あかねさんシリーズ002 男が女de女が男 053 宝塚が歌舞伎で、歌舞伎が宝塚 「宝塚、あんなの何処が恰好いいのだ? 宝塚は男子の好むものじゃないか。宝塚には“おっかけガイ”という尻軽男たちが好むものじゃないか」 「そんなことないわ! 茜さん、何いっているの?」 そうだった……。 --ここはわたしのいた世界とは男女が反対の立場にいるわけだ。 茜は話をあわせるために、逆のことを考えた。 「ああ、わたし、歌舞伎と間違ったのよ」 「そうなの? それなら、わかるけど。どうして、宝塚と歌舞伎を間違うのかしら」 歌舞伎のおっかけギャルが、尻軽とは限らないとは思うが、そういう人が知人にいるのだろう……。 「東の東大、西の宝塚といわれるほど、宝塚に入るのは難しいんだよね」 茜はそんなことを言った。茜の世界では“西の京大、東の歌舞伎”なのだが? やはり、逆になっているか? と茜は思った。 むこうの世界では中村歌右衛門がラインダンスを踊り、越路吹雪が助六を演じていたのも有名……。 この世界では、宝塚は女たちが主役。 女性だけで、華やかな舞台を演じている。 女のくせに、芝居などにうつつをぬかしているから、女たちは彼女たちを軽蔑しているのだった。 一般の人間はそんなことはないのだが、やはり西崎グループの社長令嬢になると、そんな風なのだ。 こっちの世界の茜とは、この点でも大きく違うのだ。 後にこのことをオカネキーに話したら。 「こちらの世界でも歌舞伎の最初は、女性でござったよ。阿国という女性が、ちょっと歌舞(かぶ)いたのでごさるよ。粋なお兄さんの役を舞台で演じたのでござる……」 「最初は女性だったのか……。私の元いた世界でも……。そういえば、男から歌舞伎ははじまったというのを聞いたことがあるなあー」 「阿国の歌舞伎は京都ではじまったのでござるが、その歌舞伎をルーツにしているのが、舞妓さんや芸妓さんでござるよ」 「舞妓・芸妓……。華やかな男性たちのことだから、こっちの世界では逆だね」 「そのとおりでござる。しかし、男とか女とかも、これは固定観念が強いでござるなあー。昔は歌舞伎が女性でござったということから考えても……。」 「なるほど、私もそう思えてきた……」
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