映画は細胞から地球各地の映像を経て宇宙空間へ、そしてタイトルが出ます。
ナレーションに「知的生命体が遠い宇宙から地球に羨望のまなざし見つめていた」と
あって、これが原作の出だしと同じです。
原作は主人公の一人称で語られています。
“ぼく”は哲学系の著述者で、
映画の港湾労働者の主人公よりずっと知的レベルは高いようです。
が、原作の設定はドラマ展開上、さして有効に機能しているとは思えません。
ま、理工系あるいは生物化学系の学者ではなく、
かつ、知的センスで物語を語りうる人物であることが重要なのだろうと思いますね。
原作はこの主人公が宇宙戦争の決着後にまとめた著作ということになっており、
当然冒頭の語りも主人公によるものです。
映画では冒頭のナレーションはモーガン・フリーマンが当てているとか、
彼はこの作品の出演者ではなく、
つまり主人公を含め特定の登場人物の語りではありません。
葉の上の雫が地球になるというラストを暗示させる映像も間に挟まれます。
ところで、原作にいう「羨望のまなざし」ですが、
原作者H.G.ウェルズは、火星が繁栄したのは遥か昔の話で、
今は星が冷えて火星人は滅亡の危機に瀕していると述べています。
地球よりずっと小さな火星が温暖であったのは惑星誕生後のごく短い時期であったことは、
既に原作の書かれた百年前にも解明されていました。
それをベースに、火星人が地球への移住を狙っているのだと原作では、
設定されているのです。
映画では異星人がどこからやってきたのか明らかとなっていません。
ゆえに語りの「羨望のまなざし」が何を意味するのかは不明瞭なままです。
映画本編のファーストシーンは、アメリカ東部のある港の大型クレーンでコンテナ船から
コンテナの積み下ろしをしている主人公レイ(トム・クルーズ)の仕事場面からです。
ヘリの空撮によるダイナミックなトップシークエンスです。
シナリオ上は単に主人公の登場と彼の職業紹介なのですが、
あとで登場する宇宙人の戦闘マシンが、三本足の巨大クレーンのような姿をしており、
主人公を含め人類はこの巨大クレーンに終始追い回されて逃げ惑うことになっており、
クレーンのオペレート席にいるレイの姿は立場が逆転する前の
操縦士そのもの様に見えて皮肉な構図になっています。
これはスピルバーグが意図的に仕組んだ映像上の演出と考えられます。
休憩時間となり、地上に降りたレイに現場作業主任が残業を頼みますが、
「組合がうるさいから」と袖にします。
アメリカの港湾労働者のユニオンが強固な組織であることは確かですが、
「冷たい奴だ」と不満げな上司に、ニヤニヤしながら「女どももみんなそういう」と
まじめに対応しようとしていません。
実は離婚した妻マリー(ミランダ・オットー)が週末、子供をつれて訪れるのでそれを
迎えるという立派な理由があるのですが、
レイはそのような事情を説明せずエゴイストな印象を見ているものに与えます。
車で交通違反などを犯しながら急ぎ帰宅すると、
別れた妻と新しい夫が長男ロビー(ジャスティン・チャットウィン)と
長女レイチェル(ダコダ・ファニング)をワンボックスカーで
連れてきており、家の前で車を止めて待っています。
原作では主人公の家庭の描写などは置いておいて、
知人の天文学者オグルウィが火星表面で火山の噴火のようなものが観測された
ことを伝え、二人して天体観測に夢中になるところから始まっています。
舞台はロンドン郊外の地方都市。
主人公の正確な年齢は記述がありませんが、“ぼく”の一人称でしゃべる若者です。
結婚して妻も登場しますが、子供はいません。
前述の通り文系の文筆業者だと名乗っていますが、
ドラマ中出版社などと打ち合わせる場面などが無いため、
無職で気ままに暮らしているような印象さえ受けます。
火星表面の爆発はそこから宇宙船が発射された証拠です。
イギリス各地の天文台はこの異変を観測していますが、
それが火星人の出撃によるものとは夢にも思っていません。
以下はネタバレになるので、この続きはhttp://www.cam.hi-ho.ne.jp/la-mer/#kにて「宇宙戦争」の頁をご覧下さい。
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ナレーションに「知的生命体が遠い宇宙から地球に羨望のまなざし見つめていた」と
あって、これが原作の出だしと同じです。
