浅草文庫亭

"大哉心乎"
-大いなる哉、心や

ローマ人列伝:アグリッピナ伝 1

2009-05-09 22:35:37 | ローマ人列伝
ピョコーン


ぺターン


ビースマルクー。


春ですね、つーか初夏ですねそーですね。

ジョギングはこの季節が一番気持ちEですねー。
E!E!気持ちE!!(追悼)
すぐ体もあったまって汗かいてくるし走り終わったらそよ風を感じるし。


繰り返しますがこの列伝は個人的な趣味で書いているものですから歴史的間違いはご容赦ください。(ご指摘はありがたくいただきます。)

この列伝、アグリッパから始まりハンニバル、ゴンズイさんと続いてまいりました。正直、僕としても「さー次は誰を書こうかな~」と思ってたんですよね。ユリウス・カエサルは最終回に書くとして、そのほか、マルクス・アントニウス、グラックス兄弟、、、といろいろ思い浮かぶんですが。

そこでふと思いついた人物を書きはじめたところ、さぁ、これが。その人にまつわるある女性のことだけでかなり長くなってしまいました。

ということで今回はその女性について。クレオパトラ伝以来の女性列伝。

その人の名はアグリッピナ。

(ちなみにこの画像、wikipediaから取ってきたんですが後ろに写り込んでいるのはアウグストゥスの全身像。いいアングルですね)

名前で既にお気づきの方もいらっしゃるかも知れません。彼女は初代ローマ皇帝アウグストゥスの忠実なる右腕であったアグリッパの孫娘です。

※当時、女性の名前は家名の女性形をつける(ユリウス家の女であればユリア、アントニウス家であればアントニア)のが一般だったため、母と娘で名前が一緒、という場合も多いです。そのため、後世では区別するために母に「大」、娘に「小」を冠することがあります。小アグリッピナの母は大アグリッピナ(アグリッパの娘)。

彼女の血統の良さはユリウス・カエサルを祖とするローマ帝国当初の皇帝血統であるユリウス・クラウディウス朝で一段と輝きを誇っています。

まず彼女の母、大アグリッピナは忠臣アグリッパとユリアの娘。ユリアとはアウグストゥスの娘。父は神后リウィアの孫、ゲルマニクス。ゲルマン地方の征伐で名を上げた名司令官です。大アグリッピナとゲルマニクスが授かった一男二女のうち一人が、今回の主役、小アグリッピナ、です。面倒なので以後、アグリッピナで通します。

簡単に言ってしまうとアグリッピナはローマ帝国初代皇帝アウグストゥスのひ孫であり、アウグストゥスの片腕アグリッパの孫、ということになります。

やはり血筋の成すものか小さな頃からずいぶんと聡明だったと伝えられています。

13歳のとき、彼女は結婚します。相手は、遠いとは言え帝位継承候補の一人。この男には名前がありますが、長いので割愛。ただ、その人の評判だけは記しておく必要があるでしょう。

アグリッピナの夫はこのような男性だったと伝えられています。
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自分が飲むだけの酒が用意できないという理由だけで自分の奴隷を殺した。人形で遊んでいた子供を馬でわざと踏み付けた。彼を批判した者の片目をくり抜いた。自分の浪費を金持ちに肩代わりさせた。またプラエトル職にある時、戦車競技の賞金をだまし取ったと伝えられる。また片っ端から女性に手をつけていたとも言う。
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まるで、、、いや何でもありません。

名門に育った彼女の夫はならず者。この結婚生活が彼女の心の闇を広げたのかも知れません。

更に彼女を幸福としなかった理由のひとつが母(大アグリッピナ)の処遇。母は当時の皇帝ティベリウスに疎まれ流罪、そして死刑となります。

浮気と暴力に明け暮れる夫と母の死に接し、アグリッピナの結婚生活は決して幸せなものではありませんでした。ただ、ひとつの幸せとして彼女は男子を産みます。名をルキウス・ドミティウス・アエノバルブス。

