ラヂオアクティヴィティ[Ra.] 第一部ブロック・バスター 085悪魔に牛耳られた平和! 「悪魔に牛耳られた平和!」 マイクもつぶやいた。 「そう、悪魔に牛耳られた平和だった……」 勇気も口ずさんだ。 勇気は何でも友人が話すことなら賛同する人間だと、ミス・ホームズは思った。 しかし、今の意見は本当のことだと彼女にも思えた。 「悪魔……、原爆を神のように信仰していた人たちもいた……」 と勉。 「そんなものが、神のわけがないだろう!」 「悪魔に決まっているだろう!」 「そうよね……」と李。 悪魔に心を売れば、安心を買えると、思った人たち。 しかし、得たものは不信だけだと思っていたが、実はこういう終極もあったということを、すっかり忘れていたと行者は思った。 「何百万もの人が、また殺される。そして、生き残った者も、苦しむだろう」 「もしかしたら、僕たちも、その中に入っているかもしれないね」 と勇気。 「それは、確実ね。環境破壊は確実にされたわ!」 ミス・ホームズは犯人を逮捕できないことに苛立った。 犯人たちはわかっているというのに……。 そして、ニューヨークとワシントンにも核兵器は炸裂した。 テレビ・カメラは、その遠方から、克明に写していた。焼けただれ蒸発してゆくニューヨークとワシントンの光景を見た。常識をこえた高温に、すべての人々の肉体があっというまに原子そのものに還元されてしまう。 何百万人以上の死者がでるだろう。 そしてそれ以上の数のひどい放射能症患者がでるのだ。 眼が見えなくなり、全身のほとんどがまっ黒に焼けこげた人々が、全裸のまま数十分をもだえ苦しみながらうめきつづけている……それが何百万人と。 そんな想像をするのは、たやすいことではなかった。 しかし、テレビ画面に映る茸雲を見て、恐怖に震えた。 テレビ画面にレポーターが映った。 「こちら、沖縄です」 その声が最後まで響きおわらぬうちに空母は巨大な水柱の中にのみこまれ姿を消した。 空母の乗組員がその一瞬に即死し、そのほとんどが沸騰し舞いあがって茸雲の一部になって昇天していった。 同時に、沖縄市の全域が歴史から消えたのである。何十万人もの人の命は失われた。画面には何も映っていなかった。 ソフィーが驚いた。 「さっき南の窓の方が輝いたわ!」 「沖縄じゃないか!」 テレビでアナウンサーがニュースを伝える。 「核爆弾が、アメリカ合衆国、ソ連、ヨーロッパ全土、中国、カナダ、日本の一部に落とされたのです。軍事アナリストの鬼頭先生、このことをどうお考えなさいますか?」
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