猫 周公のコラム

スケッチとエッセイ

画家 杉本健吉さんの生き様 絵は心の美だ

2008年01月25日 | Weblog
愛知県知多郡の美浜町に杉本美術館があります。
この美術館は4年前の04年に99歳で亡くなった、画家・杉本健吉さんの美術館です。
無欲で天真爛漫に生きた杉本さんのお人柄そして作品が好きで、時々会いに行くのです。

杉本健吉さんの作品を見たり話された内容を聴くと、誰もが「健ちゃん」と呼びたくなると思います。
画文集「余生らくがき」のなかに、美術を志す高校生との対話があります。

「・・・みんなも絵を描くなら、驚かなきゃだめだ。感激することだよ。感激しないんだったら絵なんか描かない方がいい。
常識や概念から逃れなくちゃダメだ。それは何だ?どうして?とか、クエッションマークがない。みんな常識でばっかり絵を描いている。それなら写真が一番いい。絵はそうじゃないんだよ。そんな絵もあるけど、再現でなく表現だから。」

「僕の先生の岸田劉生が、概念が邪魔するっていうことをいっている。概念ほどつまらないものはないって。心の美だ。心の中で掴まなければ、本当の絵は描けない。常識で絵を描いてはダメだ。・・・楽しんで描けばいい。」

このとき杉本さんは96歳でした。
杉本さんの生き様は、全て作品を観ることによって納得します。
こんな生き方をしたいものです。

杉本美術館を訪れたら、必ずや「健ちゃん」の魅力に引き込まれることでしょう。
杉本さんは生前「この美術館は自分のお墓だ」とおっしゃっていました。
そして「いつでもここにいるから会いにきて欲しい」とも言っておられました。
つくづく思うのは、お元気なときにお会いしておきたかったことです。

この絵は美術館の茶室からみた風景です。