浅草文庫亭

"大哉心乎"
-大いなる哉、心や

真っ黒な孤独

2009-01-13 00:32:35 | 
札幌行ったり浅草でご飯食べたりして、色々なことがあってブログに書くこともたっぷりだったんですが、正直「なんかどんどん書いたらあんまコメントもらえないしな~」と思ってました。だってさ~コメント無いとさみしいじゃん。

でも前回の浅草話が思いのほかコメントいただいたので(ありがとうございます!)、更新頻度高くなっちゃいますが新しい話を。

本の話題です。

あんまりご興味ない方はまだまだ前の話でお楽しみくりださい。



「のぼうの城」が正直、微妙な感じだったので、返す刀で買ってみました。「ジョーカー・ゲーム」

柳 広司
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これも気にはなっていたんですよ。

第二次世界大戦時の日本軍に設立された「D機関」。ここではスパイが養成され、彼らのだましあいの活躍を描く短編集。

僕の興味のある分野として「昭和史」というのもあります。
太平洋戦争論というところまで行ってしまうと話しが大きくなってしまうけど。

そしてこの本の表紙絵が森美夏。この人と大森英史が組んだ「木島日記」はまぁたいそう面白かったな~。昭和偽史という感じでさ。

関係ないけど最近、小説の表紙絵を漫画家が書くことはやっているのかね?「のぼうの城」もそうだったし。

あんまり書評誌って読まないんだけど「このミステリーがすごい!」で2位になっていたから、期待もして。

これはねー、期待通りでした。

うん、面白かったです。

「お国のために死ぬ」ことが最上の教えだった当時の日本軍の中で一人「スパイにとって自決、あるいは殺人もっとも愚劣な策だ」と説く、伝説のスパイ、結城中佐。

なぜか?曰く「スパイは影として誰にも気づかれず生きる必要がある。自決や殺人をすれば必ず警察が動き出す。その時点で影ではない」から。

彼が作ったスパイ養成所、D機関。

結城中佐のスパイとしての教えは「影となり潜入先に溶け込むこと」

だから一般市民にとっては異質である「軍人」としてのそぶりを一切否定する。

軍服は当然のことながら、敬礼という軍人としては当然のしぐさも「ここ(=D機関内)では軍人のそぶりを見せたら罰金だ」と否定する。

だからこそ天皇という言葉を聞くだけで直立不動になることを求められた時代に、天皇制の是非を笑いながら議論するD機関のメンバーたち。

その点がある意味「異能」。

厳しい訓練を「これがやりたい」という思いではなくただ単に「自分であればこれくらい出来ねばならぬ」と思いだけでクリアし、「スパイ」という真っ黒な孤独にあふれた人生を選ぶ。

そういう彼らの活躍(そして失敗)をクールに描く。

非常に「マニッシュ」(←最近、僕が考えているテーマです)ではあるけど僕はおもしろかったなー。


あるレビューを読んでいて「結局、この結城中佐は何がしたかったの?」という感想があった。

僕はそんな感想は抱かない。

結城中佐のやりたかったことは明確。

すべてはラストシーン、最後の一言に表われている。


かなり良い本だけど2つだけ不満が。

それは表紙のイラスト。

明らかにここに書かれているのは結城中佐なんだろうと思う。右手の白手袋、杖。ただ作中で「軍人のそぶりを見せるな」としつこく言った結城中佐が軍服と軍帽を身に着けているというのがね~。

そしてこれだけの世界観、キャラクター、組織を作ったのであれば是非がっしりとした長編で読みたかったな。もちろん短編集だからこそこれだけ楽しめた、というのもあるかも知れないけど。出来れば次は同じキャラクターで長編を是非。
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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (エミリー)
2009-01-13 10:07:48
ホントに寂しがりやさんだよね~
私だってコメント入れないときでも、いつもちゃんと読んでますってば。だから更新頻度高いと嬉しいよー。
返信する
Unknown (よね3)
2009-01-13 15:08:33
しょーせんせーがコメント数気にしてたなんて意外です。
それならもっとすぐレスした方がいいと思うよ。
コメント2~3日放置されたら、あんまし見たくなくなるもんね。
日記書くのも楽しいけど、日記五割コメント五割で完成だと思います。

>変な感想
映画の感想にも通ずるところがあると思うけど、時々訳わかってない人いるよね。
たとえ間違っていたとしても自分なりの意見を持つのが感想だと思うけど、その辺放棄しちゃってんのね。
「わかんなーい」みたいな。

ちょっと考えろって。

長文及び上から目線、失礼しませんでした、くりださい。
返信する
Unknown (show)
2009-01-13 19:02:27
>エミリー

やっぱ分かってるね、俺の淋しがりやっぷりを。

結構足跡多くて嬉しいです。

>よね3

結構気にしてますよー。コメントへのレスがんばります。Mixiだと結構気軽なんですが、ブログだとなかなか。。。ってのはまぁ言い訳ですね。

記事五割コメント五割で完成ってのはおっしゃるとおりですね。コメント無かったらたぶん僕、こんなにブログ書いていないですもの。

「変な感想」については僕は否定しているわけではないんですけどね~。そう考える人がいるから「いや、僕はこう思う」って意見も出るし。ただまぁ考えてない感想はもったいないですよね。
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