迷宮映画館

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アメリカン・ギャングスター

2008年01月25日 | あ行 外国映画
試写会にて鑑賞。鳴り物入りのこの映画。二大スターに、監督はリドリー・スコット。いやがおうにも期待は高まるが、さて中身のほうは・・・・。

実在の麻薬王、フランク・ルーカスの半生をおったものだが、まずフランク・ルーカスという人間をさっぱり知らなかった。そこだ。どこだ?・・・
1970年代の手前。ベトナム戦争の真っ只中で、やっと黒人の公民権が定着したころ。

いままでずっと、差別し、冷遇し、自分たちと肩を並べる存在になど、なれるはずがない。いや、なったとしても目にも入れたくない。新手の麻薬がじわじわと広がり、誰が元締めなんだと、捜査局が探りを入れてたとき、黒人なんかにやれるわけない、という黒人の立場が、マークを逃れ、彼をあすこまで大きくしていったのだ。

麻薬を扱うのは、100年の歴史を誇る<イタリアン・マフィア>か、<フレンチ・コネクション>でなければならない。別にそんなことは誰が決めたわけでもないのだが、それが自然で、そうあるべきだった。盲点をつくのだが、非常に興味深い。

そこに参入してきた黒人のフランク・ルーカス。売る品物は最高の品質を求め、値段はより安く。商売の鉄則だ。よい品物を仕入れるためには、自分の目で品質を確かめ、相手の信頼を得る。徹底した管理のもと、ルートを確立し、商品の品質を保証する。そして、満足いく品物を買い手に与える。

まさに理想の商売。これぞ、商売人の鑑のような商いなのだが、問題はその商品。【クスリ】だ。買う人がいるから、売る人がいる。ほしいと思うから売るんだ。そう売る人はいう。でも、これは打っては、いや、売ってはいけないもの。でも、莫大な利益を生み、人を壊していく。

この商売の才能を、別のものに生かしてくれたら、何かひとかどの者になったかもしれないが、いかんせん、莫大な利益は生まなかっただろう。

映画は、60年代末の様子が見事にあらわされる。警察すらも、賄賂が横行し、取り上げた麻薬を薄めて、また売り飛ばすなんていう非道なことを、普通にしてきたことがよーくわかる。真面目な方が馬鹿を見る。でも、馬鹿を通した男がいた。それが、特別麻薬捜査局として真を貫いたリッチー。



ここにもさまざまな確執があって、リッチーはちょっと田舎のニュージャージーの刑事。ニュージャージーの警察も当たり前のように腐ってはいるが、マンハッタンの警察に見下されている。着るものもちょっとダサくて、車も比較にならないぼろ。そこでの刑事と言うのがポイントだ。

一方、小さいころから辛酸をなめ、貧しい生活を当然のように強いられ、実力ある黒人ギャングのバンピーのもとで、ありとあらゆることをしてきた男、フランク。彼が手に入れたビジネスの才能は、見事に紳士だ。



母に「お前が牧師になったら、弟たちもみんな牧師になったろう・・・」と、いかに周りの人間たちが長男のフランクを信頼し、尊敬しているかが言葉に出るのだが、母の気持ちが痛いほど伝わる。

時代と人種と金と力。ちょっと複雑なので、はじめはこんがらがりそうだが、のし上がる前の二人の様相よりも、とにかく見ごたえがあるのは、後半の展開。157分のうち、前半をちょっと気を抜いてごらんになって、後半一気に駆け抜ける。この見方をお勧めする。

アリの試合を見に来たサミー・ディヴィスJr.のそっくりさんがうれしくなった。

◎◎◎◎

『アメリカン・ギャングスター』

監督 リドリー・スコット
出演 デンゼル・ワシントン ラッセル・クロウ キウェテル・イジョフォー キューバ・グッディングJr ジョシュ・ブローリン テッド・レヴィン アーマンド・アサンテ ジョン・オーティス ジョン・ホークス RZA ルビー・ディー コモン ライマリ・ナダル


