辞書引く日々

辞書が好きなのだ。辞書を引くのだ。

フランケンシュタイン曰く

2011年09月02日 | 言葉
小説「フランケンシュタイン」には、こんなくだりがある。

In other studies you go as far as others have gone before you,
and there is nothing more to know; but in a scientific pursuit
there is continual food for discovery and wonder.

(他の研究なら、先人たちが到達したところまで自分も到達したならば、
それ以上知るべきことはない。しかし、科学的な追究においては、
発見や驚きの糧が、ずっとあるのだ。)

これは、フランケンシュタインが、科学の楽しみについて語った一部である。
フランケンシュタインといっても、彼の作った怪物ではなく、彼自身のことだ。

科学について究め尽くすことができないということは、現在の我々の考えでも
成程と思うところである。興味深いのは、他の学問・研究については、先人の到達
したところまで行けば仕舞いという発言である。

他の study というのが何を指すのかというと、なにしろ 19世紀前半のことだ。
社会科学はまだ念頭にないだろうし、工学も科学とはっきりと区別されていたか
どうか疑わしい。

おそらく、この発言に最も激しく異議を申し立てるべき人は、いわゆる人文分野の
研究者だろう。やってないことは山のようにあるし、それは次々に生まれてくると。
そして、先人の研究の上に、成果を積み重ねてきているのだと。

たしかにその通りではある。だが、ぎゃくに、「先人の知りたるところまで到達」
というのが、個人の知識・能力のことであるとすると、それができているのか、
という疑問が湧いてくる。

逆に言うと、メアリ・シェリーの考えでは、「先人の到達レベルを維持する」
というのが、じゅうぶん study に値することだったのだと、この一文を読んで
考えた次第である。

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