漂着の浜辺から

囁きのような呟き。

みんなの少年探偵団

2015年06月28日 | 読書録


 図書館で棚を見ていて、ふと目についたのが「みんなの少年探偵団」と名されたシリーズ。ポプラ社から出ている単行本で、ご丁寧に、同社から出ているロングセラーの江戸川乱歩「少年探偵団」シリーズの装丁を模している。手にとってパラパラとめくってみると、数人の作家による、少年探偵団もののパスティーシュらしいということがわかった。二十面相もののパスティーシュは、K-20のタイトルで映画化された、北村想の「怪人二十面相・伝」など、いくつかあるが、これは江戸川乱歩生誕120年記念として、ポプラ社が企画したもののようだ。
 「みんなの少年探偵団」シリーズは、短編のアンソロジーが一冊と、長編が三冊の、全四冊。そのうち、ぼくは以下の長編三冊を読んだ。


「少年探偵」 小路幸也著
みんなの少年探偵団シリーズ ポプラ社刊

「全員少年探偵団」 藤谷治著
みんなの少年探偵団シリーズ ポプラ社刊

「恐怖の緑魔帝王」 芦原すなお著
みんなの少年探偵団シリーズ ポプラ社刊


 最初に読んだのが、「少年探偵」。他の二冊が、どちらかといえばパロディというか、お遊びに近い作風の作品であるのに対し、これはやや肌合いが違って、少しオリジナルの「明智もの」に踏み込んだものになっている。少年探偵団の頃よりずっと後の時代の物語であり、そのまま正統な続編として考えることも可能な設定になっているのだ。しかも、最後に明かされる二十面相の正体は因果という他はなく、この作品の続編も続けて書き続けることもできそうである。作中、小林少年(この小林少年は、あの小林少年とは別)を導く謎の人物として、結局正体は明かされなかったけれども、おそらくは白洲次郎らしき人物が登場するあたりも、凝っている。結果として、これが一番面白くて、残り二冊の長編にも手を出したようなものだった。まあ、原典に踏み込み過ぎているあたり、かなり賛否ありそうな作品ではあるけれど(特に文代さんの扱いなどには反発も多そうだが、原典で途中から全く出てこなくなったたことに対する真実の事情とも取れる)、個人的には”ネクスト・ジェネレ―ション”の小林少年対怪人二十面相の戦いも、ちょっと読んでみたい気もした。
 残りの二冊に関しては、さらりと。
 「全員少年探偵団」は、一種のパラレルワールドストーリーといっていい。呪われた宝石をめぐる物語だが、舞台設定は現代であり、携帯電話なども普通に出てくるので、どうしても違和感がある。
 「恐怖の緑魔帝王」は、パスティーシュというよりは、パロディと言った方がよさそうな作品だった。

久々の更新

2015年06月17日 | 雑記
 気がつくと、前回の更新からひと月以上経ってしまっていた。書くことがなかったわけでも、本を読まなかったわけでもないのだけれど、ブログの更新というものも、一度やらなくなると、つい億劫になってしまう。ただ、こうして何も書かないままブログを放置していた間にも、ぼくの大嫌いな安倍首相の率いる現政権は、安全保障関連法案だけではなく、とんでもない法案を次から次へと打ち出してきている。沈みゆく船の船長が、後先も考えずに機器も人も色々と投げ捨てて、自分たちクルーが少しでも長く浮かんでいようとしているような感じ。ずっと未来、日本という国を地図から消してしまった原因を作った総理として、歴史に名前を残すようなことにならなければいいのだけれど。まあ、日本という国名がなくなったところで、人々が安全に暮らせる場所であり続けるのなら、別にいいのかもしれないけれども、なかなかそうもゆかないでしょうね。
 この間に読んだ小説本を、とりあえずタイトルだけ並べてみる。忘れているタイトルもあるので(苦笑)、これで全部ではないのだけれど。感想は、いずれ改めて。


「ニルヤの島」 柴田勝家著
ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション 早川書房刊


「少年探偵」 小路幸也著
みんなの少年探偵団シリーズ ポプラ社刊


「全員少年探偵団」 藤谷治著
みんなの少年探偵団シリーズ ポプラ社刊


「恐怖の緑魔帝王」 芦原すなお著
みんなの少年探偵団シリーズ ポプラ社刊


「営繕かるかや怪異譚」 小野不由美著 角川書店刊


「シャーロック・ホームズたちの冒険」 田中啓文著 東京創元社刊


「壺の町」 望月諒子著 光文社刊


「クロノス・ジョウンターの伝説」  梶尾真治著
ソノラマ文庫 朝日ソノラマ刊


「あなたは誰?」 アンナ・カヴァン著 佐田千織訳 文遊社刊


「ストレンジガールは甘い手のひらの上で踊る」 森田季節著
MF文庫J KADOKAWA/メディアファクトリー刊


「プロジェクトぴあの」 山本弘著 PHP研究所刊


「グミ・チョコレート・パイン」 大槻ケンヂ著 
角川文庫 角川書店刊