原作は主人公の一人称で語られています。
“ぼく”は哲学系の著述者で、
映画の港湾労働者の主人公よりずっと知的レベルは高いようです。
が、原作の設定はドラマ展開上、さして有効に機能しているとは思えません。
ま、理工系あるいは生物化学系の学者ではなく、
かつ、知的センスで物語を語りうる人物であることが重要なのだろうと思いますね。
原作はこの主人公が宇宙戦争の決着後にまとめた著作ということになっており、
当然冒頭の語りも主人公によるものです。
映画では冒頭のナレーションはモーガン・フリーマンが当てているとか、
彼はこの作品の出演者ではなく、
つまり主人公を含め特定の登場人物の語りではありません。
葉の上の雫が地球になるというラストを暗示させる映像も間に挟まれます。
ところで、原作にいう「羨望のまなざし」ですが、
原作者H.G.ウェルズは、火星が繁栄したのは遥か昔の話で、
今は星が冷えて火星人は滅亡の危機に瀕していると述べています。
地球よりずっと小さな火星が温暖であったのは惑星誕生後のごく短い時期であったことは、
既に原作の書かれた百年前にも解明されていました。
それをベースに、火星人が地球への移住を狙っているのだと原作では、
設定されているのです。
映画では異星人がどこからやってきたのか明らかとなっていません。
ゆえに語りの「羨望のまなざし」が何を意味するのかは不明瞭なままです。
映画本編のファーストシーンは、アメリカ東部のある港の大型クレーンでコンテナ船から
コンテナの積み下ろしをしている主人公レイ(トム・クルーズ)の仕事場面からです。
ヘリの空撮によるダイナミックなトップシークエンスです。
シナリオ上は単に主人公の登場と彼の職業紹介なのですが、
あとで登場する宇宙人の戦闘マシンが、三本足の巨大クレーンのような姿をしており、
主人公を含め人類はこの巨大クレーンに終始追い回されて逃げ惑うことになっており、
クレーンのオペレート席にいるレイの姿は立場が逆転する前の
操縦士そのもの様に見えて皮肉な構図になっています。
これはスピルバーグが意図的に仕組んだ映像上の演出と考えられます。
休憩時間となり、地上に降りたレイに現場作業主任が残業を頼みますが、
「組合がうるさいから」と袖にします。
アメリカの港湾労働者のユニオンが強固な組織であることは確かですが、
「冷たい奴だ」と不満げな上司に、ニヤニヤしながら「女どももみんなそういう」と
まじめに対応しようとしていません。
実は離婚した妻マリー(ミランダ・オットー)が週末、子供をつれて訪れるのでそれを
迎えるという立派な理由があるのですが、
レイはそのような事情を説明せずエゴイストな印象を見ているものに与えます。
車で交通違反などを犯しながら急ぎ帰宅すると、
別れた妻と新しい夫が長男ロビー(ジャスティン・チャットウィン)と
長女レイチェル(ダコダ・ファニング)をワンボックスカーで
連れてきており、家の前で車を止めて待っています。
原作では主人公の家庭の描写などは置いておいて、
知人の天文学者オグルウィが火星表面で火山の噴火のようなものが観測された
ことを伝え、二人して天体観測に夢中になるところから始まっています。
舞台はロンドン郊外の地方都市。
主人公の正確な年齢は記述がありませんが、“ぼく”の一人称でしゃべる若者です。
結婚して妻も登場しますが、子供はいません。
前述の通り文系の文筆業者だと名乗っていますが、
ドラマ中出版社などと打ち合わせる場面などが無いため、
無職で気ままに暮らしているような印象さえ受けます。
火星表面の爆発はそこから宇宙船が発射された証拠です。
イギリス各地の天文台はこの異変を観測していますが、
それが火星人の出撃によるものとは夢にも思っていません。
以下はネタバレになるので、この続きはhttp://www.cam.hi-ho.ne.jp/la-mer/#kにて「宇宙戦争」の頁をご覧下さい。
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クレーンのくだりもなるほど・・・。
もう一度観ると、ちりばめられた伏線がいっぱい浮かび出てくるのでは?
楽しみです。
全体が現実の出来事というより、悪夢っぽく描かれているところがスピルバーグらしいなと思いました。
昨日見てきたところですが
凄く詳しく書かれているのでびっくり
しました。参考になります。
僕も原作を読んでみようと思います。