Snowtree わたしの頭蓋骨の下 *鑑賞記録*

舞台は生もの、賞賛も不満もその日の出来次第、観客側のその日の気分次第。感想というものは単なる個人の私感でしかありません。

歌舞伎座『三月大歌舞伎 昼の部』 3等B席下手寄り

2017年03月04日 | 歌舞伎
歌舞伎座『三月大歌舞伎 昼の部』 3等B席下手寄り

『明君行状記』
初めて観る演目。構図としては『御浜御殿』に近くいかにも青果ものという芝居。役者が適材適所で完成度も高かったと思う。でも好みか?と言われたら私には感覚的にあまり好みではない。光政と善左衛門の探りあいを楽しむものなんだろうけど林助が可哀想だわね…となる。

光政@梅玉さんは嵌りすぎくらい嵌っているし、それだけでなく光政という人物像に明快に迷い無く切り込んでいってる感があり圧巻であった。この役を説得力もって演じられるのは梅玉さんくらいかも。

対する善左衛門@亀三郎さんも声と口跡のよさで台詞をしっかり伝えてきたのと生真面目な風情が合ってて良かったです。

妻ぬい@高麗蔵さんが若々しい美しさと品のよさで目を惹き、大五郎@萬太郎くんも目配りのよさでキャラに合ってた。先月気になった化粧は今回は顔に合っててよかった。

歌舞伎座『渡海屋・大物浦』
仁仁左衛門さんの知盛を拝見するの久しぶり。とても純粋に自分を全うしようとする気迫のなかに悲壮感があるカッコイイ知盛でした。渡海屋の銀平からかなり鋭く、渡海屋の主人のしての鷹揚さよりは初手からどこか使命感を帯びた雰囲気。好みからするとここはもう少し隠してもいいんじゃないかな?と思いつつも、そこから一気呵成に知盛として突き進んでいく感じもあり。大物浦ではかなり派手な演じ方。ヘタすると格が減じてしまうと思うのだけど、今の仁左衛門さんが演じると悲壮感、無念さが際立ち、物語にうねりがでて良かったと思う。

典侍の局@時蔵さん、お柳は仁左衛門さんと同様に渡海屋から凛として夫婦というより同士の感じが大きい。お柳から典侍の局になってからの佇まいに哀があって、そのなかで安徳帝への情をみせていくので悲劇性が増す。ここ私的に好みでした。

義経@梅玉さんは鉄板で、弁慶@彌十郎さん、このところいい感じに一皮向けたような気が。役の存在感が出ていました安徳帝@右近ちゃんが、落ち着いていてほんと立派。

『どんつく』
幕が開いて板付きの巳之助くんが一瞬、三津五郎さんに見えてドキッとした。動き始めるといつものみっくんなんだけどね。松緑くんと亀寿くんに引っ張られながら、踊りきる。この踊りは回を重ねていってほしい。

代替わりなんだなあとしみじみ思いつつ後ろで鷹揚に見守る菊五郎さんの厳しくも優しいまなざしが印象に残る。どんつきはやっぱり皆での連舞が楽しいね。


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歌舞伎座『壽初春大歌舞伎 夜の部』3等A席上手寄り

2017年01月26日 | 歌舞伎
歌舞伎座『壽初春大歌舞伎 夜の部』3等A席上手寄り

今月の歌舞伎座は『沼津』と『井伊大老』がベストだな~。ベテラン組の濃厚さ濃密さは見事だわ。それぞれ配役も良かったし。正月ぽくなかったけどね(笑)『井伊大老』の幸四郎さんが歴史のなか、そこに生きた人物を立ち上げたのとは反対に『沼津』の吉右衛門さんはあくまでも物語のなかの、それでいて「いる」人物として立ち上げていたと思う。その両方が成り立つ歌舞伎ってやっぱ凄い。

『井伊大老』
役者それぞれの役々にその時代にどう生きているか、という生き様がみえくるような感じだった。だから、なお下屋敷の場が活きてきたかなと。

井伊直弼@幸四郎さんとお静の方@玉三郎さんのなんとも自然でそこに生きている、そんな佇まい。好きあっている同士のいたわり合いがとても素敵でした。人物像を生き生きと活写しており、この時代をふと垣間見ている、そんな気さえおこさせ、また二人の会話に二人が生きてきた生活がみえるかのようで、胸がじーんとしてしまいました。

禅師@歌六さんに飄々さが増していい味わい。

雲の井@吉弥さんが可愛かったな~。お静@玉三郎さんとともに感情豊かで普段からきゃぴきゃぴしてそう。

長野主膳@染五郎さん、初旬に見た時は役の方向性が見えづらかったのですが、今回は存在感がきちんと出ました。単に冷たい人物というより、主膳なりの理があり道があり、だからこそ心を殺して進んでいくのだという覚悟がみえてよかったです。

