つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

何曜日がお好き?

2005-06-06 20:10:44 | ミステリ
さて、おおっ半年過ぎてるっ、な第188回は、

タイトル:木曜組曲
著者:恩田陸
文庫名:徳間文庫

であります。

貴方は一週間の中で何曜日が好きですか?
好きなTV番組の日でもいいし、何かの集まりがある日でもいいし、特別な曜日ってありませんか? 私はないです。(笑)

というわけで、奥田陸の木曜組曲です。
映画の方は見ていないのですが、カバー折り返しの写真を見て、あ、上手いなと思ってしまいました。なので、そちらも機会があったら見てみたいと思います。

耽美派小説の巨匠、重松時子が自殺して四年。
時子と旧交のあった四人の女性が今年も、うぐいす館にやってくる。
絵里子、尚美、つかさ、静子、それぞれ別の形で出版界に関わる女性達。
時子の編集者だった綾部えい子は食事を作りつつ彼女たちを待つ。
だが、彼女の心の中には何かが引っかかっていた、四年前の何かが――。

超常現象なしのミステリです。
五人の女性はそれぞれ時子に関することで何かを抱えています。
序盤に起こる事件によってくすぶっていた心に火がつき、故人を偲ぶ和やかな宴は、いつしか各人の想いをぶちまける場へと変化していきます。

時子は本当に自殺したのか?
殺したのだとしたら誰が、何の目的で?
それぞれが隠していることとは一体何か?

ミステリの定石である、謎の解明→新たな謎の提示、を踏まえていますが、厳密に言うとこの作品のメインは謎解きではなく、六人の女性の姿を描くことにあります。
文芸に関するスタンス、過去話、食事の趣味など、会話と心理描写を上手いこと絡めて、キャラクターを描いていると思います。個人的にはつかさのキャラがちょっと薄かった気がするのですが、他のメンツが濃いのである意味仕方のないことかも知れません。

ちなみに、皆の回想で登場する時子さん、物凄い俗物です。
なべて、芸術の敵とは日常だと申しますが、それを地でいってるような人。
しかし愛情と憎悪が表裏一体であるように、登場人物達もそんな彼女を愛し、憎んだのです。その意味では非常に美しいキャラと言えるでしょう。

ちょっと日常を忘れて、気心知れた友達とお食事、って気分で読むと楽しいと思います。特に女性は、あるあるこういう話、と頷くシーンに出会えるかも知れません。

女性五人の暴露大会にミステリを絡めた五人舞台。
恩田劇場に通い慣れた人は展開が読めちゃうかも知れませんがそれはそれ。
女達の華麗な戦いをご堪能下さい。(火サスじゃないってば)



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