弁理士『三色眼鏡』の業務日誌     ~大海原編~

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五輪絡みの知的財産(その1_聖火)

2016年08月10日 08時19分24秒 | 実務関係(商・不)
おはようございます!
今日は午後からお天気下り坂、らしい湘南地方です。

リオオリンピックにイチロー3000本安打に高校野球、
スポーツの話題に事欠かないこの頃。

そんな中、ときおりお客様からご質問を受けるのが
五輪関係の表示について。

例えば、「TOKYO 2020」は多岐にわたる商品・サービスについて
登録されているので(第5626678号)、正当権原なく第三者が使用すると商標権侵害に該当する。
これは「商標権」として独占排他権が確立されているので、あまり迷うことがない。

ちなみに登録されている商標でいえば、
「公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会」を権利者で
JPlatpatにて検索すると、色々面白い登録が出てくる。
第0392094号「聖火(+トーチの図形)」は、実に昭和24年の出願だ。
公告された時点での出願人は「亀山蝋燭株式会社」(指定商品は「ろうそく 他」)。
その後数回の移転を経て現在の権利者となっている。
文字通り「聖火リレー」が行われてきたわけだ。
なお文字要素のみの「聖火」については、現在審査係属中。
でも仮にこれが登録に至ったからといって、
世の中の人が「聖火」という言葉を使っちゃいけない、という意味ではないので念のため。
飽くまで「商標としての使用」=識別標識として機能する態様で商品・サービスと関連付ける行為
が制限されるだけだ。

…と力強く言ってみたつもりだが、
これが意外とあやしい。。

公益財団法人 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会は
「大会ブランド保護基準」なるものを公表している(ココから見ることができます)。
大まかに言えば、
「オリンピック・パラリンピック関係の知財はIOC・IPCの独占的所有物。
 スポンサーは協賛金払って使っている。だから協賛金も払ってない奴らは勝手に使うな。」
と述べた上で、
「主な知的財産」を例示している。
「保護対象となる各種用語」の項には
“大会名称等の各種用語も知的財産であり保護の対象となるため、自由に使用することができません”
とのべ、各用語を明記している。

この中には、少なくとも商標登録までは至っていないものが混ざっている。
「より速く、より高く、より強く」
「トーチ」「トーチリレー」「聖火リレー」などは登録の事実がうかがえない。
「聖火」の審査状況は上述の通り。
なお、第16,27類の一部商品についてのみ、他社から譲渡を受けたであろう筆文字縦書きの「聖火」が権利として存在している(第1077718号)。
また「OLYMPIC TORCH RELAY」についてはIOCがマドプロ経由で日本指定して登録になっている
(国際登録第1029820号)。

Wikipediaによれば、「オリンピック聖火」は
「国際オリンピック委員会の権限の元、ギリシャのオリンピアでともされる火のことであり、
 オリンピックの象徴」 なのだそうだ。
それゆえ躍起になるのは理解できなくはない。

が、しかし、Wikipediaでもわざわざ「『オリンピック』聖火」として項目を設けているように、
もとより「聖火」=オリンピック聖火、ではない。
そんな中、未だ登録に至っておらず“商品等表示として”周知著名にも至っていない表示までをも
「保護の対象となるため、自由に使用することはできません」
と言い切ってしまうのは、どーなんだろうか?

五輪絡みは、こういう“ビーンボール”的な主張が多々見られると感じている。
“触らぬ神に祟りなし”“長い物には巻かれろ”“金持ち喧嘩せず(ちょっと違うか?)”
或いは健全な経営判断に基づく穏当なリスク回避の観点から、
多くの企業は使用を自重するのだけれど、そうした積み重ねが更に状況のアンバランス化を招いているようにも思える。

上記の「大会ブランド保護基準」には、「アンブッシュマーケティング」(=便乗商法)の項目も設けられている。
そこにも色々例示が挙げられているのだけれど…ちょっと長くなったので次回に続く。

コメント
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