水無部六臣@愛之助さんの無念さの伝わる芝居がとても良かったです。愛之助さんは、久々に拝見したけど全体的にリアルな手触り感があるなと思いました。新歌舞伎系だとこうなるのかな。愛之助さんは今月は似たポジションばかりでしたがきちんと存在感がありました。最終的にこの役が一番印象深かった。

『越後獅子』
鷹之資くんが丁寧にお手本の通りに踊りきった今月でしたねえ。色が出てくるのはまだこれから。初旬に拝見したときより踊りが身体に入っていて動きにキレがでてきていました。客席の暖かい拍手を励みにこれからも頑張って欲しい。

『傾城』
これは玉三郎さんワールド。ただひたすら美しい玉さまを眺める感じに(笑) 打掛の裁き方がすごすぎる。一服の絵。花魁道中はサービスだと思うけど個人的好みとしては座敷からでもいいかな~。集中力がいちど切れちゃうの。

『松浦の太鼓』
松浦候@染五郎さん、まだ発展途上的なとこ含めて超ラブリーでした。台詞の緩急が効いてきてメリハリが出ててた。染五郎さんの松浦候は若いのに声のトーンを今の吉右衛門さんが出す高いトーンそのままで出しているので、かえって落ち着きのなさが出てしまっているのは若干難かな。まだまだ現役感たっぷりで気まぐれな様子がリアル。そのなかに品のいい鷹揚さがあるので役にいやみがないのは良いなと思う。玄関先では台詞廻しや風情に少し8勘三郎さん風味が。興味深々、目がキラキラ的
な前のめり感がそう感じさせたか。このお役に関しては少しづつ熟成させてほしい。10年後が楽しみです。

源吾@愛之助さん、討ち入り姿がよく似合い口跡がよく台詞がわかりやすい。初旬は討ち入りの語り部分の台詞廻しに苦労しているかな?だったけど、昨日はしっかり伝えきれていた。梅玉さんに稽古していただいたようだけど、松嶋屋の芝居だな~というほうが強かったかな。

お縫@壱太郎さん、前半は終始受けの芝居ですが可愛らしく真面目でおぼこな風情がよかったです。

其角@左團次さん、俳人としてどこか自由人でいる風情があるのは左團次さんならではな気がします。押しの強さにもいやみがなく松浦候への扱いの巧さを感じさせます。

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歌舞伎座『壽初春大歌舞伎 昼の部』3等A席センター

2017年01月14日 | 歌舞伎
歌舞伎座『壽初春大歌舞伎 昼の部』3等A席センター

『将軍江戸を去る』
役者さんは好きなようでよく上演されてるし、色んな役者で観てるけど、苦手演目のひとつ。寝たりはしないし、それなりに観てしまうけど、なかなか苦手意識が取れない…。今回、それぞれの役者が「らしさ」があって分かりやすい芝居にはなっていたとは思う。台詞は皆さんあまり謳いあげないで抑えめ。新歌舞伎系は好き嫌いの激しい私ですが、なぜこの演目が苦手な部類の入ってるのか自分でもよくわかっていなかったけど今まで慶喜に興味がなかったんだな、というのが今回の気づき。なぜわかったかというと慶喜という人物の知識が増えたから。知識が増えたことで今まで、慶喜の台詞の意味合いをきちんとわかっていなかったんだな~と痛感させられた。だから『将軍江戸を去る』という芝居の慶喜のキャラを受け止めきれてなかったんだなと。とはいえ、今回そこがわかっただけでまだ理解しきれてないのですけど。そこがわかっただけでも収穫は収穫。

慶喜@染五郎さん、運命に対する陰鬱な悲哀とどこか純粋さがある殿ぶりが良かった。台詞廻しは吉右衛門さん譲りか、最後の場の名残を惜しみつつ江戸を去る際の詠嘆は時代の区切りをしみじみを感じさせるものであったように思う。

山岡鉄太郎@愛之助さん、役としての立ち位置が巧く台詞も明快。青果節の抑揚はあまりなくストレート。

高橋伊勢守@又五郎さん、宥め役として非常に落ち着いた芝居で良かった。新歌舞伎の又五郎さんというと暑苦しいくらいの熱さというイメージだったので新鮮でした。

若い、諸士たちの歌昇さん、種之助さん、廣太郎さん、男寅さんが血気に逸る青臭さを体現していました。皆、台詞がしっかりしてきたな~と思ったり。

『大津絵道成寺』
ここでお正月らしい華やかな舞踊を。道成寺ものをご趣向で組み立てたような舞踊ですね。愛之助さんが五役を時に早変わりをしながら踊っておきます。大津絵とお題にあるように立役が中心の愛之助さんらしい輪郭の太く丁寧に踊っていきます。主になる藤娘姿がサマになるのは若い頃、女形が中心だったおかげでしょうか。華がありました。

