つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

ふぅむ

2005-12-24 15:38:42 | ミステリ
さて、ちょっと探偵ものっぽいかなの第389回は、

タイトル:月曜日の水玉模様
著者:加納朋子
出版社:集英社文庫

であります。

主人公の片桐陶子は、丸の内のある中小企業に勤めるOLで、いつもの通勤電車の中で、信用取引のリサーチ会社の調査員である萩広海と知り合う。

最初は、ただ単に満員電車で曜日ごとに決まったネクタイをして、船をこいでいるだけの青年だったが、このところよく噂になっているビル荒らしの事件を機に、今度は会社組織というものの中での日常の中で起きる事件を解決する相手役になる。

キャラとしては、探偵役の陶子は頭の回転が早く、しっかりした感じで、逆に助手の立場になる萩は、いつも何がうれしいのかよくわからないくらいにこにこしていて、どこか抜けた、憎めないタイプになっている。

ストーリーも、変わらない日常のミステリと言った趣は変わらないながらも、「ななつのこ」などの、ほんとうに見落としがちな、ほほえましいものではなく、ビル荒らしや製薬会社の不祥事、荷物を含めたトラックまるまるの窃盗など、事件性が強いものになっている。
裏表紙の解説に「名探偵と助手」と言う文句があるように、「事件を解き明かす」という要素が強い。

もっとも、ふつうの探偵ものみたいに、大々的に推理を披露し、事件を解決する、というものではない。
あくまで「解き明かす」ものであって、「解決」するものでないところが、やっぱりミステリを読まない私みたいなのでも、いいなぁと思えるんだけど。

また、事件を解き明かすと言うものばかりではなく、両親がおらず、祖母に育てられたと言う境遇を持つ陶子の母親にまつわる話や、それに関連する、陶子と入れ替わりに退職した先輩との話とかもある。
事件の性質や、こういう話などがあって、この短編連作はどこか苦いものを含んだ、しっとりとした話になっている。

ただ、いままでのとこれまた違った雰囲気の話で、特に事件性が強いミステリになっているので、好みとしては他のよりは好きじゃない、かな。
まぁでも、かな、くらいだし、相変わらずすらすらと読ませてもらえるのは、やっぱりうまいなぁ、と思う。
ラストの陶子の姿も、何となくほっとするような感じがあっていいんだよね。

なんのかんの言っても、軽~く及第点を超えてくれるところは、さすだなんだけどね。