岩波コラム

精神科医によるコラムです

ドラマの中のASD

2022-03-21 18:30:33 | 日記
フィクションの中の名探偵は、しばしばASD的な行動パターンをとる。以前に紹介したものであるが、シャーロック・ホームズを現代に復活させた英国BBC制作のテレビドラマ『シャーロック』の主人公の若きホームズの行動パターンはASDそのもので、自らを自嘲的に「高機能社会不適合者」と評していた。

本邦の2022年の冬クールのテレビドラマにも、偶然なのであろうが、ASDを思われる主人公が何人か登場している。まず『ミステリという勿れ』、原作は田村由美さんのコミック。主人公の久能整は一人暮らしの孤独な大学生、ただ孤独を辛いと思っている様子はない。その他人に対する距離のとり方と、俯瞰的な視点は、ASDそのものである。気になる事があるとだれかれ構わず思ったことを一方的に喋り出すところは、まさに「空気が読めない」特性のである。

次は、フジテレビの『ゴシップ』。黒木華が演じる主人公の瀬古凛々子は、大手出版社の社員で、会社が運営するネットニュースサイト「カンフルNEWS」の編集長を任される。辞書『大辞語』を愛読し、些細な物事から矛盾や誤りを見抜く能力がある一方、感情的な対人関係が苦手な点は、ASDの特性と一致している。他にも、『ドクター・ホワイト』の主人公の、異常なほど詳しい医学知識を持つ謎の女性も一定のASDの要素を持っているようだ。