犬@種之助さん、のびのびと弾むように踊り可愛らしかったです。踊り上手のお父様に似て素直ないい踊り。わんわん六方も勢いがありました。

弁慶@歌昇さん、三枚目がはいったお役ですが思った以上に似合い線の太さと滑稽味と、とても良かったです。

矢の根の五郎@染五郎さん、押し戻しで最後で出ますが荒事のこしらえが本当に似合うようになりました。大きさと格があり一際華やか。声も荒れてなかったですね。もう少し喉を広げて声を前に押し出せると良いんですが。


『沼津』
ベテランの存在感をまざまざと感じさせた演目。舞台の空気が濃密になりますね(『沼津』のみ1等センターで拝見)

十兵衛@吉右衛門さん、前半は正直声が弱いかなという部分があったのだけどその代わり、今の年齢だから出せるキュートさがあって突拍子のない我侭にもみえる言動なのにほっこりさせてしまう力がある。でも、なんといっても真骨頂はやはり平作お米が父、妹と知れた後。ふとした佇まいと台詞で空気を変えていく。それがごく自然にでもくっきりと輪郭をもって描写されている。この空気の変え方は吉右衛門さん独特のものだと思う。

平作@歌六さん、かなり突っ込んだ芝居しててすっかり持ち役にしておりました。人懐こさのなかに頑固な強い芯がある、鋼のような平作だと思いました。情のありようも甘くない。

お米@雀右衛門さん、以前は可愛らしさのほうが先に立ち健気な「娘」の風情でしたが、今月は艶が出て恋しい人のためには手段を選ばない芯の強さもありました。平作の娘だな、というのが伝わってきた。

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歌舞伎座『壽初春大歌舞伎 夜の部』3等A席センター

2017年01月07日 | 歌舞伎
歌舞伎座『壽初春大歌舞伎 夜の部』3等A席センター

今年の初観劇は歌舞伎座夜の部。楽しかった\(^_^)/

『井伊大老』
かなり見応えがありました。幸四郎さんと玉三郎さんが自然体の風情ある芝居で思った以上に二人のバランスがよくてしみじみした味わい。玉三郎さんの玉手御前と幸四郎さんの合邦で『摂州合邦辻』が観たくなった。

井伊直弼@幸四郎さん、時代の大きな流れのなか大老として真っ直ぐに立とうと心を砕いて生きてきた、その生き様が立ち上がってくるような大きさのある直弼であり、また一人の人としての優しさ、弱さをも感じさせる、魅力的な直弼でした。

お静の方@玉三郎さん、しっとりとした風情のなか繊細で感情豊かな可愛らしい女としてただひたすら自分が愛するものに一途なお静の方。彦根にいた時分からの時の流れも感じさせ直弼に寄り添うその姿がどこまでも自然。

禅師@歌六さん、飄々と人生達観して生きているような禅師。老け役がサマになってきましたねえ。

昌子@雀右衛門さん、いかにも「おひいさま」と言われるようなおっとりとした風情。純粋な子供のような素直さ。お付きの腰元たちが京屋の美人揃いだったのも眼福。

『越後獅子』
鷹之資くんの踊り、素直に基本をきっちり。化粧映えするいいお顔。1ヶ月しっかり踊りきったらとても良い糧になると思う。そういう踊りだった(^-^) しかし富十郎丈、もう七回忌なんですねえ…。

『傾城』
玉三郎さんの踊りは美しさにうっとりしているうちに終る感じ。それでいて情景がくっきり見える。衣装も凝っていた。玉さまの舞踊に関しては後継がいないですねえ。

『松浦の太鼓』
松浦候@染五郎さん、ころころ変わる表情は超可愛い。でもまだここでこう、という意識がある感じ。歌舞伎座だから緊張感があるのかなぁ。巡業時はもっと御機嫌に演じてたと思うんだけど。あの吉右衛門さん特有のハイトーンボイスもやはり今回もなぞってきてた。今は出せてるけど最後まで持つか。殿様としての大きさはしっかり出てた。単なるバカ殿にならず機嫌がころころ変わっても憎めない鷹楊さがあるのが良かった。そこここに真面目さが出てしまうのは若さかな~。

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歌舞伎座『八代目 中村芝翫襲名披露 吉例顔見世大歌舞伎 夜の部』3等A席前方下手寄り

