田中川の生き物調査隊

平成12年3月発足。伊勢湾に注ぐ田中川流域の自然と生き物を調べ、知らせる活動をしています。三重県内の生き物も紹介します。

12月のオオクロヤブカ

2013-12-13 | ハエ目(双翅目)

カ科ナミカ族クロヤブカ属のオオクロヤブカArmigeres subalbatus (Coquillett)  

12月4日,庭のヤツデの花に訪花するオオクロヤブカを見つけた.大型のカで,こんな時期に屋外に現れる種がいるんだとビックリ.

『新版日本の有害節足動物』によると,「体長約7.5mm,翅長3.2~5.4mm,大型の蚊である.頭頂は黒色の鱗毛でおおわれ,その周囲は白色の鱗毛で縁取られる.口吻の先端部は,わずかに下方に湾曲している.腹部背面は黒色,各腹節の側面と腹板に白色の林家がある.体節の腹面は白色,脛節と跗節は黒色である.国内では,東北地方(盛岡辺り)から南西諸島までと,東洋区の全域に広く分布している.」

『新訂原色昆虫大図鑑Ⅲ』によると,クロヤブカ属はオオクロヤブカ1種だけで,口吻が真直ぐなヤブカ属は43種.

『原色日本昆虫図鑑(下)』によると,「腹部背面は黒色,側面には銀白色の三角形紋が並び,腹面各節基部には幅広い白色の横帯がある.幼虫は汚水中に生育する.♀成虫は昼夜とも吸血する.」

花の蜜を吸うこのオオクロヤブカはきっと♂なのだろう.
日本最大の蚊トワダオオカは,♀も吸血せず♂と同様に花蜜を吸うという.三重県でトワダオオカを見つけた人は是非つかまえて,私に連絡してください.会いたいのです.


ケジロキアブ♀

2013-12-11 | ハエ目(双翅目)

キアブ科のケジロキアブ Xylophagus albipilosus Miyatake

2013.4.11 亀山森林公園でケジロキアブ♀を見つけた.

『新訂原色昆虫大図鑑Ⅲ』によると,ケジロキアブは体長♂7㎜,♀11mm.ホシキアブに似るが,触角第1節は短く,幅の2.5倍,第3節は第1節の約2.6倍.翅端は多少とも暗褐.♀の翅の端縁は暗褐色に縁取られる.♂ではホシキアブとともに翅の斑紋は不明瞭.腹部の毛は灰白色.低山地で5月に出現.

京都府のレッドデータブックでは要注目種にランクされ,「自然度の高い森林に生息する種である.身体は細長く,黒色で光沢があり,、翅に比較的顕著な斑紋がある.この仲間の成虫は朽木に集まり、幼虫は朽木の中にいて、他の昆虫を捕食する。近縁のホシキアブに似るが,触角第1節がより短く,中胸側背板に微粉を有することで区別できる.」という.

三重県では情報不足(DD)とされている.

「兵庫県の注目すべき双翅目」によると,既知の産地は北海道・茨城・栃木・埼玉・長野・三重・京都・兵庫・徳島・愛媛・福岡.

大阪市立自然史博物館所蔵双翅目目録(1)を見ると,青森,新潟,奈良,鳥取,熊本,ロシアからも採集されている.なお,同目録によると最も遅い採集日は7月13日で,4月採集のものは無かった.採集者の中に,T.SaigusaやA.Nagatomiの名前を見つけた.この目録ができたことで,新たな産地も判明した.研究者たちによる調査研究の蓄積のおかげだとつくづく思う.




トウヨウカトリバエ

2013-12-10 | ハエ目(双翅目)

イエバエ科カトリバエ属のトウヨウカトリバエ Lispe orientalis Wiedemann

2013.5.17 櫛田川中流の河川敷,湿った砂地の上でトウヨウカトリバエを見つけた.和名は東洋区に広く分布する蚊取りハエの意味なんだろう.

『新訂原色昆虫大図鑑Ⅲ』によると,トウヨウカトリバエは,体長7~8mm.灰白色に黒紋を具え,体は細長い.M1+2脈は直線状である.端刺は羽毛状で,触鬚(しょくしゅ=palpi,palpus)はシャモジ状を呈し,口吻は太く筒状である.日本全土に普通で,池,沼,小川など水辺に多い.

『日本のイエバエ科』によると,雄の体長6.0-6.5mm,雌の体長約7.0mm.日本では本州,四国,九州,琉球諸島に分布し,中国や韓国にも分布する.すべての脛節は黒色で,後腿節の前・後腹部に長剛毛列がある.前額は雌雄ともに広い.触鬚は褐色で非常に大きい.胸部は,盾板・小盾板とも黒色で灰白色の粉で覆われ、三本の暗い縦条がある.生活史はあまり判っていないようだ.

『新版日本の有害節足動物』によると,体長7.0~8.0㎜.体は黒褐色,腹背の第3~5節に八字型の暗色斑がある.パルプがスプーン型で,黄褐色である.水辺に生息し,羽化してきたユスリカや蚊を捕食する.

イエバエ科の同定には,誰もが難儀しているようで,いろんな種がなかなか記録や紹介がされません.『日本のイエバエ科』に頼って,同定を試みても迷子になってしまうことが多いようです.
おそらく近いうちにもっと判りやすい検索表がある人によって発表されるでしょう.絵解きで検索できるようになることを期待しましょう.