迷宮映画館

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湖のほとりで

2009年12月08日 | ま行 外国映画
イタリアの田舎・・・。みながお互いに住んでいる人のことをわかっているような小さなコミュニティの中で、若い女性の死体が見つかる。若く、美しく、前途洋洋、彼女を嫌うものなどいないと思われた女性の全裸の死体。

死体が見つかるちょっと前に起こった少女の行方不明事件で、この村に来ていた警部が、この事件の捜査にあたることになった。

小さな村だ。ショッキングな事件だが、きっと犯人はすぐに見つかるだろう・・・。これだけ若くて、綺麗な女性だったのだ。彼女の周りの男を見張れば、すぐに割れるだろう、と。

しかし、事件は意外な展開を見せる。彼女は綺麗なまま。そして、不治の病で、余命はわずかだった。彼女は、死を拒否しなかった。静かに死を受け入れた。一体、誰が崇高な彼女の命を奪ったのか・・・。

事件を調べて行くうちに、彼女の短い人生から、さまざまなことがあぶり出されてくる。面倒を見ていた幼児の死、彼女だけを溺愛していた父の存在、突然やめたアイスホッケー、自称彼氏は、彼女のことを何も知らなかった・・・・。

先の見えない事件は、先の見えない彼女の人生のように、混迷していく。警部の人生も先が見えなかった。ごく普通に見えていながら、未来に希望の見えない人生。

不条理で、理不尽で、救いはあるのか・・・。人の命のはかなさと、人生の辛さをまざまざと思い知らされる。でも、目の前に広がる風景の何と美しいことか。

と、一人の女性の死と、その周りの人生、彼女の死がもたらした哀しい真実・・・。そして、狂言回し的に、事件を追う警部の、これまた壮絶な人生・・・・。うーーん、狭い設定ながら、あまりに多くのことを盛り込み過ぎて、舌足らずになってしまった感が否めず。

警部は、たぶんアルツハイマーになってしまった妻の変わりように心を痛めてるが、妻は既に自分の娘のこともわからなくなっている。そのことを、ただおろおろとどうしたらいいかわからない父親。

有能な刑事らしいが、やってることがどうにも納得いかない。すぐさま真犯人に辿りつかないが、それまでの道のりもなんかなあ。

結局、犯人を見つけ出すクライム・サスペンスなのだが、ずかずかと人の心に入り込み、初動捜査のお粗末さを遠回しに描いてるように思えて、なんだか事件が解決しても、どうにもしゃっきりしない。

このしゃっきりしなさが映画の見どころなのかもしれないが、やけにむなしさだけが残ってしまった・・・・。少々、期待を抱いて見てしまったもんで、勝手に自分がつくりあげていたものとのギャップが大きかった。

◎◎◎

「湖のほとりで」

監督 アンドレア・モライヨーリ
出演 トニ・セルヴィッロ ネッロ・マーシャ マルコ・バリアーニ ジュリア・ミケリーニ ファウスト・マリア・シャラッパ デニス・ファゾーロ フランコ・ラヴェーラ サラ・ダマリオ


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8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
確かに (miyu)
2009-12-10 20:10:52
本国での評価があまりに高く期待値が少し
上がり過ぎてしまった感がありましたよね。
なんか拍子抜けするようなサスペンスとしては
物足りなささえある映画なのですが、
なんだかとっても上手いなぁ~とは思いましたです。
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う~ん (KLY)
2009-12-10 23:33:46
個人的には好みじゃない作品ですねぇ。
miyuさんではないですが、『ニューシネマパラダイス』や『ライフ・イズ・ビューティフル』とはとてもじゃないけど比較の対象にすらならないとすら思ってます。何より現時点で殆ど記憶にありません。(笑)
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湖の静謐感が印象に残る (cochi)
2009-12-10 23:43:28
こんばんは、sakuraiさん。
ボクもかなり期待して行ったんですが、ちょっとはぐらかされた感じでした。

出だしのサスペンス風は「おおっ」という勢いでしたが、少しずつ、迷宮感が漂いだれてきます。好感の持てそうに無い人物たちの登場で一層世界観が混迷しました。

湖の風景だけが、とても美しく印象に残りました。北欧の世界のようで、東山魁夷の作品にもあるような静謐感漂う空気です。なるほど、原作が北の方の作家さんなんですね。
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美しい死体と美しい風景 (KON)
2009-12-11 13:43:11
私は懐かしの不条理ドラマ「ツイン・ピークス」をまず思い出しました。湖のほとりに横たわる人気者美少女の死体と、それぞれに秘密を抱えた周囲の人々、全てを包み込むような静かな風景。映像に頼らず、事件の真相は刑事さんと人々の会話だけで物語っていましたが、私としてはもう少し演出というか補足がほしかったなあ。そんなことを思いながら美しい景色に心洗われ、エンドロールが終わると同時にこてっと眠りに落ちてしまいました・・。
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>miyuさま (sakurai)
2009-12-12 22:52:54
絵はきれいだし、物語の運び方もそれなりによかったですが、10年に一度の傑作!!とまでは行かないような気がしました。
そんなこと言われると、見る方も見方が変わってきますからね。
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>KLYさま (sakurai)
2009-12-12 22:57:50
ときが経っても、印象深い作品は鮮烈に残りますが、強烈に残る!!という風ではなかったですね。
イタリアっぽくなかったのが、本国では受けたんでしょうかね。
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>cochiさま (sakurai)
2009-12-12 23:01:09
あれだけ宣伝で言われたら、やはり結構な期待をしますよね。逆に何にも言われなかったら、見るかどうか・・・謎ですが。
犯人っぽいのは、つぎつぎとあげられていきますが、名推理というのでもなかったし・・。
いかに人が、それぞれ先の見えない何かを背負ってるんだ、ということがテーマだったかと思うのですが、それも焦点がぼけてしまった感ありでした。
湖の絵は、とっても素敵だったんですが。
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>KONさま (sakurai)
2009-12-12 23:13:25
絵は本当に美しかったですね。
イタリアとは思えなかった。やっぱ、北欧風な感じでした。
ローラ・パーマーの死体は、あれほど美しいものではありませんでしたが、懐かしいですね。
あの頃、むさぼるように見ましたよ。
「死を受け入れた・・・」という言葉と、彼女の死の真相と、少々納得がいかなかったかなあ。
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