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立川談志の噺、「幽女買い

2014年12月02日 | 落語・民話

立川談志の噺、「幽女買い」(ゆうじょがい)によると。
 

 急に暗いような明るいような変なところに来てしまった太助、三ヶ月前に死んだはずの源兵衛に声をかけられてびっくり。

「おめえは確か三ヶ月前に死んだよな」と念を押すと、「おめえ、オレの通夜に来たろ」。

 太助が源兵衛の通夜の席で、

「源兵衛は世の中にこんな助平で女郎買いの好きな奴はなくて、

同じ夜に女郎を3回も買って、かみさんはあきれて子供を連れて出ていくし、

これ幸いと女を次々に引きずり込んだはいいが、悪い病気をもらって、

目はつぶれる鼻の障子は落ちる、借金だらけで満足な葬式もできない始末だから、

どっちみち地獄堕ちは間違いない。

悪いことをするとこの様になると言う見本ですから、弔いはいいかげんにして、

焼いて粉にして屁で飛ばしちまおう」、

とさんざん悪口を言ったのを、仏さんの源兵衛に全部聞かれていた。

死骸がまだそこにあるうちは仏さんに全部聞こえるという。

太助は、死んだ奴がどうしてこんなところにいるのか、まだ分からない。

ここは冥土だという。

「てめえも死んだからヨ」、

「オレが死んだ? はてな」、

「どうして死んだ」、

「そう言われれば、かみさんが枕元で医者に『間違いなく死にました? 生き返らないでしょうね?・・・

先生、お通夜は早めに終わらせてみんな帰しますから、あの~、夜伺いますから・・・』

なんぞと抜かしていたのを思い出した。」、

「薬盛られたんだよ」、

「ちきしょうめッ」と怒っても、死んでしまったら文句も付けられない。

「ここも良いところだよ、お前の疝気も治っただろ」、

「ホントだ。お前もか」、

「当たり前だ」。

冥土は乙なところで、暮らし方も同じだ。

「お前はまだ足があるじゃないか」、

「ここのところ飢餓や地震で亡者が多くなり、閻魔の庁でも忙しくて手が回らず、

源兵衛も『未決』のまま放っておかれて3ヶ月」だという。

それは浄玻璃の鏡も研ぐ時間がないため、娑婆の悪業がよく写らないのを幸い、

そのうちごまかして極楽へ通ってしまう算段を聞き、太助も一口乗らせてもらうことにした。

源兵衛は一杯ご馳走すると言い、刺身より精進料理が好きになったし、白団子を肴にするのが粋だと勧めた。

飲み終わって、寄席に寄り道しないかいと誘われ、楽屋を訪ねた。

円生さんがいて出し物を聞くと

「三年目だとかお化け長屋だとか四谷怪談から真景累ケ淵までいろいろあります」。

向島の旦那は「野ざらし一本で」、

麹池(きくち)さんは「反魂香や、らくだですかね」、

美濃部さんは「黄金餅とかお化け長屋などやります」、

加藤先生は「私もお化け長屋」、

田端の大将は「へえ、化け物使いやへっつい幽霊を」、

円生師匠文楽さんは、「あの方は不器用ですから噺が変えられないんです、明烏ばっかりじゃ受けませんや」、

前に回って見ると三平さんが前座で出ていた。

これから遊びに行こう。

四宿は死宿で、品川は死んだ川、新宿は死に宿、板橋は死んだ橋、千住は心中。

こっちにも吉原ならぬ死(新)吉原があり、遊女でなく幽女買いができるので、ぜひ繰り込もうということになった。
 三枚駕籠の代わりに早桶で大門に乗りつけるのが流行っている、提灯は人魂入りで薄ぼんやり。 
 吉原に入ると不思議町(伏見町)、江戸町は冥土町、揚屋町はあの世町、仲之町は変えられないから仲之町。
女郎はというと、張り見世からのぞくと、いやに痩せて青白い顔。
ここではそれが上玉だとか。
 女が「ちょいとそこの新亡者、隠したってダメさ、額に三角の紙がついてる。あたしが看取ってあげるから。私が成仏させたあげるから~。私で往生しな」
と袖をひくのであがると
「お見立ては『蓮の衣(はすのい)さん』と『線香』さんお召し替え。
御初回ですが通夜は半通夜にしますか?」、
「どっと陽気にいこう」、
「ここでは陰気に」。
芸者が上がってくると首から数珠をぶらさげ、りんと木魚で「チーン、ボーン」。
幇間がまざって「えーご陰気にひとつ」と、坊主姿で百万遍。
延寿の金が「ボ~~ン」となって、お引けになり、部屋に入ると北枕で、枕屏風は逆さまで、枕元に短刀が置いてあった。
 待っていると、襖にサラサラと髪が触れる音がして、音もなく開くと幽霊ポーズで
「恨めしい」、
「幽ちゃん、待ってました」。

 夜が明けると「百ヵ日も居たいよと言うと、『好きになったよ』って、女が離れねえ。
『いっそ二人で生きたいね』、
『生きて花実が咲くものか』、なんて、言ってやった」。
 帰りがけに喉がかわいたので、若い衆に所望すると「死に水一丁」、
「旨い。『末期の水』って言うのか」、
飲み干して「帰ェるよ」、
「冥土ありがとうございます」。
表へ出ると、
「お迎え、お迎え」。

 

 

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