2016年11月19日 | 歌舞伎
歌舞伎座『八代目 中村芝翫襲名披露 吉例顔見世大歌舞伎 夜の部』3等A席前方下手寄り

長かったけど最後まで楽しく拝見(^-^)

『御浜御殿綱豊卿』
綱豊卿@仁左衛門さん、すっかり自家薬籠のものにして、技巧をかなりこらした台詞廻しも佇まいも綱豊としてごく自然にそこにあるものとして在るよう。華があり品があり、上に立つものとして大きさのなかに情熱を秘めている綱豊卿です。筋が通ろうが通るまいが、その情熱ですべてをおおいつくす。仁左衛門さんの綱豊卿は大石内蔵助へのシンパシーを隠さない。むしろ自分と内蔵助を同化させ完全に呼応させている。リーダーとしてこうありたい、その想いが伝わる。仁左衛門さんは『元禄忠臣蔵』が大好きなんだろうなって感じる。『大石最後の一日』をぜひやっていただきたい。

助右衛門@染五郎さん、演じ方は前回、大阪松竹座で仁左さん綱豊卿相手に演じた時と基本変わらないけど、造形の輪郭が太くなったのと受けの芝居に以前より緩急がついたので綱豊卿とのやり取りでの仁左衛門さんの少しずつあがる熱量と絶妙の間合いで呼応している。丁々発止が場の密度をあげていた。

仁左衛門さんの綱豊卿は大石内蔵助と完全に呼応させている。だから助右衛門には仇討ち以外眼中にない直情と志士ゆえの切実感が欲しいのだと思う。助右衛門@染五郎さんには真面目さのなかに哀がある。たぶん、そこが染五郎さんをずっと相手に選ぶ一要因かなと思ったり。喉を痛めてなければなあ。高い声が出せてたらもっと仁左さんと台詞廻しを合わせているのが明解だったろうに。助右衛門のキャラを前半、軽めに演じてるのは前からで、それが本質的なキャラではないというのを少しずつ見せていく。

助右衛門て拗ね者を自称してるけど本質的にはそうではない。そこをハッキリ見せてきたのが染五郎さんで、その部分を仁左衛門さんは望んだのだと、やはり思う。仁左衛門さんの綱豊卿の内蔵助への思い入れは綱豊卿の孤高さと繋がる。仁左衛門さんにとっては元禄忠臣蔵はあくまでも内蔵助の物語なんだと思う。染五郎さんの助右衛門は小者にみせよう、殿様が相手をするような人物ではないと必死にアピールしている。助右衛門は助右衛門で綱豊卿が評判通りの放蕩な人物ではないのがわかっているからだ。自身が浅野の殿様の無念さを内に抱えた志士だと暴かれたらどう転ぶか。殿さまの真意を図りかねての物言い。それなのに綱豊卿は引いてくれない。宥めすかし、脅しつつ追い詰める。そこに助右衛門は乗ってしまうし、殿さまの本音、真意を引き出せないかと、真っ直ぐに気持ちを吐き出していくのだと思う。真っ直ぐでないと届かない。染五郎さんの助右衛門はそこの台詞に悲哀がある。そうでないといけないのだと思う。

お喜世@梅枝さん、楚々としてしっとりした風情のなかに芯の強さをみせた。ウキウキとした町娘感は少な目だけど心根が真っ直ぐな娘なんだろうと感じさせてくれました。台詞の緩急が上手いですね。

綱豊卿って一介の浪人の助右衛門のことをよく知っている。江戸詰めの200石のお側用人だったと。いままでは、助右衛門が来た事をを知って話をするためにわざわざ調べさせた?と思ってたんだけど、今回、なんとなくお喜世から「兄さま」のことを問わず語りに耳にしていたのかなと思った。今回の梅枝さんのお喜世からそういう感じを受けた。雀右衛門さんのお喜は綱豊卿一途でな、それこそおぼこさのあるウキウキとした純粋な女だったけど、梅枝さんは、密かに助右衛門を兄としての信頼以上の好意をもっていたのでは?ってちょっと思わせた。

助右衛門が綱豊卿を激昂させた時、綱豊卿の刀を汚さないためにではなく自分が出ることで兄を守ろうとしてるようにみえた。手引きすると決めた時、助右衛門とともに一緒に死ぬ覚悟であったろうし吉良を討つのに成功したにせよ失敗したにせよ自害した気がする。梅枝お喜世はその雰囲気が一番強い。今回の梅枝@お喜世と染五郎@助右衛門からみえた関係性は10月の一連托生な染・梅の夫婦像をみたせいかもしれないので妄想を広げすぎたかもだけど。

江島@時蔵さんがかっこよかったです。知的なお役が似合いますよねえ。鏡山の尾上がまた観たい。

浦尾@竹三郎さんだったのが嬉しい。最近、豪華な衣装の竹三郎さんを拝見してなかったから。いじわるなお役だけど、やっぱりカッコイイ。

お古宇@宗之助さん、楚々として素敵だった。美人さん。

新井勘解由@左團次さん、どこかおおらかで綱豊卿のよき相談相手といった風情。

『口上』
ずらりと並び壮観です。口上はなにをするわけではないのですが楽しいです。新、芝翫さんの人柄が垣間見ることができる和やかで楽しい口上でした。いい話⇒オチになる口上が多かったような(笑)やっぱり左團次さんがフリーダムだった(笑)そしてなんと梅玉さんも!

