

キスジハネビロウンカが灯火に

2009-08-09 | 三重の生き物
キスジハネビロウンカ
ハネナガウンカ科のキスジハネビロウンカ Rhotana satsumana Matsumura,1914

鈴鹿市の小岐須渓谷で灯火採集を行った。この日、甲虫類は少なかったが、20時近い頃、黄色くて小さな虫を見つけた。

新訂原色昆虫大図鑑Ⅲによると、キスジハネビロウンカは「体長3~3.5mm。同翅端まで7mm内外。本種は前翅に外縁に平行した顕著な暗黄色帯を有する。本州・四国・九州および中国に分布し、山地で獲られるが個体数は多くない。」

ハネナガウンカ科の中では、前翅はそれ程長くない。灯火に集まる習性がある。
島根県のレッドデータブックでは、「山地の広葉樹林で得られるが、生息地が局限され、個体数も少ない。」として情報不足DDに選定されている。また、「詳しい生態は未知であるが、カンランを吸汁している観察記録がある。」と解説している。

財団法人九州環境管理協会の「ウンカ・ヨコバイ電子図鑑」によれば、「Rhotana属の前翅はかなり大きく,長さは幅の2.5倍以下。後翅は前翅の1/2以上の長さがある。本種は前翅外縁に平行した顕著な暗黄色帯があり,後翅中央近くに眼状紋をあらわす。」
2009.8.8

キスジハネビロウンカ

コクロホソアリモドキ

2009-08-07 | 甲虫
コクロホソアリモドキ
アリモドキ科のコクロホソアリモドキ Anthicus pilosus Marseul

芦原海岸のアカウミガメ産卵巣の近くで、海浜植物の周りで暮らしている甲虫を探した。クロキオビジョウカイモドキはあちこちで姿を見つけた。それとたいして大きさは変わらない黒い甲虫を1頭だけ見つけた。体長は2.5ミリほど。動きはクロキオビジョウカイモドキよりも早い。

原色日本甲虫図鑑(Ⅲ)によると、コクロホソアリモドキは「2.2-2.8㎜。前胸背板は密に点刻され、後方に向かってあまり狭まらず、幅よりもわずかに長い。中胸腹板後側端はとがり、側縁は直線状。川原など裸地にふつう。本州、四国。」

同属のクロホソアリモドキは明らかに大きいと聞いている。
2009.8.6

コクロホソアリモドキ