Snowtree わたしの頭蓋骨の下 *鑑賞記録*

舞台は生もの、賞賛も不満もその日の出来次第、観客側のその日の気分次第。感想というものは単なる個人の私感でしかありません。

歌舞伎座『柿葺落十二月大歌舞伎 昼の部』 1等A席前方センター

2013年12月14日 | 歌舞伎
歌舞伎座『柿葺落十二月大歌舞伎 昼の部』 1等A席前方センター

討ち入りの日だったけど観たのは昼の部。改めて花形世代に力が付いてきたなと思った。そして四段目がかなり面白かった!

『仮名手本忠臣蔵』
「大序」「三段目」
染五郎、菊之助、海老蔵の三対並びがなんだかんだ見応えあり。皆、綺麗ですよね。染五郎さん、菊之助さんが共演が多くなってきたせいか息の合い方が前よりかなり自然になってきていました。共演していくうちにお互いの間がわかっていくというか、そういう息の合い方ってありますよね。

判官@菊之助さん、品よくおおらかに構えているのがいいですね。「大序」はあまり為所がないですが前回演舞場で演じた時よりかなり存在感が出ていました。「三段目」では気持ちをストレートに表現されていました。おっとりを構えたところから理不尽な物言いをされ我慢しつつも心がどんどんヒッートアップしどうにも我慢できなくなるものの理性で抑え、それでも爆発してしまう、その過程をクッキリと描こうとしていたと思います。とても良かった。

若狭之助@染五郎さん生一本で直情的、若干石頭な正義感的な若狭之助でした。とても大きく見えました。浅黄色の衣装が似合いますね。フルフルと怒りに燃えまくっていました。

高師直@海老蔵さん、老け役はどうかな?と思いましたがそれほど老けの拵えをしなかったのがかえって功をそうしたかもしれません。なにか不穏さを感じさせイヤミたらしい部分や好色な部分をきちんと出せていました。「三段目」はちょっと崩しすぎて位取りの部分が無くなってしまい人物像がかなり小さくなってしまったのが残念。判官@菊之助さんを追い詰めきれていなかったですね。

顔世@七之助さん、品がよく丁寧に演じていました。もう少しまろやかさがあるといいかなあ。

「四段目」
由良之助@幸四郎さん、さすがの存在の大きさ。花形とは格の違いを見せます。この人が来てくれたという安心感を醸し出す。相手が花形なので大きすぎてしまい家老の身分という部分より判官の父親のようにみえてしまうのはいかしかたないか。父性溢れる由良之助とみれば納得。残された諸士たちを支え切ろうという覚悟やじっくりと構えようという気概がある由良之助でした。門外では白鸚さんの由良さんにかなりそっくりでした。特に感情の出し方というかその部分での緩急が似ていました。白鸚さんよりは鋭利なのは幸四郎さんらしさ。ですね。にしても幸四郎さん、足痛めてますね…大丈夫かしら。あの幸四郎さんがまさか、という感じで…。もう、ほんとベテラン勢は満身創痍(涙)

判官@菊之助さん、凛とした佇まいがいいですねえ。品のよさがまず目につきます。梅幸さんがそうでした。芝居の持って行き方は今回はお父様のほうでした。覚悟の強さ、芯の強さなかに無念さを潜ませる。若いだけあって由良之助への託す部分ではお父様の菊五郎さんより激しさがありました。

顔世@七之助さん、楚々として美しかったです。抑えた芝居に情感もあり大序より四段目のほうが良かったです。

石堂@染五郎さん、位取りが必要なお役で心配しましたが、なかなかいい感じに仕上がってきていました。貫目はないけど位取りがきちんとあって「近こう、近こう」の台詞の間合いがすごくいい。イメージ的に勘三郎さんの台詞の間合いに近いんだけどそんなわけないよね…。どなたに稽古つけていただいたのかな?吉右衛門さんだよね?

「道行」
道行は玉三郎さんが華やかでしなやかで美しいです。何もしていない時の姿の美しさがまた格別。そして、良い意味で貫禄がもついた。相手が仁左衛門さんだったらな~と思ってしまった…。そして今日も思いましたが(最近はずっと願っているのですが)玉様は定高をやるべきですね。若い綺麗な役もいいけど、そろそろこちらも!!