ラヂオアクティヴィティ[Ra.] 第一部ブロック・バスター 084最後に何をしたい? 「ねえ、バーバラ。君はそこに一人でいるのかい?」 「そうよ……。もう、カメラマンたちは逃げたわよ」 博士は、この少女の落ち着きようが尋常でないと思った。 しかし、こんなことを、ふざけてするわけがない。 いや、ミステリー・ツアーじゃないか? とも思った。 「バーバラ、逃げなさいよ」 ミス・ホームズも勧めた。 「私のことを心配してくれてありがとう」 どうも腑に落ちないとミス・ホームズ。なぜ、逃げないの……。 「でも、シェルターがどれほど、有効なのかしら……」 「有効?」 「古いシェルターは、とても、今の核兵器に耐えられないそうだよ……。個人で作ったシェルターのほとんどが役に立たないという報告もあったくらいだよ」 勉は説明した。 「これで最後なら、マイクといたいのよ……」 ミス・ホームズにも博士にも、そういう思考回路はなかった。 まったく、二人とも恋愛のことには興味がなかったのだ。 「もし死ぬとしたら、最愛の人といたい、というアンケート調査の結果があったわね」 夏八木は参加者に教えた。 バーバラは、若い女性らしくって、かわいらしくもある。 でも、僕たちにも、もしそんなことがあるとしたら、何をしようとするのだろうか。 死亡するならば、最後には好きなことを選択するだろう。 バーバラの選択、それは馬鹿げた選択ではないかもしれないと、博士たちも思いはじめた。 マイクは画面に手をあてていた。 バーバラも画面に手をあてていた。 こんな様子を何処かで見たことがある。 そうだ。刑務所の面会だ……。 僕たちは、核兵器にとらわれた囚人なのかもしれない。 いったい、僕たちが戦争しようとしただろうか……。 しかし核兵器で平和を維持していると考える奴らが、天下を握っている。 そして、今、その結果がこれじゃないか……。 「核兵器で脅しあった平和なんて、結局は偽物だったのさ……」 弁護士は堂々と述べた。 「そう、偽物の平和だった……」 勇気は涙を流し、首をやたら振っている。 「そんなものに、身をまかせていたのが、馬鹿馬鹿しいわ!」 ミス・ホームズが呆れていた。 「悪魔に牛耳られていた平和なんて……」 輝代の声だった。 輝代がいつの間にか、部屋にいた。 輝代の瞳は紫色に燃えていた。 皆は興奮しているから、そんなことにも気づかなかった。
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