歌舞伎座『六月大歌舞伎 第一部『碇知盛』』1等1階前方センター
『渡海屋・大物浦』
2週間ぶりに拝見して今月の渡海屋、大物浦の場は「物語る」部分が前に出てるなあと感じた。語り口が真面目。観ていてストレートに物語が伝わってきたなと思いました。
今回、染五郎さん知盛と猿之助さん典侍の局はあくまでも平家の再興を願う一心での同志的結びつきだと感じました。互いへの甘えが一切ない、そういう間柄にみえた。敗北を噛みしめ、噛みしめ、一矢を報いんために生きてきた感。
銀平/知盛@染五郎さん、銀平はやはり貫目は足りないけど、どこか鷹揚さが出て’らしさ’が出てきたと思った。もっとたっぷりやれるといんだけどちょっと肩に力がまだ入ってかな。でも自然な格が出るのは強みだと思う。また台詞のよさで誰に何を聞かせようとしているのかをさりげなく提示する。露骨じゃない分、颯爽としたかっこよさが前に出る、その塩梅がいい。白装束の知盛になってからは完全に武士。死に装束ではなく勝つためのいでたち。決意の強さのなかに若干’能天気’に勝つ気満々さが垣間見える。若いからそうみえるのかな?
手負いになってからの染五郎さんの知盛。ここで輪郭がぐっと太くなる。悔しさと底に溜めこんだ恨み、このままでは逝けぬという意地。手負いの獣のように噛みつき噛みつき進む。諦めはそこにない。やはり染五郎さんの知盛は天命であるとも生身の身体朽ちるとも魂死なず。悲壮だけど悲哀ではない。心情や情景を語るのはやっぱり巧い。伝えるということは十分に出来ていた。口惜しさ、無念さのみならず平家の滅亡に至る道筋を語る時の自責の念、ただ真っ直ぐに語るだけではなく、描写に緩急がある。その語り口が私は好きだ。
染五郎さん知盛は前回ビリビリするような咆哮のような叫びがあったのだけど今日は喉が少しやられていた感じで前へ押し出せず、そこが残念だった。造形はいいと思うんだけど、そこをまだ体現しきれてないのが課題。今月の染五郎さんは珍しく細かい部分で、後半でもアラが目立つ場面がいくつか。今月の阿弖流為宣伝含む仕事のしっぷりは正直、賛成できない。役に集中する環境をつくるのも必要だ。
お柳/典侍の局@猿之助さん、お柳は女主人としての目配りのできる凛とした佇まいやそのなかにある柔らか味、情味、色気がいい。ここはほんと京屋を彷彿させる。亭主自慢はもっと柔らかい口調のほうが好みなのともう少しメリハリが欲しかった。でも初役でここまで演じられるのは大したもの。典侍の局は所作がとても丁寧で長袴の捌き方の美しいこと。安徳帝への思い入れの深さもいい。ただここは京屋の雰囲気があまりないなあと。猿之助さんらしい造形ではあるのだけど。できれば京屋のあくまでも位取りを大切にした凛質のなかにある芯のある優しさ情味がある台詞廻しをもう少しなぞってほしかった。もうこれは好みの問題ですが先代雀右衛門丈が好きな私としてはつい求めてしまいます。
『渡海屋・大物浦』
2週間ぶりに拝見して今月の渡海屋、大物浦の場は「物語る」部分が前に出てるなあと感じた。語り口が真面目。観ていてストレートに物語が伝わってきたなと思いました。
今回、染五郎さん知盛と猿之助さん典侍の局はあくまでも平家の再興を願う一心での同志的結びつきだと感じました。互いへの甘えが一切ない、そういう間柄にみえた。敗北を噛みしめ、噛みしめ、一矢を報いんために生きてきた感。
銀平/知盛@染五郎さん、銀平はやはり貫目は足りないけど、どこか鷹揚さが出て’らしさ’が出てきたと思った。もっとたっぷりやれるといんだけどちょっと肩に力がまだ入ってかな。でも自然な格が出るのは強みだと思う。また台詞のよさで誰に何を聞かせようとしているのかをさりげなく提示する。露骨じゃない分、颯爽としたかっこよさが前に出る、その塩梅がいい。白装束の知盛になってからは完全に武士。死に装束ではなく勝つためのいでたち。決意の強さのなかに若干’能天気’に勝つ気満々さが垣間見える。若いからそうみえるのかな?
手負いになってからの染五郎さんの知盛。ここで輪郭がぐっと太くなる。悔しさと底に溜めこんだ恨み、このままでは逝けぬという意地。手負いの獣のように噛みつき噛みつき進む。諦めはそこにない。やはり染五郎さんの知盛は天命であるとも生身の身体朽ちるとも魂死なず。悲壮だけど悲哀ではない。心情や情景を語るのはやっぱり巧い。伝えるということは十分に出来ていた。口惜しさ、無念さのみならず平家の滅亡に至る道筋を語る時の自責の念、ただ真っ直ぐに語るだけではなく、描写に緩急がある。その語り口が私は好きだ。
染五郎さん知盛は前回ビリビリするような咆哮のような叫びがあったのだけど今日は喉が少しやられていた感じで前へ押し出せず、そこが残念だった。造形はいいと思うんだけど、そこをまだ体現しきれてないのが課題。今月の染五郎さんは珍しく細かい部分で、後半でもアラが目立つ場面がいくつか。今月の阿弖流為宣伝含む仕事のしっぷりは正直、賛成できない。役に集中する環境をつくるのも必要だ。
お柳/典侍の局@猿之助さん、お柳は女主人としての目配りのできる凛とした佇まいやそのなかにある柔らか味、情味、色気がいい。ここはほんと京屋を彷彿させる。亭主自慢はもっと柔らかい口調のほうが好みなのともう少しメリハリが欲しかった。でも初役でここまで演じられるのは大したもの。典侍の局は所作がとても丁寧で長袴の捌き方の美しいこと。安徳帝への思い入れの深さもいい。ただここは京屋の雰囲気があまりないなあと。猿之助さんらしい造形ではあるのだけど。できれば京屋のあくまでも位取りを大切にした凛質のなかにある芯のある優しさ情味がある台詞廻しをもう少しなぞってほしかった。もうこれは好みの問題ですが先代雀右衛門丈が好きな私としてはつい求めてしまいます。