『盛綱陣屋』
盛綱@芝翫さんのが丁寧に押さえた芝居、後半いつもの熱演になったけど、それほど悪いほうには出ず、いずれそれが味になるかも。台詞廻しはお父様の巧さはないのだけど、まだまだこれから。情味のある優しい盛綱でした。後半、声が割れてた感じになってたのが残念。

小四郎@左近くん、もう一人の主役といっていい小四郎を可愛らしく健気。台詞も達者でとても良かったです。

微妙@秀太郎さん、この役はどうかな?と思いましたが位取りがしっかりあったのがさすが。終始、情にもろいのが秀太郎さんらしい。

篝火@時蔵さんは鉄板。敵の陣屋に忍びこむほどの芯の強さと母として子を心配する風情の塩梅のよさ。

早瀬@扇雀さん、凛として似合ってました。個人的にはもう少し情味があって欲しかったかな。

和田兵衛秀盛@幸四郎さん、さすがの姿のよさ。赤っ面は珍しいですがカッコイイですね。ただ声が出ておらず体調悪いのかな?と心配に。口上の時も少しお元気でなかったし…心配。

時政@彦三郎さんは押し出しよくて、姿に「らしさ」があって想像以上によかったです。

信楽太郎@染五郎さんは舞台が明るくなったような華やか。身体もよく動き戦語りがさすがに上手い。所作台がいい音を出してました。

藤太@鴈治郎さんはおちゃめだけど品を落とさず、ふんわりと。

『芝翫奴』
私が拝見したのは歌之助くん。丁寧にきっちりと。頑張ってました~。演奏が豪華でしたね。

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国立大劇場『11月歌舞伎公演『仮名手本忠臣蔵 第二部』』 特別席前方センター

2016年11月12日 | 歌舞伎
国立大劇場『11月歌舞伎公演『仮名手本忠臣蔵 第二部』』 特別席前方センター

今月の国立『仮名手本忠臣蔵』もアンサンブルがよかった。今月は先月のような混成チームではなく手慣れた座組みではあったけど、それでもアンサンブルの良さはより芝居が立つなあとしみじみ思った。

「道行旅路の花聟」
この段は従来の戯曲にはない段で、義太夫ではなく清元の歌舞伎舞踊。今回、先月「裏門」をつけたのになぜわざわざここを上演するのだろう?と思いましたが今月、ここをつけると「お軽の物語」としても物語がいつも以上に浮きあがってくる形になるのですね。

お軽@菊之助さん、クールビューティ的な綺麗さ。勘平を引っ張っていく芯の強さがある。先月の「裏門」でのお軽と繋がるように演じていたのかなと思いました。

勘平@錦之助さん、お軽@菊之助さんと並ぶといかにも美男美女で目の保養。芯としてはちょっと弱いかな。お軽にずるずると引っ張られていく弱さがその代わりあって、この場の勘平としてはいい塩梅なのかも。

伴内@亀三郎さん、まじめで滑稽味は少なめ。勘平より強そうだった(笑)

「五・六段目」
勘平@菊五郎さん、何度も拝見しているけど今月の菊五郎さんの勘平は今までと違うというか、死ぬゆく運命の儚さがそこにあって心の底から納得できた。とにかく素晴らしかった。どう生きて行くべきかを悩んでいるような、そこにいることの居心地の悪さを感じているような佇まい、武士としての誇りを取り戻したい一身の心の揺れを見事に体現させていた。また、短慮さのなかに誠実さもあり、お軽を想う気持ちににもブレはなく、揺れ動く男としての色気がそこにある。

おかや@東蔵さん、菊五郎さん勘平に対する東蔵さんのおかやが役のうえでの力関係が絶妙で見応えありまくりだった。この二人の台詞の巧さが引き立ったのでは?と思う。

お軽@菊之助さん、実家に戻り勘平に添えたことで浮ついたところが無くなり落ち着いた感。女房として、そして娘として本楽の素朴で素直なお軽に戻ったのかな~と思わせました。可愛らしかったです。

原郷右衛門@歌六さんの落ち着き、千崎弥五郎@権十郎さんの実直さ、源六@團蔵さんの世間知の高い押し引き、お才@魁 春さんの情味から一歩引いた絶妙な置屋の女房風情と、皆さんとてもよくて、場をより締めたと思う。

五段目で重要な斧定九郎@松緑さん、骨太でいかにも山賊といった風が強かったです。

「七段目」
吉右衛門さんの由良さんのストイックさがいつも以上に際立っていた。七段目の由良さんは吉右衛門さんがベストと思ってるのですがやっぱり好みです。自然に出る色気と内心の覚悟の強さと大きさ。芝居の緩急のつけ方がほんと巧い。台詞の間合いはいつもより早めにトントンとやっていたような。

お軽@雀右衛門さんがまた良くて。勘平一途さの可愛らしさだけでなくそのなかの女の情熱が今回見えた。やはり襲名して芸が一段あがった気がする。この方は台詞に哀愁があるのだけどそこに華がついてきたなあと思う。

平右衛門@又五郎さんもとても良かった。前半は熱演すぎてもう少し緩急が欲しいけど後半のいかにも兄妹間の情愛の温かさと徒党に加わりたい必死さがストレートに出てて。又五郎さん平右衛門と雀右衛門さんお軽は完璧に兄妹だった。会話しているなかでの距離感とか雰囲気とか。顔も似た系統だからかな?

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歌舞伎座『八代目 中村芝翫襲名披露 吉例顔見世大歌舞伎 昼の部』3等A席前方センター

2016年11月05日 | 歌舞伎
歌舞伎座『八代目 中村芝翫襲名披露 吉例顔見世大歌舞伎 昼の部』3等A席前方センター

歌舞伎座昼の部、最初はこの演目並びはどうかな?的心配があったけど、今月も襲名だけあって華やかだし皆で成駒屋を祝うという温かさもあって良かったです。

『四季三葉草』
三番叟を基にした祝祭舞踊です。

翁@梅玉さんの品格ある佇まいが素晴らしかったです。千歳@扇雀さんは柔らかく、三番叟@鴈治郎さんは丁寧にきっかりと。晴れやかな舞踊でした。 
     

『歌舞伎十八番の内 毛抜』
明るく楽しい一幕となっておりました。

粂寺弾正@染五郎さん、役柄的にどうかな?と思っていたのですが意外に似合っており、華やかで知的でありつつ可愛らしい従来の雰囲気とは違う爽やかさがあるユニークな粂寺弾正でした。おおらかさという点ではまだまだですがとても明るく演じており、お客さんも楽しそうに笑って観ていて予想外の良い出来。こなれて緩急出たらもっと楽しくなりそうな感じがしました。染五郎さんのこのところの喉の不調は治っておらず、声が万全ならもっと良かっただそうにと思いました。

秦秀太郎@松也さん、正義感溢れるお小姓姿が似合っていました。少し痩せましたかね?高い声がきつそうでしたがやはり喉が不調かな。

腰元巻絹@梅枝さん、きりりっとした風情が素敵でhした。弾正に言い寄られる場面でのビビビーが可愛かったです。

八剣玄蕃@彌十郎さん、悪役もいかにも悪そうに押し出しよく。

八剣数馬@廣太郎くん、雰囲気的には赤っ面のタイプではありませんがしっかりと輪郭太く。

秦民部@高麗蔵さん、こういう凛とした正義感溢れる立役もいいですね。

『祝勢揃壽連獅子』
四人連獅子、普段の連獅子とかなり違っていました。構成考えるの大変だったでしょうね。新・橋之助くんの気合いが凄かった。お父さんとは違うタイプの役者になりそう。親子それぞれの個性が見えた踊りでした。

慶雲阿闍梨@仁左衛門さんと昌光上人@梅玉さん、役がかなり被るお二人だけど個性の違いがほんの少しの時間でわかる間狂言。二人とも品格が衣装きてるような高僧でした。文殊菩薩@藤十郎さんは出るだけで華やかでふっくりと。も

萬太郎くん、尾上右近の間狂言。二人とも丁寧にきっちりと。間の取り方の違いなど個性が出ていました。

『盲長屋梅加賀鳶』
期待以上に面白かったです。

天神町梅吉/竹垣道玄@幸四郎さん、この役は三度目ですね。最初は似合っているとは思えなかった役なのですが、回を重ねて役をどんどん自分のものにしているのがさすがですね。小悪党の道玄に小悪党らしさが出て押しの強さのなかの小心さを緩急効かせて巧くみせる。

お兼@秀太郎さん、悪女なんですが自分に正直で道玄に惚れ込んでいる女の可愛らしさがあって憎めません。

松蔵@梅玉さん、さらっと貫禄をみせて知的さが前に出る松蔵ですね。かっこいいです。

道玄女房おせつ@梅花、お朝@児太郎さんの叔母姪の関係の濃密さが良かった。よかれと思ったことが薄幸な運命へと転がっていく不幸感が切なかったです。


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横浜みなとみらい大ホール『ユリアンナ・アヴデーエワ ピアノリサイタル』1等1階前方上手寄り

2016年11月03日 | 音楽
横浜みなとみらい大ホール『ユリアンナ・アヴデーエワ ピアノリサイタル』1等1階前方上手寄り

昨年、初めて聴いたピアニスト。音色の芯のある美しさとパワフルさに魅了され、今回のリサイタルに。どの音も明快でかつ滑らか。そしてパワフルで音に向かっていく集中度もすごい。素晴らしかったです。前半のベートーヴェンは私にとってはちょっと不思議な音出しというか、丁寧にゆったりとした演奏。白眉は後半のリスト。低音の重さと広がり、高音の滑らかさ、そして静謐さすら感じさせる余韻。すごいものを聴いた、と思いました。あのなんともいえない空気感。ほんと良かった~。

アンコールはショパン。こちらもパワフルかつ一音一音の明快さに感嘆。響かせ方がかなり好みです。

【曲目】
ベートーヴェン:
ピアノ・ソナタ第27番 ホ短調 op.90
創作主題による32の変奏曲 ハ短調 WoO.80
ピアノ・ソナタ第26番 変ホ長調「告別」 op.81a
-----------------------------
リスト:
悲しみのゴンドラ
凶星!
リヒャルト・ワーグナー - ヴェネツィア
ピアノ・ソナタ ロ短調

【アンコール】
ショパン:
ノクターン第8番 op.15-2
マズルカ変ロ長調 op.59-3
ポロネーズ第6番変イ長調「英雄」op.53

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シアタートラム『治天ノ君』 前方下手寄り

2016年10月29日 | 演劇
シアタートラム『治天ノ君』 前方下手寄り

初演時(2013年)の評判がよく気になっていた芝居。演劇というのは意図せず時代を写すことがある(と思っている)けど、この芝居はそのひとつだ。演劇に興味がある方にはぜひ観に行ってほしい。非常に真摯で丁寧なとても良い芝居です。

史実をもとに貞明皇后の視点から大正天皇を描いた物語。大正天皇の生き方を丁寧に拾い出し、時代、親と子、運命、背負うものへの責務といったものが描かれていく。淡々とていながらも情感溢れた芝居。ちょうど「今」だからこそ、より考えさせられるものでした。虚実のバランスが絶妙。夫婦の情愛、親子の関係性、周囲の人たち係わりようを中心に描いているため、人としての在り様、情の部分で感情を揺すぶられるのだけど、もう一方で観客は歴史の目撃者としての立場にも見事に立たせられる。この芝居はぜひ再演していって欲しいですし、この戯曲が後世に在り続けられますようにと思います。

役者さんたち全員とても良かった。それぞれが役に嵌っている。貞明皇后の松本紀保さんの存在感の大きさ、凛とした品のある佇まいや声はちょっと圧倒的で彼女がそこにいたからこそ皇室の物語として説得力が出たと思う。また大正天皇の西尾友樹さんの活き活きとした明るさと繊細な芝居が魅力的でした。

『治天ノ君』を観てから継承ってこと考えてる。自身であることを求めながら背負うものに対して誠実に努力していく。背負う大きさは違うとは思うけど、歌舞伎のこと、ちょっと掠めたよね。紀保さんがあの役でいたこともあり。

劇団チョコレートケーキ27回公演『治天ノ君』
【脚本】 古川健
【演出】 日澤雄介
【出演】
貞明皇后節子:松本紀保
大正天皇嘉仁:西尾友樹(劇団チョコレートケーキ)
明治天皇睦仁:谷仲恵輔  
昭和天皇裕仁:浅井伸治(劇団チョコレートケーキ)
有栖川宮威仁:菊池豪 
大隈重信:佐瀬弘幸
原敬:青木シシャモ
牧野伸顕:吉田テツタ 
四竈孝輔:岡本篤(劇団チョコレートケーキ) 

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日本特殊陶業市民会館ビレッジホール『錦秋名古屋顔見世 昼の部』 3等前方センター

2016年10月23日 | 歌舞伎
日本特殊陶業市民会館ビレッジホール『錦秋名古屋顔見世 昼の部』 3等前方センター

昼の部は二つの演目で夫婦愛のお話。仁左衛門・時蔵コンビ、染五郎・孝太郎コンビとも可愛いカップルぶりでした。ついでに牛若丸も可愛くて、可愛いが並んだ昼の部でした!

『橋弁慶』
牛若丸@萬太郎くん、丁寧でキレのいい良い踊りでした。顔の拵えも良かったです、絵心あるのかな。キリッとしつつも、元の顔立ちが可愛らしいこともあり、小さな身体でひょいひょいと大きな弁慶に向かっていくのが可愛らしくもありました。

弁慶@彌十郎さん、大きな方ですので弁慶姿がお似合いで、牛若丸@萬太郎くんといい対称でした。

従者@廣太郎くん、不器用さも見て取れるのですが丁寧にしっかりと踊っていました。長袴の扱いもきちんとできていたと思います。

『壺坂霊験記』
夫婦愛の物語です。この演目は文楽含めて何度か拝見して個人的に暗い演目というイメージを持ってしまい今回も期待していませんでしたが、なぜか明るく可愛らしくまとまっていて観易かったです。

沢市@染五郎さん、自分の存在意義を見失ってしまっているものの、生来の気質は明るいのではないか?と思わせる造詣でとても可愛らしかったです。。染五郎さんの持ち味かな。盲目の沢市はキャラクター的にコンプレックスを持っていて、かなり悲観的でイジイジした男だと思うのですが、コンプレックスの部分は強調せずそれも女房を愛おしく思っているがゆえという男の切なさを前面に出していた感じ。また生き返って、目が見えたあとの沢市さんの明るさが本当にキュートでした。この役、染五郎さんに合うかな?と思っていたのですが台詞も動きもよく義太夫の乗っており、思った以上に好演してたと思います。

以前から書いていますけど染五郎さんはもっと丸本ものをやっていくべきと思いました。台詞術が良くなっていることもあり、深いところの表現を身に付けてきてる。いくつかの役はもっと再演して深めて欲しいし色々やってほしい。昨夜の源蔵が本当に良かったし、沢市も台詞術の部分でかなりの出来。本当によく義太夫に乗っているしそこにキャラクターの心情を表出させている。声が万全ならもっと良かった。

お里@孝太郎さん、こういうお役はお得意ですが「沢市さん、大好き」ラブラブなオーラが体から発せられていて本当に可愛らしかったです。旦那思いの一途さ、健気さや世話好きなんだろうという明るさがストレートに伝わってきます。孝太郎さんは義太夫にのせた台詞術が元々お上手ですが最近特に声がますます良くなって感情をのせるのも巧くなったように思います。染五郎さんとは役者としての雰囲気が違うタイプですが、その部分でいいバランスとなるタイプの相性のよさがあるなあと思います。らぶらぶモードが際立つんですよね。もう少し前みたく共演していただきたいです。

観音さまの子役ちゃんも超可愛かったです。

『ぢいさんばあさん』
森鷗外原作、宇野信夫作・演出の新歌舞伎です。ストーリは好みからいうと、そうでもない芝居なんですが、夫婦の絆が描かれているためか、わりとよく上演されますね。今回、年月の重みというより夫婦の愛情の変わらなさが強調されていたように思います。

伊織@仁左衛門さん、非常に可愛らしい優しい男としての造詣で、ふとした弾みで下嶋を殺してしまう、といった感じで日々、るんのことを想っている伊織かな~と思いました。仁左衛門さんの伊織は刀に執着してわざわざ下嶋に金を借りるような男にはみえなく多少齟齬がおきるのですけど、そこは力技で終始可愛らしい男として存在していました。この造詣のほうが後味がよくなるので芝居としては正解なのかもしれません。

るん@時蔵さん、このお役、とても似合いますね。いかにも武家の奥方らしい品のよさと控えめな風情。また奥女中奉公で認められている立場になれるだけの器量があるというのも自然と伝わってきます。伊織一途さも控えめな表現だからこそ伝わる年月の重さと女の可愛らしさが透けてみえ、本当に良いるん像だったと思います。当たり役になるんじゃないかな~。

下嶋@彌十郎さん、理は通っていても性根の部分でいやらしさがみえる下嶋。役者としてはこういう役はどこまでやるかの加減が難しいでしょうけど、仁左衛門さんの伊織の良さのほうを立つように演じてて巧いなあと思いました。

久弥@梅枝くん、きく@新悟くんの若夫婦が爽やかでとても良かったです。梅枝くんは立役は凛としていていいですね。新悟くんのきくは性根が優しい女性。とても似合います。

久右衛門@萬太郎くん、るんの弟役ですから大役です。親子で姉弟を演じるのですから子供にみえてはいけません。年が離れた、がつきますけど姉弟の距離感がきちんとありました。短気で直情的な久右衛門を明確に演じていたと思います。

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