のんびり主婦のPCライフ

黒柴「ころたん」の平凡な暮らしと、
散歩と読書の記録です。

ゴサインタン-神の座- / 篠田節子

2004-04-30 | 読書(~2005.09)
双葉社・1996.9.25

旧家の跡取である結木輝和は40歳独身。農家である家を守るために、同じような境遇の人たちと集団見合いに参加した。女性たちはネパールから来て工場で働いていた。輝和はその中のカルバナ・タミという若い女性と結婚した。日本語もまったくわからず、生活習慣の違う場所で彼女は「淑子」と呼ばれ、寝たきりの舅の世話をし、姑から厳しく家事を叩き込まれる。その後、淑子は「生き神様」という評判が立ち、そこから輝和の人生は目まぐるしく転落していく。果たして淑子は本当にそんな力を持っているのか。輝和は半信半疑ながら、淑子から離れらない。ゴサインタンとは、ネパールで「神が住むところ」といわれている山。第10回山本周五郎賞受賞作。

農家の後継ぎの息子が嫁不足を解消するために選んだ外国人女性。設定が波乱を予想させて興味深く読んだ。途中まではスムーズに入っていけたのだが、淑子が「神」となり、新興宗教まがいの生活を始めるあたりから、だんだんと理解に苦しんでしまった。輝和が全てを投げ打ってなぜそこまでのめり込めるのか、それは「愛」なのか何なのか、宗教を信仰していない私には難しい。ラストの清清しさはホッとできた。(04/04/30)


号泣する準備はできていた / 江國香織

2004-04-22 | 読書(~2005.09)
新潮社・2003.11.20

さまざまな立場の女性の体験した恋愛短編、12篇。。
◆前進、もしくは前進のように思われるもの  ◆じゃこじゃこのビスケット
◆熱帯夜  ◆煙草配りガール  ◆溝
◆こまつま  ◆洋一も来られればよかったのにね
◆住宅地  ◆どこでもない場所
◆手  ◆号泣する準備はできていた  ◆そこなう
帯は「濃密な恋と、絶望、そして優雅な立ち直り方」

直木賞受賞後に、図書館で予約してようやく手に入った1冊だったので、期待をこめて読んでみた。「直木賞」の基準とかを言い出したらきりがないのだけれど、やっぱり恋愛小説の短編っていうのは、私のもっとも苦手な部分だということを改めて確認した次第。文章のなめらかさは江國さんらしいといえば、その通りなのだが、登場する恋愛の悩みには、「もっと素直になればいいのに」とか「そんな男はさっさと捨てて、自分で生きろよ~」とかそんなふうにしか思えなくて、ちょっとイライラが募った。(04/04/22)


嗤う闇 / 乃南アサ

2004-04-17 | 読書(~2005.09)
新潮エンターテイメント倶楽部・2004.3.20

隅田川東署の巡査部長に昇進した音道貴子が活躍する短編集。
◆その夜の二人  アパートを経営する大家の妻が、隣接する自宅で血だらけで発見された。犯人は逮捕されたが、その動悸は・・・
◆残りの春  何ものかが自宅に侵入してくるという相談を受け捜査を開始した。当初、娘と別れた男の犯行かと思ったのだが・・・
◆木綿の部屋  音道と以前コンビを組んだ滝沢警部の娘から、滝沢にSOSが入った。夫が作った借金の取立て人が来るという。
◆嗤う闇  連続レイプ犯による事件が相次いだ。ある女性のところで反撃されて未遂に終わった犯人を捕まえたが・・・

事件といえばつい想像するは「殺人事件」だが、今回は身近におこりそうな事件ばかりだった。音道貴子シリーズは同性として楽しく読める。もっともっと活躍して欲しい。今度は長編で・・・(04/04/17)


裂けた瞳 / 高田 侑

2004-04-12 | 読書(~2005.09)
幻冬舎・2004.1.5

亮は幼いときからある発作に悩まされていた。それは突然の身体の異変と、他人の声が聞こえるという現象。その幻聴は年齢とともに幻覚に変化していた。大人になった亮は自分の秘密を隠して婿養子になった。妻の親の会社で働く亮が取引先の工場の経営者を訪ねると、そこで発作にみまわれた。経営者が殺され、逃げていく犯人を目撃する場面の映像が、亮の目に映った。同じころ、近所で頻発する動物の虐殺が続き、住民を不安にさせていた。亮は妻とひとり娘と不自由のない生活をしていたにもかかわらず、ふとしたことから会社のOL長谷川瞳と親密になる。どうやら彼女とは共通点があることを知り、癒されるのだが・・・ 「第4回ホラーサスペンス大賞」受賞作。

デビュー作で大賞受賞とは素晴らしい。が、感想としては可もなく不可もなく・・・ それは主人公の亮が嫌いなタイプなのが原因でしょう。妻や瞳に対する態度がいけない。動物の虐殺の場面も気持ちが萎えてしまう。いろいろなテーマ(特殊能力・親子関係・少年犯罪・動物虐待・家族愛)は詰め込まれているのだが、私との相性は悪かった。(04/04/12)


水底の森 / 柴田よしき

2004-04-07 | 読書(~2005.09)
集英社・2004.02.29

とあるアパートの一室から、顔をつぶされた死体が発見された。部屋にはエンドレステープでシャンソンが流れていた。その部屋の住人、高見健児、風子夫妻は姿を消していた。警察は二人の行方を追うが、夫の健児が死体となって発見される。犯人は、妻の風子か・・・ 風子を探すために、遠野は彼女の出生地から手掛かりをつかもうと故郷で話を聞くが、風子の歩んだ人生は、壮絶なものだった。次々とやって来る不幸から抜けられない、そんな女性だった。そして遠野にもまた、私生活上の苦悩があった。

ページをめくるのが楽しみな、面白い本だった。柴田よしき作品では一番好きかも知れない。風子のような、どうしても幸せになれない女性って、いるかも知れない。ひとつの不幸を振り払っても、また来てしまう不幸。なんだか読んでいて気の毒にも思えるけれど、立ち直るチャンスもなかったわけではないのだ。このストーリーの主な登場人物は、みんな心に深い傷を抱えている。「平凡」というのが、つくづく有難いことに思える。(04/04/07)


瑠璃の海 / 小池真理子

2004-04-04 | 読書(~2005.09)
集英社・2003.10.30

高速バスで最愛の夫を失った萌は、その傷がいえず、何にも手につかない日々を過ごしていた。また、同じバス事故で娘を失った父親・遊作もまた、失意の日々の中にいた。その二人が「被害者の会」で出会い、互いを思いやることからひとつの恋が生まれた。遊作は妻と離婚しているし、萌にも子供はいない。激しい恋の行方には問題がないかに見えたが・・・

美しいタイトルと小池真理子ときたら、これはもうどっぷりとした恋愛小説。読んではみたものの、最近、どうもこの手のジャンルには心が動きません。結末も予想通りだし、それが「究極の愛」とは思えないし、萌の性格が好きではないし、二人だけの愛の世界に共感できないし、自分に置き換えられないし・・・ と、いう訳で、大人の恋愛小説は苦手なことが再確認できた。(04/04/04)