岩波コラム

精神科医によるコラムです

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2016-07-07 22:39:40 | 日記
Yahoo ニュース に以下の記事が配信されました。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160704-00000017-fsi-bus_all


 「大人のADHD」成人3~4%、気づかず成長 ストレスで顕在化

                       SankeiBiz 7月5日(火)8時15分配信
    

 近年、注目を集めているのが「大人のADHD(注意欠陥多動性障害)」だ。ADHD専門外来を担当する昭和大付属烏山病院の岩波明院長は「成人の総人口の3~4%と、鬱病とほぼ同数。しかし、自分がそうとは気付かず、日々の生活に苦しんでいる人が多い」と指摘している。

 ADHDは、脳内の神経伝達物質であるノルアドレナリンとドーパミンの機能障害が原因といわれ、生まれながらの疾患だ。「落ち着きがない」「順番を待てない」「気が散りやすく、忘れっぽい」などの症状が特徴で、「多動性」「衝動性」「不注意」に分類される。子供の頃は多動性・衝動性優勢型、不注意優勢型、混合型がある。

 大人になると、多動性や衝動性は本人のコントロールなどで比較的目立たなくなるのに対し、不注意はより大きな問題になってくるケースが多い。Aさんは有名私大を卒業後、大手電機メーカーに勤務。単純な事務作業を任されたが、些細(ささい)なミスを繰り返し、たびたび注意を受けた。作業中に声をかけられると、何を優先させていいのかわからなくなる。取ったメモの存在を忘れる。上司や同僚の名前を覚えられない。自ら症状について調べ、岩波医師のADHD専門外来を受診した。「詳しく聞くと、子供の頃から忘れ物・落し物が多く、思春期以降、対人関係が苦手だった。さまざまな点からADHDと診断。彼は大人のADHDの典型的なパターンを示しています」

 ADHDは生まれながらの疾患なので、大人になって突然発症するのではなく、子供の頃から多動、衝動、不注意の症状がある。しかし、学生時代までは自分なりの工夫や周囲の配慮で、それなりに適応が取れる。ところが社会人になると、仕事のプレッシャーやストレスが格段に増し、ADHDによる不適応が顕在化。周囲から否定的に評価され、プレッシャーやストレスが一層増し、時に鬱状態などを招く。岩波医師が診るADHD患者の6~7割は、この「大人になって初めてADHDに気づいた」タイプだという。

 どういう症状が見られればADHDを疑えばいいのか。よくある例では「注意の持続が困難」「先延ばしにする」「仕事が遅い」「混乱しやすい」「時間管理が下手」「片付けが苦手」「よく物をなくす」「約束を守れない」などで、不注意に関連する。「貧乏ゆすり」や「落ち着きのなさ」(多動)、「不用意な発言」や「つい叱責する」(衝動)などもある。「診断時には、必ず子供の頃の話を伺います。参考になるのが小中学時代の通知表の教師の記載です。『慌てん坊』『おしゃべり』『計算ミスが目立つ』『提出物の期限が遅れる』『忘れ物が多い』といった表現から、子供時代の多動、衝動、不注意が分かることは珍しくありません」

 ADHDの治療は、基本は子供も大人も同じ。薬物療法と心理社会的療法の二本柱になる。薬は現在2種類が承認されており、「どちらとも、患者の約8割に効果があります。精神疾患の薬の中では、効果が非常に高い」と、岩波医師は言う。もちろん、ADHDの患者全員が治療の対象になるわけではない。しかし、ADHDの症状は周囲から理解を得られにくい。否定的な評価をされ、生きづらさを感じているなら、一度、専門外来を受診すべきだろう。

 岩波医師は「薬などの適切な治療で、自らの行動を客観的に捉えられるようになり、対処行動をとれるようになる。そうやって生活ががらりと変わった患者さんはかなりいらっしゃいます」と話している。