のんびり主婦のPCライフ

黒柴「ころたん」の平凡な暮らしと、
散歩と読書の記録です。

サラマンダーの夜 / 久間十義

2004-03-28 | 読書(~2005.09)
角川書店・2004.2.5

池袋の繁華街にある雑居ビルで放火と思われる火事が起きた。犠牲者は、そのビルの風俗店で働くホステスや客、16人。東都タイムスの記者、美津濃まゆ子は、そこで働いていた女性たちの取材をすることになる。そこで、遺体の確認にきた一人の青年、島田と出会う。彼の婚約者陽子はその店で働いていて、火事の巻き込まれたらしい。偶然出会ったこの島田を通して、まゆ子は取材を進めていく。一方、警察では、火事のあった店の店長が殺されるという新たな事件も加わり、この火事の真相を、黒田と鳥居が追っていた。

冒頭部分から、過去に歌舞伎町で起きた火事を思い出してしまった。多くの犠牲者を出すこのような事件はなんともやりきれない。ストーリー的には、重要な位置にいる登場人物たちの行動が先に読めてしまったことが残念だった。もう少し、ラストあたりで驚かされると嬉しいのだけれど・・・(04/03/28)


ヨリックの饗宴 / 五條 瑛

2004-03-23 | 読書(~2005.09)
文藝春秋・2003.9.15

和久田の兄は妻に暴力を振るい、幼い息子を虐待したあげく、7年前に失踪した。和久田は兄を憎み、甥の裕之と姪のゆかりを溺愛していた。そんな和久田の前に、兄を探す複数の男女が現れる。どうやら失踪にからんで、兄は政治的に重要な何かに関係しているらしい。彼らの目的は「ヨリック」という人物と、その仲間が分散して持っているモノ。一方、秘密の保持のために選ばれた人々はハムレットの登場人物の名で呼ばれ、「ヨリック」が現れ、指示を出す日をひたすら待っていた。

謎だらけのストーリーなので、最後まで読めるかなと思ったが、和久田の心情に興味があり一気に読めた。が、政治という得体の知れない(?)相手のため、ややわかりづらい感じがした。ラストにむけて和久田の兄の思いも明かされるが、虐待する理由が納得できない。兄の妻の気持ちも中途半端で理解できないし、楽しめたわりには爽快感がなくて残念だった。(04/03/23)


日曜日たち / 吉田修一

2004-03-20 | 読書(~2005.09)
講談社・2003.8.29

◆日曜日のエレベーター  アルバイトをしながらどうにか暮らしている無気力な男。昔の彼女は医学生で未来を見据えていたが、男は今も昔も変わらない。
◆日曜日の被害者  友達が泥棒に入られたという。その泥棒は今度は自分を狙うのかも知れない。昔のある出来事が今になって・・・
◆日曜日の新郎たち  婚約者が事故死して立ち直れない青年と、彼を心配する妻に先立たれた父親の互いを思いやる切ない関係。
◆日曜日の運勢  いつも真剣に女性と付き合っているのに、なぜか女運が悪く、流されてばかりの男。
◆日曜日たち  ドメスティックバイオレンスで男から逃げた女は、世話になった「自立支援センター」で自分の人生を取り戻す。
この5つの短編は、ある幼い兄弟の登場によって、連作的にストーリーが進む。

どのストーリーの主人公も、寂しくてしんみりした人生を過ごしている。それでも人の関わり合い、思いやり、ちょっとした気配りが少しずつ自分を明るくしていくのだろう。読み終えたあとに、全編に出てくる苦しい境遇で生きる幼い兄弟が、どんなふうに生きていくのか、それを知りたくなってしまった。そちらにスポットを当てたものを読んでみたい。(04/03/20)


あそこの席 / 山田悠介

2004-03-17 | 読書(~2005.09)
文芸社・2003.11.15

とある高校のあるクラスの席。そこに座った人はみな不幸な運命をたどっていた。行方不明、自殺、精神病を患ってしまった人たちがいた席は今は空席となっている。その「あそこの席」に、親の転勤に伴い転校してきた瀬戸加奈。転校初日は楽しかったのだが、翌日から、いやがらせが続き、じわじわと恐怖が迫ってきた。新任教師市村も、噂を聞き心配していた。調べてみると、これまでその席に座った者にも同じ悩みをもっていたことがわかった。いったい誰が何の目的で「あそこの席」に座る者に執着するのか・・・。

初めて読んだまだ若い作家さんのホラーサスペンスなのだが、残念ながら、最初からいやがらせの犯人や影であやつる人物が見えてしまって残念。文章が簡単すぎて、読み手の想像を越えるストーリーになっていないのではないかと思った。もっともっと加害者の人物描写、心理状態、家族関係、そしてそこに隠された真実などを書いて欲しいのだが・・・(04/03/17)


図書館の神様 / 瀬尾まいこ

2004-03-13 | 読書(~2005.09)
マガジンハウス・2003.12.18

幼少時からバレーボールに熱中し期待されていた清(きよ)は、高校時代の部活の仲間の死によって、大好きなバレーボールをやめた。それから家を出て大学に通い、卒業してから高校の講師となって海辺の高校に赴任した。そこでバレーボールの顧問をしようと思っていたのだが、思惑ははずれて、何の興味もない文芸部を任された。部員は、垣内くんという文学を愛する生徒。清には恋人がいるが、不倫の関係で、幸せな時間と寂しい時間のくりかえし・・・ 弟の拓実は海が好きという理由でしょっちゅう遊びに来る。そんな彼らを通じて、清は成長していく。 

