アグリッピナが結婚した相手はローマ帝国第四代皇帝クラウディウス。
名司令官ゲルマニクスの弟という血統ながら、50歳になるまで彼の名は何処にも届いていませんでした。生まれつき足が悪く、また演説も下手で、体裁が上がらないため多くの軍人、政治家を排出したユリウス・クラウディウス家の中では疎まれ、単なる歴史家として生きてきました。
前皇帝カリグラがクーデターにより殺されることがなければ歴史の表舞台に立つことはなかったでしょう。
そして人物評というものはスポットライトを浴びてみなければわからないものです。
風采に何一つ文句のつけようのないカリグラが暗君として暗殺されたのと反対に、風采の上がらないクラウディウスは人々が思ったよりも善政を行います。ただ、一点、彼には欠点がありました。
それは家族に一切関心を払わなかったこと。
いや、関心を払わなかった、というのは間違いなのかも知れません。今まで表舞台に立たずただ自分の好きな歴史だけを研究してきたクラウディウスにとって『皇帝』という役職が重すぎただけかも知れません。
蛮族の侵入、元老院とのやり取り、市民の人気取り、、、その他様々な職務をこなすのに精一杯で自分の家族のことを慮る余裕が彼にはなかっただけなのかも知れません。
家庭を顧みない夫に対して妻は何をするか。
多くは無理難題的な要望を押し付けます。
そしてその要望に対して夫は何をするか。
夫クラウディウスは妻と話すのも面倒になり、その要望をそのまま受け入れます。
皇后アグリッピナが夫に押し付けた無理難題のひとつが自分に「アウグスタ」の称号を送ること。この称号は皇帝「アウグストゥス」と同じくらい価値のあるものですが今まで生きた女性に送られることはありませんでした。多くは皇后死後、神として奉る名として贈られてきたものです。
それから自分の子を皇帝にするために側近になるべき人物を呼び戻させます。その代表的な人物がセネカ。
当時のローマでは超一流の哲学者、詩人であり更には政治家。悪帝カリグラとの対立によりエジプトへと流されていた彼をアグリッピナは夫クラウディウスに依頼しローマへと帰還させ、自分の子の家庭教師にします。
くわえて彼女が行ったのは邪魔者の排除。自分の子を皇帝にするためには邪魔だったのがクラウディウスと前妻の間の子であるブリタンニクス。本来であれば現皇帝の実子ですから皇帝継承順で言えば彼が第一位のはず。しかしアグリッピナは彼を策略により孤立させます。
このような謀略を打ち続け、皇帝家内でアグリッピナと彼女の子の存在は大きくなっていきます。
そして54年、皇帝クラウディウスは食事中に口にしたキノコの毒が元でこの世を去ります。
このキノコの毒もアグリッピナの策略だ、という説が有力ですが今となっては真実は歴史の闇の中。確かなのは皇帝の座への道は順調にアグリッピナの息子の前にある、ということ。
息子の名はルキウス・ドミティウス・アエノバルブス。
しかし彼はクラウディウスの養子になって以降、養父の名を継ぎ、改名していました。
名を、ネロ・クラウディウス・カエサル・ドルースス。
ここにローマ帝国第五代皇帝ネロが誕生したのです。
(アグリッピナとネロが彫られたコイン)
<ネロ伝に続く>
名司令官ゲルマニクスの弟という血統ながら、50歳になるまで彼の名は何処にも届いていませんでした。生まれつき足が悪く、また演説も下手で、体裁が上がらないため多くの軍人、政治家を排出したユリウス・クラウディウス家の中では疎まれ、単なる歴史家として生きてきました。
前皇帝カリグラがクーデターにより殺されることがなければ歴史の表舞台に立つことはなかったでしょう。
そして人物評というものはスポットライトを浴びてみなければわからないものです。
風采に何一つ文句のつけようのないカリグラが暗君として暗殺されたのと反対に、風采の上がらないクラウディウスは人々が思ったよりも善政を行います。ただ、一点、彼には欠点がありました。
それは家族に一切関心を払わなかったこと。
いや、関心を払わなかった、というのは間違いなのかも知れません。今まで表舞台に立たずただ自分の好きな歴史だけを研究してきたクラウディウスにとって『皇帝』という役職が重すぎただけかも知れません。
蛮族の侵入、元老院とのやり取り、市民の人気取り、、、その他様々な職務をこなすのに精一杯で自分の家族のことを慮る余裕が彼にはなかっただけなのかも知れません。
家庭を顧みない夫に対して妻は何をするか。
多くは無理難題的な要望を押し付けます。
そしてその要望に対して夫は何をするか。
夫クラウディウスは妻と話すのも面倒になり、その要望をそのまま受け入れます。
皇后アグリッピナが夫に押し付けた無理難題のひとつが自分に「アウグスタ」の称号を送ること。この称号は皇帝「アウグストゥス」と同じくらい価値のあるものですが今まで生きた女性に送られることはありませんでした。多くは皇后死後、神として奉る名として贈られてきたものです。
それから自分の子を皇帝にするために側近になるべき人物を呼び戻させます。その代表的な人物がセネカ。
当時のローマでは超一流の哲学者、詩人であり更には政治家。悪帝カリグラとの対立によりエジプトへと流されていた彼をアグリッピナは夫クラウディウスに依頼しローマへと帰還させ、自分の子の家庭教師にします。
くわえて彼女が行ったのは邪魔者の排除。自分の子を皇帝にするためには邪魔だったのがクラウディウスと前妻の間の子であるブリタンニクス。本来であれば現皇帝の実子ですから皇帝継承順で言えば彼が第一位のはず。しかしアグリッピナは彼を策略により孤立させます。
このような謀略を打ち続け、皇帝家内でアグリッピナと彼女の子の存在は大きくなっていきます。
そして54年、皇帝クラウディウスは食事中に口にしたキノコの毒が元でこの世を去ります。
このキノコの毒もアグリッピナの策略だ、という説が有力ですが今となっては真実は歴史の闇の中。確かなのは皇帝の座への道は順調にアグリッピナの息子の前にある、ということ。
息子の名はルキウス・ドミティウス・アエノバルブス。
しかし彼はクラウディウスの養子になって以降、養父の名を継ぎ、改名していました。
名を、ネロ・クラウディウス・カエサル・ドルースス。
ここにローマ帝国第五代皇帝ネロが誕生したのです。
(アグリッピナとネロが彫られたコイン)
<ネロ伝に続く>