雨をかわす踊り

雨をかわして踊るなんて無理。でも言葉でなら描けます。矛盾や衝突を解消するイメージ・・・そんな「発見」がテーマです。

真珠湾に思う

2006-12-10 11:51:31 | 歴史

Washingtonpost によると、アメリカ現地時間12月7日、66年前のその日に起きた真珠湾攻撃の犠牲者を弔う式典が行われ、その仲間たち550名が奇襲のあった午前7時55分に、黙祷を捧げた。


同Washingtonpostに記載

日本が、Wheeler Field から Kaneohe Naval Air Stationのアメリカ軍事基地を制圧したときには、.アメリカ側の犠牲は、トータルで、死者 2,390 名、負傷者 1,178 名。戦艦12隻が沈没、大型船9隻が損傷。320 以上の戦闘機が破壊もしくは損傷。

最も被害のあった戦艦 Arizona の死者数は、1,177名で全体の80%を占める。

なんやかんやいってこれは奇襲で、ひどいものだったわけだが、セレモニーに参加した元軍人たちが、命を賭けた戦いを経験したものが持つある種の達観と高潔さで、日本の奇襲非難はおろか「戦争反対」とも「忘れない」ともいわない(少なくともそこに掲載されている談話では)。そのため、それが逆に我々にも「考える」ことを、つまり超然とした視点を持つことを促す。


戦艦Oklahomaに投下、Wikipedia日本語版より

教科書問題」にも書いたが、 History はあくまで人間が現在における判断の材料を求める学問なんだという考えは変わらない。彼ら軍人がこの儀式に参列して黙っていることで、彼らは過去の一部となって我々の目の前に現れ、過去を紐解かせようとする。つまり「どのような判断を」ではなく、「どのように判断を」下してきたのかに焦点を向けさせる。

そうすると問題になるのがイデオロギーである。ポストモダン以降、Epistemology(認識論)は僕にとって大きな関心の的であるが、その際、時代と地域の限定によるイデオロギーの束縛は避けて通れない。

そのうえで現在を考えてみると、「師走の読書」でも触れたが、バーコビッチがいうように、世界に蔓延するイデオロギーの範囲内から左も右も出られない以上、「現システムの理想を再確認する仕方」でしかどちらも反対することにしかならない。本来の「革新」なり「リベラル」は、少なくともその大きなイデオロギーに反対すべきなのに、である。

ジジェクも述べているように、その大きなイデオロギーは資本主義である。その前では民主主義も共産主義も単なる方法にしかならない。そして冷戦期とは異なり、東側世界が西側世界と同じ土壌に出てきている現在は、共産主義の方がはるかに民主主義よりもはるかに資本主義に徹することが出来るから、我々は中国、ロシア、北朝鮮の扱いに困っている。

ハラウェイたちフェミニストが、結局90年代から第3世界といわれるひとびとが加入することで更なる資本主義の激化を予言し去ったわけだが、確かにその通りになって今日、問題はここ数十年提出されつづけた、「それに代用可能なイデオロギーなり理論があるかどうか」に尽きる。

僕はそれを文明に対抗する意味での「文化」に求められるのではとよく期待してしまう。候補として思いついているのは、仏教(しかし既成のものではなく、進化しなくてはだめだと思う)か、音楽理論(これは20世紀後半の生物学のようにパラダイムを提出できる可能性があるように思う)か、という気がしてる。なぜなら文明を進化させるのが文化だと考えるからである(「文化と文明」参照)。

ちなみに同記事には、日本非難の箇所はなく、日本の元軍人たちもこの真珠湾で散っていった命のために弔うニュースが載せられている。また日本側の真珠湾での犠牲者は、60名前後。

関連:「アメリカの歴史認識」、「アメリカの歴史認識2」、「分裂」、「ブッシュに拉致問題を」、「アメリカにとっての北朝鮮」、、「靖国2」、「拉致」。

追伸1:6ヵ国協議始まる(Washingtonpost)?

追伸2:ベネズエラのチャベス大統領再選はアメリカにとって好都合(Bostonglobe)?Bostonglobeらしい論説でこれを機にアメリカの南米対策が見直されるとしている。チャベス大統領は、ベネズエラの貧困率を1998年の44%から30%台にした実績が買われたとし、反米でも有名だが、経済的な連携がどうしても必要だからだという。もちろん石油の問題で、ベネズエラの石油の輸出の60%がアメリカで、アメリカにとっても11%と小さくないから、というのが根拠。

追伸3:NY Times によると、中国で、歴史学者監修による、これまでの世界のPowersから引き出される教訓なる番組を製作し放映された。同記事によると、中国はこれまで自らの力をどちらかというと控えめに喧伝してきたが、ここではアメリカに取って代わるとも思える自信を持って世界のシステム作りに関与しうる強国としての自負を示しているとのこと。中国政府関係者は、これがそのまま中国の考え方であるとはしていないようだが、中国国内でこのような番組が作られたことも異例といえそうである。同記事の最後には、中国とアメリカの差はかなり詰まってきている、とあった。



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