この“第九番演奏秘話”というネタは映画企画としては、
業界ではかなり以前から知られたネタで、
実を言いますと、私も企画書書きをやっていた頃、このネタでプロットを書きました。
ですから、「おんやぁ、懐かしの松江所長」てなものです。
当時のプロット題名は「第九俘虜収容所“合唱”」となっていました。
日独両軍は厳しく対立し、往年の名作「戦場にかける橋」の日独版、
クワイ河鉄橋爆破に代わり、“第九”の歓喜の歌の大合唱がクライマックスになる。
そんでもって「これは史実に基づく映画である」だなんてとってもオイシイ。
掴みはばっちりでした。
フレーム・コピーはあっという間に書きあがったのですが、
さあて、肝心のあらすじになると、これが進まない。
「バルトの楽園」の予告編を見ますと、
ブルーノ・ガンツが松平健にステッキを突き付けて
「ドイツ人は野蛮人ではないぞ」とすごむ場面があります。
私がイメージしていたのも、ハインリッヒ少将と松江所長が
とことん対立し、あれこれあって和解する過程をヒューマンドラマとして
見せるというものでしたが、
当時の事情を調べると、ドイツ人と日本人が争ったという記録がどこにも無い。
脱走兵が出ても3日で帰ってきちゃうし、
皆で土木建築やったといっても小規模なもんだし、
物産展開いて鳴門人相手に商売しちまうし、で、
どこから斬っても対決軸が見つからないのですね。
映画で言うところのドラマとは、とどのつまり“対立と葛藤”ですから、
そのどちらもが存在しない話は、ドキュメンタリーにはなっても、
映画脚本としては成立しないのです。
無理やり対立軸を設定して緊張度を上げると、
それだけ史実から離れていってしまう。
あれこれ知恵を絞って書いたものの、
企画から書き直しの依頼があって、
こちらがギブアップしちゃいました。
これには後日談があって、更に三年後くらいに某所で脚本家のK先生と話しをした折に、
この第九の話が出て、「あれはボクも書かされたんだよね」。
私の方は脱走兵話を膨らませられないかと画策し、
K先生は捕虜達が関与した土木工事で何とかしたかったらしいのですが、
「たいした工事して無いでしょ、実際」
で、後半ファンタジーにしたら、プロデューサーにタオルを投げられたらしい…。
そのときに、この鳴門の第九話が昔から企画の遡上に乗ってはコケ、
乗ってはコケを繰り返した、未完の映画化企画であると聞いたのです。
結局企画書書きの誰でもが目の付けるところは一緒という話ですね。
ちなみにテレビでは過去数回、ドキュメンタリーとしてローカル局、
キー局の両方で取り上げられている筈です。
当時の帝国陸軍は、…
以下はネタバレになるので、この続きは
http://www.cam.hi-ho.ne.jp/la-mer/Pic-bartnogakuen.html
にて脚本レビューの頁をご覧下さい。
業界ではかなり以前から知られたネタで、
実を言いますと、私も企画書書きをやっていた頃、このネタでプロットを書きました。
ですから、「おんやぁ、懐かしの松江所長」てなものです。
当時のプロット題名は「第九俘虜収容所“合唱”」となっていました。
日独両軍は厳しく対立し、往年の名作「戦場にかける橋」の日独版、
クワイ河鉄橋爆破に代わり、“第九”の歓喜の歌の大合唱がクライマックスになる。
そんでもって「これは史実に基づく映画である」だなんてとってもオイシイ。
掴みはばっちりでした。
フレーム・コピーはあっという間に書きあがったのですが、
さあて、肝心のあらすじになると、これが進まない。
「バルトの楽園」の予告編を見ますと、
ブルーノ・ガンツが松平健にステッキを突き付けて
「ドイツ人は野蛮人ではないぞ」とすごむ場面があります。
私がイメージしていたのも、ハインリッヒ少将と松江所長が
とことん対立し、あれこれあって和解する過程をヒューマンドラマとして
見せるというものでしたが、
当時の事情を調べると、ドイツ人と日本人が争ったという記録がどこにも無い。
脱走兵が出ても3日で帰ってきちゃうし、
皆で土木建築やったといっても小規模なもんだし、
物産展開いて鳴門人相手に商売しちまうし、で、
どこから斬っても対決軸が見つからないのですね。
映画で言うところのドラマとは、とどのつまり“対立と葛藤”ですから、
そのどちらもが存在しない話は、ドキュメンタリーにはなっても、
映画脚本としては成立しないのです。
無理やり対立軸を設定して緊張度を上げると、
それだけ史実から離れていってしまう。
あれこれ知恵を絞って書いたものの、
企画から書き直しの依頼があって、
こちらがギブアップしちゃいました。
これには後日談があって、更に三年後くらいに某所で脚本家のK先生と話しをした折に、
この第九の話が出て、「あれはボクも書かされたんだよね」。
私の方は脱走兵話を膨らませられないかと画策し、
K先生は捕虜達が関与した土木工事で何とかしたかったらしいのですが、
「たいした工事して無いでしょ、実際」
で、後半ファンタジーにしたら、プロデューサーにタオルを投げられたらしい…。
そのときに、この鳴門の第九話が昔から企画の遡上に乗ってはコケ、
乗ってはコケを繰り返した、未完の映画化企画であると聞いたのです。
結局企画書書きの誰でもが目の付けるところは一緒という話ですね。
ちなみにテレビでは過去数回、ドキュメンタリーとしてローカル局、
キー局の両方で取り上げられている筈です。
当時の帝国陸軍は、…
以下はネタバレになるので、この続きは
http://www.cam.hi-ho.ne.jp/la-mer/Pic-bartnogakuen.html
にて脚本レビューの頁をご覧下さい。