息子が生まれた年に、母を殺した皇帝ティベリウスは死去。後を継いだのは彼女の弟、暗君カリグラ。

実の兄弟がローマ帝国の第一人者となり、もともと聡明な彼女、皇帝の姉として権力を振るいます。

ここである醜聞がローマに広がります。それは皇帝カリグラと妹、ドルシッラ、アグリッピナの近親相姦。確かにカリグラは2人の妹を重んじました。通常であれば妻を座らせる位置に妹たちを座らせたり。醜聞は本当だったのか?一説には当時、上流階級の間では政敵を陥れるために近親相姦の噂を流す、ということもあったそうです。当時、近親相姦は罪であり、見つかれば流罪でした。彼女の権力を妬んだ誰かが彼女を陥れるために噂を流した、ということも否定は出来ません。しかしもはや真実は歴史の深い闇の中です。

彼女はその罪に問われることはありませんでした。ただ、カリグラが皇帝権力を悪用しだすとともに兄との関係は悪化し、流罪を命じられローマを離れることとなります。ローマから離れた土地で暮らしている途中、彼女の夫は死に、彼女は未亡人になります。

西暦41年にカリグラが近衛隊長カシウス・ケレアの剣により殺されると、彼女は罪を許されローマに帰還。


息子と共にローマに帰還し、久々にローマの中心街、フォロ・ロマーノ(当時、ローマの中心街)の前に立った彼女の胸に去来した思いはなんだったか。

彼女の人生は常に「皇帝」に翻弄されていました。母は皇帝ティベリウスに殺され、彼女自身、弟である皇帝カリグラに流罪にされ。そこで彼女は誓います。「皇帝の座を手に入れる」と。残念ながら彼女は女、皇帝になることは出来ません。彼女の希望はひとつ、小さいながらも彼女の手をしっかりと握る息子です。

ここから彼女の人生の目的は「皇帝の母になること」の一点に集中します。ここから彼女の謀略の人生が幕を開けます。

まず彼女に必要なのは活動資金。そのために彼女は2度目の結婚をします。相手は年老いた元政治家。年齢は関係ありません。彼女が欲しかったのは彼の遺産なのですから。彼女の思惑はかなえられます。夫は数年後死去、多額の遺産は彼女の手へ。

更に、都合の良いことに当時の皇帝はクラウディウス。慎重で有能だったが故に市民の指示と自分の意志を両立させたアウグストゥス、慎重で有能だったが市民からは嫌われたティベリウス、慎重でも有能でもなかったが自分の意志どころかわがままだけは通したカリグラに比べ、クラウディウスは自分の意志というものとは無縁な男でした。更にはこのとき、クラウディウスの妻は死亡したばかり。

アグリッピナが求めて止まない「皇帝の母」のための第一歩、「皇帝の妻」は空位だったのです。

クラウディウスはアグリッピナの父、ゲルマニクスの兄弟です。つまり彼女にとっては「叔父」ということになります。しかし彼女にとってそれは気にすることではありません。彼女はクラウディウスの妻になりたいわけではなく皇帝の妻になりたいだけ、更に言えば皇帝の母になりたいだけなのですから。

クラウディウスの政務を一手に引き受けていた官僚に前夫の遺産をつかませ、本来であればローマ帝国の法律に反する親戚同士の結婚を認めさせます。

アウグストゥスの築き上げた「血統」による皇帝システムはここに極まります。

こうして、彼女は彼女の野望のための階段をひとつ上ります。



…to be continued...
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2 コメント

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Unknown (ema)
2009-05-09 23:38:31
すごいワクワクしてま~~♪
いい人を取り上げてくれたって感じです。
更新楽しみにしています。
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Unknown (show)
2009-05-10 20:02:45
emaさん

コメントありがとうございます。内輪以外で楽しみにしてくれてる方がいらっしゃるとは感動です。
次で終わりますけどアグリッピナは次の列伝の影の主役なのでお楽しみに。息子が誰かはご存知でもネタバレになっちゃうので内密に…
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