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21 コメント

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そっか (miyu)
2008-02-02 23:11:48
後半に気合を入れれば良かったのですね。
あたし、前半の集中が後半まで持たなかったです(;・∀・)
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>miyuさま (sakurai)
2008-02-04 08:51:02
最初の30分は、思いきって切ってもよかったくらいではなかったかと思います。
じわじわとカタルシスに持っていくのはさすがにうまかったですがね。
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こんにちは! (由香)
2008-02-05 18:55:06
フランクとリッチー、2人の男の対比のさせ方が上手く面白かったです。
あまり長さを感じずに、最後まで惹き込まれました~
ただ、『この商売の才能を、別のものに生かしてくれたら』のフランクが、デンゼルが演じたせいかカッコ良く見え過ぎたのはどうかなぁ~と思いました。
最後に、腐敗した警察たちの末路はスカッと見せてくれましたが、どこかフランクの罪は棚に上がっていたように思えたし(汗)
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>由香さま (sakurai)
2008-02-05 21:08:29
そうでしたね。
かたや、紳士然とした麻薬王。
かたや、正義を貫くだらしなさ系おっさん。
実際のところはどうなのか、見たいところですが、時代のさすがの手腕で描かれてましたね。
フランクの麻薬のせいで、どんだけの人が壊れていったのか、しっかと自覚してもらいたもんです。
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サミー~ (cyaz)
2008-02-08 12:31:43
sakuraiさん、こんにちは^^
TB&コメント、ありがとうございましたm(__)m
デンゼルが今まで出演してきた作品の集大成にラッセルが花をそえたような作品でした^^
エンドロール直後のあのカットをちゃんとわかるように説明してくれれば、2008年の洋画の監督賞を差し上げたい気持ち(笑) 但しあと11ヶ月ありますが(汗)
>アリの試合を見に来たサミー・ディヴィスJr.のそっくりさんがうれしくなった
しっかり見てましたね(笑)? さすがです。 最近サミーの話題って殆ど出ませんものね。 リドリー、あの年になってもサービス精神旺盛(笑)
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>cyazさま (sakurai)
2008-02-08 12:38:16
デンゼル・ワシントン、、、うまいですよねえ。
初見は『グローリー』だったかなあ。
本当にきれいな黒人さんだと思ってみておりましたが、その後も素晴らしい。
ただ、映画館では、入らない役者の筆頭なのだそうですよ。玄人受けしちゃうんでしょうかね。
ラストは・・・言わないでおきます。

「うーん、ダイナマイト」・・・とは言わないですよね。
昭和は遠くになりにけりです。
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Unknown (風情♪)
2008-02-11 14:41:01
こんにちは♪

最後まで目が放せずでオモシロい作品であ
ったことに間違いはないんですが、途中ビ
シっと決まるものなかった気がしないでも
ないんで、いまいち物足りなさを感じました。
2人が最後で初めて顔を合わせるところはシ
ビれさせられたし、独自の麻薬ルートを構築
していく過程はかなり興味深かったですよね♪
(゜▽゜)v
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>風情♪さま (sakurai)
2008-02-11 17:51:09
重層的に作る!という姿勢で臨んだせいか、丁寧に行きすぎたかなと。
まあ、それでも十分見ごたえありましたが。
新規参入のやり方をきちんと行ってましたね。商売は、誠実さが一番です。
問題は扱う商品でしたが・・・。
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御返事が遅れスミマセン (hide)
2008-02-14 12:00:27
『映画と秋葉原と日記』のhideです
sakuraiさんコメント&TB有難うございます

派手さや強烈なバイオレンスだけが売り物の映画かな?と思ってたのですが。骨太で人間臭くて良かったですね。また、フランクの徹底した商社マン的感覚やポリシーの高さは凄かったです。

◎あの年代の画き方に付いても凄いらしいですね。モハメッド・アリなんかも凄く雰囲気出ていたと感じました
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>hideさま (sakurai)
2008-02-15 22:40:17
人間くささ!それものすごく感じました。
そこは兄リドリーですね。
モハメド・アリもそうですが、私は、サミー・ディビスJrがきになって、気になって・・。
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