中学の教師という作家さんの作品なので、学校での描写には素直にうなづける。青春小説なのだけれど、登場人物の何気ないひとこと、垣内くんの飄々とした自分の意見には、思わず拍手をしたくなる。まっすぐに生きるということは、こんなにも爽やかに自分を成長させてくれるものなのか・・・  ただこういう男子高校生は存在しないだろう、とは思う。(04/03/13)


月の扉 / 石持浅海

2004-03-10 | 読書(~2005.09)
光文社・2003.8.25

国際会議が開かれようとしている沖縄、厳重警戒中の那覇空港で離陸直前の飛行機がハイジャックされた。犯人の要求は、逮捕されたある男をここまで連れてくるということ。犯人は2人の男と1人の女だったが、本名で搭乗手続きを行っていたので、すぐに犯人の素性は明らかになった。乗客・乗務員を人質にとった彼らだが、予想していなかった事が起きてしまう。乗客の一人がトイレで死体となっていたのだ。犯人たちは乗客の中の青年に、この殺人の謎を解くように要求するが・・・

犯人たちが極悪人でないということが、あまり緊迫感を感じさせないのだが、それでも殺人事件の謎をめぐる口論が面白かった。その状況がユニークだということで犯人たちは隙だらけと感じられるのだが、青年のキャラクターの良さで文章に引き込まれてしまったのかもしれない。ラストがちょっとあっけない気もするが・・・(04/03/10)


ジェシカが駆け抜けた七年間について / 歌野晶午

2004-03-08 | 読書(~2005.09)
原書房・2004.2.19

アメリカの長距離走のクラブチームに所属する選手の中に、日本人のアユミとエチオピア出身のジェシカがいた。レースを1か月後に控えたジェシカはなかなか眠れずにいたが、ある夜、偶然にアユミの不可解な行動を目撃してしまう。それは日本人カントクを恨み、呪い殺すという儀式だった。その後、もう走れないというアユミはその真相をジェシカに語ってクラブを去り、自殺してしまう。そして、後に日本で行われたレースの途中で事件は起きた。

歌野さんの作品は、どこかでどんなふうに騙されるかと、結構気を配りながら読んでいるのだが、(「葉桜の季節に君を想うということ」で驚かされたので・・・)時間のトリックは、納得はできてもどうもすっきりしなかった。読みやすさは抜群なのだけれど・・・ それにしても歌野作品のタイトルの長さには、何か意味があるのだろうか?(04/03/08)


看守眼 / 横山秀夫

2004-03-03 | 読書(~2005.09)
新潮社・2004.1.15

◆看守眼  退職直前の休暇で、本当は刑事になりたかった看守が、ある男を追跡していた。その男は死体なき殺人の容疑をかけられていたが証拠不十分。看守は自分の眼に自信があった。
◆自伝  有名な家電量販店会長が自伝を出すという。面接にパスしたフリーライターはそこでいきなり耳を疑うような話を聞く。「わしはひとを殺したことがある」と・・・
◆口癖  調停員ゆき江の前に現れた離婚を申し立ててきた女性には見覚えがあった。それは娘が高校時代にいじめを受けていた相手だった。
◆午前五時の侵入者  県警のホームページに突如現れたクラッカー。対応に右往左往するが、目的は何か・・・
◆静かな家  新聞社の整理部で地域版の原稿のレイアウトを担当する高梨は、ある個展の日付を間違ってしまう。上司に気づかれないように策を考え、直接お詫びに出向くが、当人は留守。そして後日、事件は発覚した。
◆秘書課の男  知事を「オヤジ」と慕い、完璧に職務をこなしてきた秘書。だが、知事は突然冷たくなった。

最近の横山さんの短編の中では、すんなりと読めた。それぞれの落ちには納得できるし、じわりとすめ部分も多かった。看守眼から始まったので、「また警察小説だな」と思ったが、そうではない。いっそのこと、警察以外でまとめた方が変に身構えなくてよいかも知れない。(04/03/03)


幻夜 / 東野圭吾

2004-03-01 | 読書(~2005.09)
集英社・2004.1.30

借金の返済に苦しんで自殺した父親の通夜の席で、雅也は叔父から理不尽な借用書を見せられた。翌朝、阪神淡路地方を襲った大震災で一命をとりとめた雅也は、まだ生きていた叔父を殺したが、背後に新海美冬という女が立っていた。犯行は見られたのか・・・ また美冬の両親も死亡し、二人はその地を捨て東京に出た。美冬はその美貌と仕事に対する手腕を発揮し、どんどんとのし上がる。雅也は町工場で職人としてひっそりと働いていた。まるで陰と陽のような二人。そして、美冬のまわりで、ストーカー事件や異臭事件、失踪事件などが次々と起きる。捜査にあたった加藤刑事は、美冬に対して疑問を抱くようになる。

「白夜行」の続編と聞いていたので、再読しておこう(内容をだいぶ忘れている)と思っていたのに間に合わなかった。雅也と美冬の出会いが衝撃的だし、美冬の冷たさ、怖さにひきつけられて、一気に読了。思いのままに生きる美冬を守る雅也が哀しいと思うが、それが雅也の幸福なのか・・・ 続編の意味は後半になって分かってきた。さらなる続編もあるのだろうか。(04/03/01)