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放射性核種ごとの対人影響

2016-12-20 14:14:06 | 健康
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 米ワシントン州ハンフォード再処理工場は、近くのコロンビア川に亜鉛65を含む放射性廃棄物を放流していた。400km下流のウィラパ湾で取れる養殖場のカキを常食していた労働者に、大変高い濃度の亜鉛65が検出された。海水中の濃度は低いレベルだったが、牡蠣はこの放射性核種を10万~100万倍にも濃縮した。牡蠣は1日約300リットルもの海水を濾過する。他の生物よりも圧倒的に海水濾過量が多い。つまり、牡蠣は海の汚染を取り込んでしまう。
 イカの肝臓は、海水中の放射性銀(Ag-110m)(半減期250日)を数百万倍も濃縮する。軟体動物はヘモシアニン(人間ならヘモグロビン)が銀を集め、海水の6万倍に達する。人はヘモシアニンを持たないので、放射性銀がどこかの臓器に特異的に集積することはない。放射性銀の経口摂取でもっとも線量を受ける臓器は、大腸下部壁である。魚はセシウムの値が1000bq/kgを超えていても放射性銀がNDである場合があるが、逆にイカはセシウムがNDでも2桁の放射性銀が検出される事がある。Ag-110mは、Ag-109が中性子を捕獲することで作られる放射性核種である。βマイナス崩壊により、β線とγ線を出して崩壊し、カドミウムCd110(安定同位体)になる。
 セシウムCsは体内に入っても後続摂取を断てば二年程度で排出される。ただし排出速度は遅く、膀胱中1リットル6bqの放射性物質が15年慢性の刺激を与え続けると腎癌や膀胱癌になる。
 放射性ストロンチウムSrは二価結合でカルシウムと同じ性質を持ち、生物はカルシウムと見分けることができず必須元素として摂取する。水溶性であり、とりわけ水棲生物に生物濃縮を起こしやすい。Srが体内に入ると容易に骨沈着し、骨の成分となって死ぬまで代謝されない。Cs134の生物学的半減期は90日だが、Srは実に50年である。糖尿病と白血病を引き起こす。概算でストロンチウムはセシウムの300倍の毒性を持つと言われる所以である。
 Sr90が核崩壊してイットリウム90ができる。イットリウムは膵臓に濃縮される。β線被曝で膵臓の機能が低下して、インスリン分泌が低下して糖尿病が増加する。
 2011年7月に鶏の餌には法律で魚粉を混ぜる事が義務づけられた。魚粉とは魚の骨などでストロンチウムが入っている可能性がある。鶏卵や鶏の骨のSr汚染に留意すべきである。
 原子力発電所が稼働すれば、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドンなどの放射性希ガスが放出されるが、化学的にフィルタすることはできない。トリチウムも水素の同位体なので取り除けない。キセノンやクリプトンなどの放射性ガスのエネルギーが、大気の酸素と窒素を反応させて、酸化窒素をつくる。原発の温排水は酸化窒素だけでなく、酸素原子が三つくっついたオゾンも作り、藻の激増(赤潮発生)に繋がっている。
 水素が宇宙線の影響でトリチウムになることがあり、トリチウムは人体の特定部位では濃縮されない。
 ウランは微量ながら海中に存在してきたが、生殖腺に溜まることが分かっており、劣化ウラン弾被曝により子供に影響が出ている。
 プルトニウム(Pu)239の半減期は2万4千年,ウラン(U)235は7億4百万年で、PuはUの約3万倍の被曝影響を与える。Puはヨウ素やセシウムに比べて経口摂取で11倍~13倍程度、吸入摂取では6000倍~16000倍、人体に与える被曝影響が強い。原子炉級プルトニウム239の年摂取限度(酸化物のとき,各種同位体含む)は吸入摂取で一億分の2.8g=16000bq、経口摂取で一万分の1.4g=8100万bqである。福島第一原発3号機原子炉及び燃料プールには32帯ずつ9%のPuが含まれるMOX核燃料が使われていた。
 仮に放射線の影響を無視できるレベルになるのが半減期10回とすれば、Puに関しては24万年を必要とする。使用済み核燃料の10万年保管は人類が便宜上設定した一つの節目に過ぎない。
 2012年5月国土交通省は、東日本大震災の被災地で発生したがれきなどの災害廃棄物の処理を推進する一環として、総合評価方式による直轄工事の入札で、災害廃棄物の焼却灰を原材料に加えたセメント(再生セメント)を使用する建設会社を加点評価することを決めた。ホームセンターの市販品セメントを計測したという証言によると、Cs33Bq/kgと言う数値であり、他に鉛、ヨウ素、ビスマス等が検出されたとの事だ。


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