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辞書引く日々

辞書が好きなのだ。辞書を引くのだ。

ヘラクレスのイメージ

2010年02月27日 | Weblog
ヘラクレスというと、ムキムキの青年で、どちらかというと男前というイメージだった。たとえばディズニーのヘラクレスが、いくらかそれに近い。

今日、「大ローマ展」なるものを見に行ったところ、紀元前後にヘラクレスを描いたフレスコ画をいくつか見ることができた。ところが、描かれている彼は、肉のたるんだ(きっとプロレスラーの如くその下に隆々たる筋肉があるのであろうが)にやけたオヤジなのである。

そのうち一枚は、女王(オンパレー?)の奴隷(かつ愛人)になっていたときのものであり、彼のトレードマークである棍棒はその女王のほうが持ち、彼は女の服を着ているのだ。

どうも、イメージと違う。そこで、手近にあった参考書(呉茂一「ギリシア神話」新潮社)を見てみることにした。同書(一巻本のやつ p.340)によると「彼はしばしば大失敗をやる、下卑た所業にふける。彼はアテーナイの喜劇が、喜んでいつも持ち出す人物の一人であった。食しんぼうで色好みで、助平な、自分の力を持てあます男」なのである。

つまり、どうも今日見たフレスコ画のほうが正しくて、私が今まで持っていたヘラクレスのイメージが間違っていたらしい。(ギリシャでも、やっぱり同様の事情なのではないかと想像する。)

この発見の感動?を伝えようと、ヘラクレスの画像を検索してみた。ところが、どれもこれも体脂肪率が10パーセントを切っているような絵ばかりで、あの緩んだ感じを伝える画像が見つからない。はあぁ、私がヘラクレスを勘違いしたのも、故無きことではなかったのだと気づいた。

たしかに今日見たローマのフレスコは、美術的には周辺的なのかもしれない。しかし、教えられるところは大きかったように思うのである。