「結婚しましょう!」
そう言うと彼女は僕の隣に座り電車を待った。
「……」
とっさに言葉が出なかった。
そんな僕にかまわず彼女は話を続けた。
「式後はあなたの家に住めばいいし、共働きだから財政的にも余裕はあるわ」
「……いや、そんな……でも……」
やっと搾り出した僕の声を押しつぶし、彼女は畳み掛ける様に
「実はね、もう式場も考えてあるの」
「いや……だから……」
「式はどうする? 和式か洋式か? 私、こだわりはないわよ。
あなたがいれば恐くなんてないから」
「いや……だから……君、いったい誰? 僕とは初対面だよね?」