Snowtree わたしの頭蓋骨の下 *鑑賞記録*

舞台は生もの、賞賛も不満もその日の出来次第、観客側のその日の気分次第。感想というものは単なる個人の私感でしかありません。

サントリーホール『イツァーク・パールマン ヴァイオリン・リサイタル』 C席 2F P席

2006年01月16日 | 音楽
サントリーホール『イツァーク・パールマン ヴァイオリン・リサイタル』C席 2F P席

パールマン氏は生ではかなり前に一度だけ聴きに行ったことがありますがCDで聴くよりかなり渋い静かな内省的な音出しだった記憶があります。今回久しぶりに拝聴してやはり音はちょっと地味で音量もそれほどあるタイプではありませんでしたがとても暖かい優しい音色でした。また記憶していた内省的な部分はなく、どちらかというとわかりやすく観客と共に音楽を楽しみましょうといった開放的なものを感じました。とても楽しそうに演奏されていてそれがこちらにも伝わってくる。また本当に丁寧に一音一音を聴かせるという感じで、その音がとても柔らかく綺麗。特に高中音がふわっと伸びた時の音が本当に心地良い音色でした。音に圧倒されるとか、感性の深さに触れるとか、超絶技巧に感動するとか、そういうコンサートではありませんでしたがとてもアットホームな暖かく心地良い空気のなか楽しい音楽を聴いたという感じでした。

バッハはちょっと音が硬くさらっとした感じで1曲目ということもありあまり乗ってないかなーという印象。フォーレからはかなり音が伸びてきて聴き応えがあり、フォス『3アメリカン・ピース』は曲調の面白さもありかなり好きな演奏でした。クライスラーは得意とするだけあって音の美しさが断然光ってきて、見事な演奏。またその繊細で美しい音色がとても暖かく、聴いていてこちらの気持ちが和み暖かい気持ちになっていきました。本当に素敵な演奏でした。

パールマン氏は小児麻痺のせいで足が不自由で上半身だけでヴァイオリンを演奏します。音量がそれほどないのはそのせいなのだろうなあと今回改めて思いましたが、それをカヴァーするだけのテクニックの見事さと心から音楽を愛し、それを伝えようとするその姿勢が彼を一流にさせているんだなと感じました。

ピアノ伴奏のロハン・デ・シルヴァ氏の演奏が伴奏者としてかなり良かったです。シルヴァ氏のピアノはとても柔らかく綺麗な音色。しかもバランスが絶妙なのです。前に出るときはしっかり出て、押さえるとこと押さえ、パールマン氏の音色に絶妙に絡んでいました。


J.S.バッハ『ヴァイオリン・ソナタ第4番 ハ短調 BWV1017』
フォーレ『ヴァイオリン・ソナタ第1番 イ長調 op.13』
フォス『3アメリカン・ピース』
クライスラー『クープランの様式によるルイ13世の歌とパヴァーヌ』
チャイコフスキー/クライスラー『ユーモレスク』
クライスラー『美しきロスマリン op.55-4』
チャイコフスキー/クライスラー『アンダンテ・カンタービレ』
クライスラー『愛の喜び』
アルベニス/クライスラー『タンゴ op.165-2』
ヴィエニャフスキ/クライスラー『カプリース イ短調』: