Snowtree わたしの頭蓋骨の下 *鑑賞記録*

舞台は生もの、賞賛も不満もその日の出来次第、観客側のその日の気分次第。感想というものは単なる個人の私感でしかありません。

新橋演舞場『第八回 三響會 十五周年記念公演』 3等3階前方下手寄り

2012年10月27日 | 古典芸能その他
新橋演舞場『第八回 三響會 十五周年記念公演』 3等3階前方下手寄り

『延年之舞「滝流し」』
能楽での『勧進帳』の一部分の演奏。深々たる空気と力強さを感じました。

『獅子』
菊之丞さんがキレのある獅子ぶり。空気を切り込むような鋭さ。

『船弁慶』
囃し方の人数が増えると一気に華やかな演奏になります。勘十郎さんが表情豊かな大きな踊りぶり。

『小袖曽我』
能楽のほうは日本舞踊や歌舞伎舞踊とはやはり空気感が違う。一点に集中するというか背筋がしゃんと伸びる感じ。梅若紀彰さん、観世喜正さんの連れ舞(っていうの?)が華やかで楽しい。

『供奴』
鷹之資くんは素直に丁寧に丁寧にしっかり踊っていました(^_^)。舞台映えする良いお顔。

半能『天鼓』
これがとても面白かった。物語のなかの喜びがストレートに伝わってきた。観世銕之丞さん、表情豊かに舞う。

『三番叟』
演奏に佐太郎さんが!出演者にお名前が載っていなかったのでサプライズです。藤間勘十郎さんらしい華やかでケレン味のある振り付けを猿之助さんが軽妙にキレよく踊っていく。足捌きが前より力強くなっていたかな。猿之助さんの三番叟はまさしく「地」。ラスト操りぽい雰囲気を見せてたのが面白い。

演舞場で猿之助さんだとどうしても染五郎さんと猿之助さん(当時、亀治郎)での二人三番叟を思い出す…。あれは天と地の三番叟だった。もしかしたら今回それだったかもしれないのよね…あれこれ雑念入ってしまった…。


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新橋演舞場『第八回 三響會 十五周年記念公演』

一、一調一管による三響會の歩み

 ・「延年之舞~滝流し~」
   亀井広忠
   観世喜正 藤田六郎兵衛

 ・「獅子」
   田中傳左衛門
   尾上菊之丞 福原寛

 ・「船弁慶」
   田中傳次郎
   藤間勘十郎 田中傳十郎
   山崎正道 杵屋利光 今藤長龍郎

二、舞囃子「小袖曽我」
   梅若紀彰 観世喜正

三、舞踊「供奴」
   中村鷹之資

四、半能「天鼓」
   観世銕之亟

五、囃子による「三番叟」
   振付 藤間勘十郎

   市川猿之助
   亀井広忠 田中傳左衛門 田中傳次郎
   福原寛 田中傳左衛門社中

新橋演舞場『芸術祭十月大歌舞伎 夜の部』 1等1階前方センター

2012年10月20日 | 歌舞伎
新橋演舞場『芸術祭十月大歌舞伎 夜の部』 1等1階前方センター

『御所五郎蔵』、『勧進帳』ともに予想以上に面白かったです。どちらも「物語」としてわかりやすく鮮明な舞台でした。ベテランならではの芝居だったと思います。

『御所五郎蔵』
華やかさはなかったけど「物語」の提示がしっかりなされていて面白かった。

五郎蔵@梅玉さん、物語が立ったのは梅玉さんのお手柄かも。五郎蔵のニンではないし地味ではあるのだけど「物語」そのものの在り様を提示するのに長けてる方だとつくづく思いました。特に「五郎蔵内腹切の場」に説得力があった。

皐月@芝雀さんも素晴らしかった。五郎蔵への一途さや浅間家への忠節などの想いを的確に表現されていてまた艶もだいぶでてらしたかなと。時折、雀右衛門さんにハッと思うほど似て見えたり。「五郎蔵内腹切の場」の愁嘆場のクドキは圧巻でした。

星影土右衛門@松緑さん、かなり頑張っててとても良かった。台詞の部分ではまだ表現しきれてない部分も多々あるんだけど、土右衛門としての佇まいやさりげない所作が綺麗に決まってて先の期待を持たせた。

逢州@高麗蔵さん、凛としてて素敵だった。

五郎蔵の子分は若手中心でしたがやはり先輩格の亀寿さんが抜きん出て上手でした。

ただ全体的にはやはり梅玉さんと松緑さんとのバランスが悪かった…。書きたくないけど染五郎さんと松緑さんとだったらとの思いが…。昼の部の『国性爺合戦』は思わなかったんですけど…。梅玉さんの五郎蔵なら土右衛門は左團次さんあたり持ってこないと。

『勧進帳』
勧進帳が舞踊劇というよりストレートなお芝居だった。面白かったです!

弁慶@幸四郎さん弁慶、余計なものが削ぎ落とされて近年の幸四郎弁慶のなかでは個人的にベスト。今までが余計なものが付きすぎてたんだなと痛感。たぶん私が拝見した日はお疲れな部分はあったと思う。だが妙な力の入りようが無くなって持ち味の実直さが浮いてでて存在感が大きくなった。義経を守ろうと立ちはだかるその姿は大きな山のようでした。また台詞をうたいすぎない部分で声のよさが際立って台詞のひとつひとつが明快でまた感情豊か。そしてただひたすらに義経を守り、そのなかで富樫という人物に感銘と感謝の気持ちを抱いている弁慶でした。本当に良い弁慶でした。

富樫@團十郎さん、懐が大きい。私は團十郎さん富樫、好きですね。台詞を真っ直ぐに語りしっかり幸四郎さん弁慶を受けて演じてらしてとても良かったです。問答の間合いは丁々発止ではなかったけどしっかりとお互いの言葉を聞き合う形になり「芝居」の面白さが出たと思う。

義経@藤十郎さん、かなりお疲れの様子ではあったのですが守られるべき存在として象徴のような佇まいで説得力がありました。

太刀持ち@金太郎ちゃん、必死にトコトコと團十郎さん富樫に付いて行く姿が可愛らしい

新橋演舞場『芸術祭十月大歌舞伎 昼の部』 3等A席センター

2012年10月14日 | 歌舞伎
新橋演舞場『芸術祭十月大歌舞伎 昼の部』 3等A席センター

『国性爺合戦』
てっきり「千里が竹の場」も上演すると思い込んでいたので無くて残念。以前、松緑さんが和藤内を初役で演じた時も付いてなかったんですよねえ。彼は立ち回りが上手ですしいつか観たいです。

和藤内@松緑さん、力強さがありまた形も綺麗に決まっていました。台詞回しもまだしっかり伝える部分弱いところもありますが一本調子だった前回に比べると緩急を効かせてくるようになって格段の進歩。二幕目で受けの芝居が出来ていたのも良し。少し痩せられたかな?

甘輝@梅玉さん、知将といった趣の甘輝でした。大将としての格の高さや存在感がありまたその立場としての行動原理に納得のいく造詣。上手いですねえ。

錦祥女@芝雀さん、可愛らしく情味のある錦祥女です。この方は将軍の奥方という格はまだ少し足りないかな。しかし娘として親を想う心情や妻として夫を想い立てる心情が切々と伝わってきます。台詞が本当に良い。

渚@秀太郎さんがとても良かったです。凛とした筋を通す強さとそのなかの濃い情味。妻であり母であるその立場が明快に伝わってきました。

『勧進帳』
色々たっぷりな勧進帳でございました。幸四郎さんと團十郎さんの並びは華やか。芝居方法はお二人はだいぶ違いますね。

弁慶@團十郎さん、いつも通りのおおらかで一本気、義経のことが大好きで一心に守ろうとする可愛い弁慶でした。私が拝見した時は声が少しきつそうでした。体力的に前のように勢いよくはいかないんでしょうね…。台詞廻しがちょっと安定してない部分が。

冨樫@幸四郎さん出はかなり能がかりだけど義経一行と相対してからは少し写実になる。弁慶に対しひとつひとつ丁寧に受けていくので問答が分かりやすい。一直線でいく團十郎さん弁慶に合うかはまだ様子見な感じもしました。幸四郎さんが弁慶@團十郎さんの間に丁寧に合わせていた感じで丁々発止とまではいかなかったかな。

義経@藤十郎さん、ふんわりと高貴なオーラを漂わせた義経。武将の面よりも守られるものとしての象徴といった雰囲気。確固たる存在感がありました。

日生劇場『ジェーン・エア』 B席3階センター上手寄り

2012年10月06日 | 演劇
日生劇場『ジェーン・エア』 B席3階センター上手寄り

初演の時に拝見してとても気に入ったミュージカルです。再見して改めてとても素敵な芝居だなと思いました。

見終わった後ずっと余韻に浸ってしまいました。「許して~」のナンバーは泣けますね。派手なミュージカルじゃないけどしみじと良いなあ。『ジェーン・エア』なので昔の価値観やらキリスト教の教義での価値観やら馴染めない部分もあるんだけど、それ以上にミュージカルとしてとても良い芝居だと思う。

初演から少し演出やキャラクター表現が少し変わっていた。カットされた部分があるような気がする。前のほうが物語の流れは丁寧だったような。その代わりジェーンとロチェスター二人の物語は強調されていたかな。、ジェーンの松たか子ちゃんもロチェスター橋本さとしさんもとても魅力的。歌も前回以上に良かった。『ジェーン・エア』とにかくキャストが皆さんとても良いんですよ。見事に揃ってる。子役も上手いしベテランも表現豊かだし、そういう部分も魅力。

改めてジョン・ケアード演出はかなり好みだな~と思ったわ。そして松たか子ちゃんと橋本さとしさんの「不細工」設定はやっぱり違う(笑)


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日生劇場『ジェーン・エア』

脚本・作詞補・演出:ジョン・ケアード
作詞・作曲:ポール・ゴードン
翻訳:吉田美枝
訳詞:松田直行
演出補:ネル・バラバン
音楽監督:ビリー山口
編曲:ブラッド・ハーク
ラリー・ホックマン
スティーブ・タイラー
美術:松井るみ
照明:中川隆一
衣裳:前田文子
音響:湯浅典幸
ヘアメイク:河村陽子
舞台監督:鈴木政憲
制作協力:古川 清
制作:真藤美一 高橋夏樹 吉田実加子
製作:松竹株式会社


【出演者】
ジェーン・エア:松たか子
ロチェスター:橋本さとし
フェアファックス夫人:寿ひずる
スキャチャード夫人/バーサ・メイソン/デント夫人 旺なつき
リード夫人/レディ・イングラム:阿知波悟美
ジェーンの母/ローウッド学院教師/ソフィ 山崎直子
ロードウッド学院教師/ブランチ・イングラム:辛島小恵
ジェーンの父/イングラム卿/シンジュン・リバース:小西遼生
リチャード・メイスン:福井貴一
ブロクハースト氏/デント大佐/牧師:壤 晴彦
ロバート:小西のりゆき
ローウッド学院教師/グレース・プール:鈴木智香子
ヘレン・バーンズ/メアリ・イングラム:さとう未知子
ローウッド学院教師/リア:安室 夏
ローウッド学院教師/ベッシー:谷口ゆうな
ローウッド学院教師/ロージー:山中紗希
エイブラハム:阿部よしつぐ

【あらすじ】
19世紀イギリス。幼くして両親を亡くし、劣悪な環境の寄宿学校で成長したジェーン・エア(松たか子)は、やがてソーンフィールドの富豪の館に家庭教師として赴任する。館の主人ロチェスター(橋本さとし)の謎めいた挙動に不審を感じながらも少しずつ彼に魅かれていき、やがて二人は行き違いを乗り越え結婚を誓う。しかしその時、隠されていた過去が暴かれる…。